花電光

#花

 ある日、散歩しようと思ったのです。見慣れた町の平日に、定休日の私は煙草を一箱とライター、千円札一枚をポケットに入れて早朝に徘徊するのでした。


 町は普段と変わらず、一台が通れる住宅の道路をサラリーマンと思われる男性が車を急がせており、学生が構わず端を並列して自転車を漕いでいるのでした。おじさんが犬を連れて散歩をしており、それは向こう側から首輪の繋ぎの金属がカチカチとぶつかる弱い音立てながら進行方向からやって来たので、私は重なる前に止まりお辞儀をしたのでした。


 社交にておじさんはそれに歩きながら対応し、私の歩いて来た道を行くのでした。振り向くと、電柱に犬がマーキングをしており立ち止まっていました。


 私は普段、日常にて車を慎重に運転する中で、おじさんの姿をよく知っていましたが、おじさんは私の事を知りませんでした。この日の気紛れがなければ私は知られる事は無かったのでしょう。もう一度振り向くとその姿は無く、私はその先の通りを良く知っていますが行方は分りません。


 実は気のせいだったのかもと思いました。私がこの町で見掛けた人は、全て私の気のせいから見掛けたものなのでは無いのだろうか。疑わない所に今日は思い更けるのだろうなと、私は歩きながら風もないのに癖で火を守る様に手で火を庇い煙草に火を付けるのでした。


 曲がろうと思えば曲がれる角はいくらでもあり、知らない裏道へと足を進める事は出来るのですが、私はただひたすら真っ直ぐと歩いているのでした。この道は日曜日の定められた休日に娯楽を求める時に出掛ける通りである。


 誰かが知らない夜に自棄を起こしたのかも知れません。酒瓶が塀に叩き付けられた後があり、まだ染みとなり残っていました。緑色したその瓶は大小様々なサイズの破片になっていました。太陽は平等に照らしますが、それだけ特別に輝いていました。微笑ましくて覗こうと思いましたが、私の影でそれは光をなくしました。私はあえて大きな破片を踏み付けたのです。


 少しばかり不機嫌です。大きな破片はないかと探していると、電柱の下に有り触れてるけど名前を知らない花を見ました。それは、儚い時なのだろうに主張をせずひっそりと咲いていました。私はそれを微笑ましく思い、踏み付ける事を止めて先を目指しました。


 このままでは休日と変わらぬ場所に行ってしまうので、私は直ぐに角を左に曲がりました。見知らぬ表通りでしたが、どこか知っている何時もの道と変わりませんでした。私は公園を見つけて屋根に入り、自販機でジュースを買い煙草を吸い続けるのでした。


 人は平凡であったと言うかも知れませんが、私は特別では無かったとしても平凡では無かったと今日は思います。帰り道は夕暮れになっていて、影は私よりも大きくありました。


 あの花が咲いた場所に来たのですが、塀にあった染みは無く、緑色の瓶の破片は無く、花はありませんでした。酒瓶はゴミ収集車の人達が持って行ったのかも知れません。有り触れた花は誰かが微笑ましくて摘んでしまったのかも知れません。それと私の気のせいだったのかも知れません。家に着きましたが、おじさんの姿はあの時から見掛けませんでした。




#電

 まだ薄い夜に電灯は余り主張をしないから、虫達は何処を目指せば良いのか分らず低く飛ぶ。夜が濃くなる程、虫は電灯へと羽ばたいて行くのです。触れる事の出来ない電灯の熱と光を求めます。


 そこの隙間に入り込み飛び回って、何を意味するのでしょう。外の夜は怖いからなのでしょうか。あまりにも明るい太陽の下を飛ぶのも怖くて仕方が無いから、人工の明かりに群れるのです。


 何処かそれは人間に似ています。私達は、少ない電灯の形した人間に群がる夜の虫なのです。私達は理由が無くともしがみついてその手を離す事は無いのでしょうね。私も悟りながらも夜の虫として生まれたもの。太陽の人間がやってきてその手を離させたなら、独り立ちしてみたいと思うは。全てが鮮明で何処を目指したら良いか分らないけれど。太陽でも目指してみようかしら。




#光

掌には池がありました

 そこを鯉が波紋を作り

  私は微かな光を歩かせ

   シーツの白は空を飛ぶ

    羊雲が遊牧する青い空

     その先の海は逆光する

      林檎の素肌はいつから

       赤く染まるのでしょう

        幼い日の私にあなたは

         あの時の姿で答えるだ

          それは恋をしたからさ

           あなたの顔を見付けた

           溢れる群衆の中に群青

            あなたはあの時の様に

             林檎の様に肌を染めた

              履き古した靴が歩くよ

私の軌跡を歩いている

 数年の間彼は帰らない

  私の道は意外と長くて

   洗う事もなかったから

    私はそれしかないから

     浮気をしてしまうしか

      出歩く方法が無いから

       帰って来た時の反応が

        少しばかりだが怖いよ

         街はあの時とは違うよ

          群衆の歩みとかがそう

           何時だかマンホールに

            落ちた事があるけれど

             その日落ちれないなら

              君はどうするのだろう


        詩は 塀を 今は 登る 橋の 花は 水に 溶け

        星で 削ぐ 翔け 暴け 改札 伝達 旋律 流星

        従う 空へ 響く 土へ 緑は 青が 赤だ 白に

         バス停 花の色 羽根は 心から 外だけ

         キミへ ボクが 彼女で カレは 誰かが

         言葉より 微笑みを 側にいて 渚の行方

         初めての パレード パレット 子供達は

          愛してるよ 知っている 夜が終わる

         祈り続ける 手を振るよ 白昼の先で

            言葉を無くす 銀河鉄道へと

           少し君を乗せ 風を釣るから

             月も 宇宙 空は 砂糖

             駅は 静寂 波は 踊る

             花で 鳥に 風と 月は

            砂糖に 全ては 群青色

           そして それが 今だけ 微かに 残りが

                 光

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