トウモロコシ畑であなたでも捕まえてみよう

あなたは美しいから

それに似合う場所に行きたいのです

大きな雲がまばらに流れていて

生活の音として受け入れた蝉の声が

木もないのに鳴り響く

限りなく広いトウモロシ畑であなたでも捕まえてみよう

あなたは僕を振り返る事もなく先に入る

僕は少しだけ残っていた水を飲みほして

あなたの名前を呼びながら歩きだす

物音がした僕は走り出して君であると捕まえようとする

だけれども大概は僕撫でる葉っぱが悪戯をしただけ

僕はあなたを見て来たけれども

運命であるかなんて解りはしないのです

赤い糸なんて無いから手繰り寄せる事も僕には出来ない


涼しいのは風とかでは無くてあなたで

ここをひたすら真っ直ぐ行くと

砂浜が焼かれて白くなった海に辿り着く

あなたは休日は自由だから気まぐれに抜け出して

もっと広い所探さなきゃならないのかも知れない

少し立ちくらみがしたよ

桃色のワンピースに赤い髪

この時期には似合わない白い肌をしたあなたが

後ろ姿で遠くを見ていた

僕は無理に身体を起こして走り出すあなたを追いかける

トウモロコシの葉っぱが触れる音は重なっている

中心の無い畑で右折し君の行方を失くした


あなたの顔見なかったけれども

あれは本当にあなただったのでしょうか

夏の幻に僕は遊ばれたのかも知れません

後姿だけの人なのかも知れません

そうじゃなくても気まぐれに歩くから

僕は前を歩けないでいる

後姿ばかりをよく見ていた

夕方になるとあなたから顔を出してきた

僕は必死で駆けまわっていたけれど

あなたは声すらしなくなったから不安になってたみたい

僕は申し訳ない事をしたと頭を下げた

トウモロコシ畑で君を捕まえた

夕日は僕らを見下ろす

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