サバンナから
僕が黄色の自転車を見つけたもんで
人よりも多くなった道路を漕いでいました
白線の無い一本道に入り
橋の下にそれをそっと置いていこうとしたのですが
向うの空にはパレードでもあったのか
沢山の風船が束になって浮いていて
持つ紐の先には茶色い生き物が結わえられていました
僕の足は自然と早くペダルを急がせていた
目の前にそれはフワフワと落ちて来ました
それはカンガルーでした
僕は左右斜面なので止まる事しか出来ませんでした
カンガルーは背中の風船を付けたまま僕に近づいて
こう言ったのです
「私は遥か遠くのサバンナからやって来ました
この子を突然ですが育ててもらいませんか?」
カンガルーはそう言うと
大きな袋から小さな子カンガルーを出しました
「まだ、言葉も喋れませんがうちの子をよろしくお願いします」
そう言うと風船は浮く力を強め
カンガルーは空の上へと消えて行きました
僕はそれが点が無くなるまでみ上げるだけだった
置き去りにする筈だった自転車に
子カンガルーを乗せて家に帰ったのは夕方だった
僕はあなたが何を託したのか分からないでいる
あなたは今どこで何をしているのだろう
サバンナとは言いますが
本当は空に居るんじゃないですかと疑っています
その日から僕は無意識に見てしまう癖がつきました
僕はあの子の為に尽くせているのか
それはあなただけが知るのでしょうね
今あの子は15歳になって
四番の服を付けてバスケットボールをリングへ潜らせています
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