渇いた剃刀

#1

言うならば私は

根ばかりを伸ばし 頭を毟られた雑草がお似合いです

その当時の舞い踊る私と重ねて御覧になって下さい

朽ち果てて横に寝そべる椅子 黙り続ける壁にぶつかりながらも踊る私に

あんよは上手で 下衆に仕立てて笑って下さいな

私は自身に飽きたのでございます


#2

渇いた剃刀に錆びが沁み込んでおり

強く押し付け手首から引くのです

血は砂と化しバケツの水に入り込む


崩れない 決して私の青い灯台だけは

見下ろす景色よりも その青は青いのです

電源が落ちるその前に

そのさだめを性に気づいて居れば良かったのに


#3

奪えばいい

足は浮き

手は沈む

それだけの事を何故躊躇う?


#4

奥へは行かないで下さい 蝋燭があります

せっかく覚えた人も 言葉も 溶けけて曖昧になってしまわれます

産み立ての赤子は死にましたんで

どうにかする前に美味しく喰らいました 肉も骨も全てです

右肩上がりの字はもう直りやしないのです

例えが違えど平成に溺れ死ぬ我は定でございます


#5

謎掛けを出された

走ると速くなるもの 歩くと近いけど触れられないものは何だと

答えは怯える自身であると知るのに どれ程の時を無駄にしただろう


#6

鼓膜が歩いていた

誰かそっと何でも良いから囁いてやろうよ

鼓膜は自らの悲鳴で破けて死んだ


虚しいが歩いていた

トボトボ歩く虚しいに有りっ丈の人生観を語ったけど

虚しいは無視をしてトボトボ歩くだけでした

私は喋る気も歩く気もせず立ち止まり

虚しいが遠くに行くのを見るだけでした

虚しいは心に居座りました


隣が歩いていたから

隣を殺した

さぁいよいよ私は独りになりました

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