メイトギアの効用

大規模テラフォーミングにより火星を生存圏として数百年。それに合わせてメイトギアをはじめとしたロボットの進歩も急速に進んだ。


初期のメイトギアはそれこそ高齢者の介護や乳幼児の世話の補助といった限定的な用途だけをこなすロボットであったものの、AIの進歩に伴ってできることが急速に増え、現在では人間ができる作業の九割以上はメイトギアでこなすことができるとも言われている。


それこそ、<無能>と評される人材とであれば完全に置き換えてしまっても問題ないくらいには。


しかし、だからと言って本当に人間の仕事を奪ってしまってはそれ自体が新たな問題の火種となる可能性が高く、事実、それを理由としたテロも今では多い。


なので、あくまでもメイトギアは人間をサポートするだけにとどめ、社員や従業員のように働かせることは基本的に禁じられていたのだった。


それでも、


『社員や従業員のサポートをする』


という名目であれば、ある一定の比率までであれば置くこともできるので、抜け道のように使われていたりもする。


その点については、JAPAN-2ジャパンセカンド社も例外ではなかった。


特に重要な部署においては、積極的に自社のメイトギアを導入。それによって自覚や責任感のない人材は登用しないということが可能になった。


つまり、


『無能な人間を置くくらいならメイトギアで代用する』


を実践したわけである。


これは、JAPAN-2ジャパンセカンド社に限らず多くの企業で導入されていることでもあり、生産性の向上に寄与しているという試算もある。


とは言え、それを面白く思わない人間が少なくないことも事実なので、これをさらに推し進めるにはハードルは高い。


が、現状、少なくともJAPAN-2ジャパンセカンド社においてはおおむねいいバランスを保てており、実際に働いている社員からも、


『良好な職場環境』


という評価を受けている。


姫川千果ひめかわせんか獅子倉玄戒ししくらげんかいのような、世間一般では扱いの難しいとされるタイプの人間がその才覚を発揮できているのも、実はメイトギアのフォローがあってのことだとも言われている。


姫川や獅子倉のような人間と、いわゆる<普通の人間>の間に入って緩衝材の役目もしてくれているのだ。


千堂アリシアは例外として基本的にメイトギアには心がないので、当然、感情もなく、いくら異様な言動を見せようとも動じることがない。その上で部下達に要点をまとめて指示を伝えてくれるし、姫川や獅子倉が苦手とする人間関係についても円滑に進めてくれることで、生産性が高まっているということだ。


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