count 10 9 8…

『10』

無意味だと人は言いましたが

彼は砂金で国を買いました

確かに無茶ではありましたが

誰もが彼女に期待したのです

昔の泥棒達は悪党だけど

今の冒険家に夢を与えたのです

君の大なり小なり悩んだ物は

大人になると使わなくなる物

一日は長いのだけれども

一生は思ってるより短いって事




『9』

林檎の季節が来ました

恋人達はマフラーを繋げる

僕の隣りは誰も居ないけど

反対側の道路から向かって来る

恋人達の顔を見ると

林檎みたいに真っ赤っかだから

僕は寒い季節に居る恋人達を

林檎と呼ぶ様にしている

けど寒いからなのか照れなのか

赤い頬の成分を分析してる




『8』

花冠が風に舞うから

君は可愛い娘だろう

世界は共産の大地を耕す

鳥も高さを決めて空を飛ぶ

砂浜に出来た砂の城は

波風によって忘れられたまま

僕は羊のゆとりを

指笛で縛り付けて遊牧する

口にされない木の実なら

分かってくれる筈




『7』

殴られた水は怯えて凍った

キッチンで愛を炒めた

ドロドロに溶けた愛をかければ

光を含んだジャムが出来る

きっと美味しい筈なんだ愛は

そうじゃなかった手紙を書こう

日々変わり行く日常宛てに

「いい加減お前には飽きた」と

そしたら日常は変貌か自殺して

どちらに転んでも幸せな崖だね




『6』

君の背中の刺青は生きている

君の身体を優雅に羽ばたいてる

だから君は薄紅の友達を入れた

二人は暫く見掛けなかったけど

子供を連れて飛んでいた

そうしているうちに君は

沢山の生き物を身体に入れた

ただ寅を入れたのが間違いで

全て喰い殺すから仕留めようと

刃物は心臓を突いてしまった




『5』

君は耳から砂を零す

それを炙ると声が燃えてく

私は目からフィルムを流す

巻き取ると今日が見れる

彼は口から名前を出す

すると味覚がくすぐられる

彼女は鼻から糸を出す

それを燃やすと匂いがする

誰かは肌を触らせたがる

意地悪だから痛みばかり伝える




『4』

魚の波からメッセージを読む

知らないだけで自然は

全て囁いてるのさきっと

レンジが温めに唸る一分

揺れた葉の音や湿り気

靴を繰り返し踏む音なんかも

全て囁きから出来ている

「お前が死んでも泣かない」の

顎の鳴る音は「愛してる」だ

そうであっても愛してないがね




『3』

「自由は実に不自由だったよ」

マイは経験して無いのに

まるで経験済みの様に語り出す

「お前は自由処女だろ?」

僕のふざけた質問に答える

「私の国は多民族で出来てた

だから独立したかったんだけど

なんでか争うんだよね

その争いで血を流したから

経験済みだけど前と変らない」




『2』

降り注がれた太陽

まだ来ない雲の群れ

知る筈の無かった群青

溶けて行く帰路

裸にされて行く内側

紫外線が歩いた後の庭の色

静か過ぎる港町を歩く鴎

やつれてしまった症候群

宇宙の真ん中はないって事

こんな言葉が車に轢かれてた




『1』

寝て起きた時に貴方は

トイレだったと言ったけど

少しずつ離れてく気がした

貴方がアパートから出る時

車の姿が無くなるまで見送る

そうやって来たのだけれど

何かがそっと背中を押して

私はただひたすら走っていた

進んでる様で進んでない

二人の有り触れ過ぎた恋愛に




『0』

僕を乗せてシャトルは

振動しながら空に登る

それは人の夢であり僕の夢

打ち上げの成分は

人々の声なのかも知れない

黒い海を彷徨って来る

此処の青さが本当か確かめる

星の距離になった君の為に

写真に収めるよ

綺麗な地球の表面を

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る