日付を確認する癖
お前はいつだったか戦場に行く事になっていたから、庭に当たり前に置かれていたピンポンテーブル、それは誰にも使われてた事が無くて、雨風に曝され所々が塗装が剥がれ落ちて砕けやすい様な物になっていたんだ。
お前はそこに真っ白なシーツを敷いて、プラスチックのお皿と安物のワイングラスをテーブルの上に置いたんだ。
フォークやスプーンのそこに当たる音だけが響く静かな午後で、それが午後の本当のあり方なのかもしれないと感じていたんだ。
お前が私宅をしていたら、誰かに頼んでいた訳でもないのに僕の背中を大きく映し少しそれに身体が隠れた正面の姿でスープに口をやる君の姿の写真が届いたんだ。
お前はそれを不思議がることもなく、詰め込んだバックの一番上に来る様にそれを置いたんだ。
お前はベンジーアヘンダーの詩集が好きだったの僕は覚えていて、外を駆け回っていた奴には似合わないもんだなと感じていたんだ。
『橋の上に』って詩をお前が居ない時に少しばかりだけど読んでみて、こんな分からない物を読んでいるんだなと直ぐにカーテンが揺れる机の近くに置いたんだ。
どうしてか分からないけど、僕はお前が帰って来ないのかもしれないのに哀しい気持ちにはなれないでいるのは、余りにもここが静か過ぎて遠くの街の火薬と血の臭いがした悲劇などから切り離されているからなのかもしれない。
お前が一言、特別でも無いけど言った別れの言葉は何処かで僕を呼んでいるんだ。
それは出兵せずに終戦してしまって、それはお前が帰って来た今でも続いていて、お前が行かなきゃならないと決まってから日付を確認する様になった癖と同じで、ずっと続いているんだ。
知らない間に僕にもそれは受継がれていて、君が川の綺麗な待ち買い物をしに行ってる今、我に返ると日付を見ていたんだ。
『橋の上に』
木の実があってそれは空よりも高く生えた木の上に実っていた
友人がスーサイドモーニングをして何となく自分を責めていた午後
そこに子供達は群がっていた
風の生まれないここで
流れてくる言葉は無く
羊達がその場所の少し上にある仕切られていない高原で草を噛む姿を
玄関を開けて裏側の庭で見たのだった
橋の上に
それは水瓶をひっくり返した様な
透明な冷たさが溢れていて
街灯以外の電気が無いこの場所でそれを肌に感じたのだ
魚が作る波紋は扇子を閉じる様に美しく
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