第61話 ノクサリオ奮闘
吹き飛ばされて何が起きたか分からずに倒れているカイシキは地面に手をつきゆっくりと立ち上がる。
そのとき上空から微かだったがカイシキの危機感を騒がせた。
それが何かを確かめずにカイシキは透かさず横に転がる。
するとカイシキが倒れていた位置に斧槍が突き刺さった。
そして、斧槍のすぐ側にノクサリオが着地する。
「あらら、今のを避けるのか。マジかよ、おっさん」
頭を掻きながらノクサリオはそう言う。
暢気そうな声色だが表情に余裕はない。
「ノクサリオ! 相手を侮るな! お前の悪いところだ!」
カイシキに追いついたアクルガはどしどしと歩いて格好付けているノクサリオにげんこつを叩きつける。
「いって~!!」
うずくまっているノクサリオを一瞥した後、アクルガはカイシキをまじまじと見詰める。
「うむ、なかなかの強さと見える。このアクルガの相手に相応しい。ここであたしの正義の味方として箔を付けるための武勇の礎になってもらおう!」
どうやら、品定めをしていたようでカイシキはアクルガのお目に適ったようだ。
しかし、アクルガはもう既に勝ったつもりになっておりそれがカイシキの怒りに触れる。
カイシキは元の大きさに戻っている剣を握りしめその手は血管が浮き出るほど力が漲っていく。
「口の聞き方には気をつけろよ!」
カイシキは走り始めて剣を上に掲げて剣の腹から振り下ろす。
まだアクルガたちとの距離が開いており届きそうにないがカイシキの剣はそのまま周囲を包み隠すように大きくなった。
そして、アクルガたちを押し潰そうと迫ってくる。
だが、アクルガはそんなこと気にも留めず一人でうんうんと頷いている。
「ふむ。よし! ノクサリオ! ここはお前に任せるとしよう! お前が今まで積み重ねた鍛錬の成果を発揮するときだ!」
「えっ!? 俺一人!? さっきと言っていることが違う……」
だが、ノクサリオが言い終わる前には既にアクルガの姿はなくなっていた。
「おいおいおいおいおいおい!」
押し潰そうと上空から迫り来る大剣からノクサリオは慌てて逃げ始める。
「おい! マジでやばいって!!」
このままでは間に合わない事を悟ったノクサリオは大きく前に飛んだ。
寸前の差で大剣を躱すことができ地面を数回転がった後、その勢いで立ち上がり警戒は欠かさない。
「あっぶね~」
地面にめり込んでいる大剣を見てノクサリオは冷や汗を流しカイシキをに目を向ける。
そして、透かさず距離を詰めて斧槍による突きをカイシキに行う。
カイシキは剣の大きさを元に戻し斧槍の軌道をずらす。
だが、ノクサリオはすぐに斧槍を引き戻して器用に回しその勢いのまま突きを再び繰り出す。
しばらく、その攻防を続けついに防ぎきれなくなったカイシキは身体を反らして躱すがそれを見たノクサリオはにやりとほくそ笑む。
「おっさん、それはやっちゃいけないぜ」
ノクサリオは躱された斧槍をそのまま薙ぎ横腹を裂こうとする。
「貴様の方が甘いわ!!」
カイシキが持っていた剣が巨大化してカイシキの身体を隠す壁となってノクサリオの斧槍を防ぐ。
「げっ!」
斧槍が弾かれたノクサリオは素早く斧槍を引き戻し構え直す。
しかし、いくら剣を巨大化させることができると言ってもカイシキの力自体は上昇していないらしくノクサリオの攻撃を弾いた後、刀身を地面に落としている。
「ちっ! そんなうまくはいかねーか」
リーチの長さでは斧槍であるノクサリオが圧倒的な有利を持っているが敵が剣の大きさを自由に変えることができる以上、有利とは考えない方が良いとノクサリオは自分に言い聞かせる。
「俺はあまり魔法が得意じゃねーしな。あー勝てる気がしねぇ……いっそ逃げるか?」
そう考えるがノクサリオはアクルガの姿が頭に浮かぶ。
「殴られるな。いや、殺されそうだ……仕方ない。やるだけやるか。……言い訳を作るために」
「何、ブツブツ言っている? お前が来ないならこちらから行くぞ!」
「ちっ。そんな急くこともないだろ」
急速に迫り来るカイシキにノクサリオは素早く斧槍を構えて迎え撃つ。
カイシキは両手を頭の高さまで上げノクサリオの腹部に目掛けて剣を薙ぐ。
ノクサリオはその剣の軌道をずらして逆に攻撃を仕掛けようと試みようとする。
だが、迫り来るカイシキの剣は急に巨大化した。
「やっぱりそう来るよな!!」
握りしめた斧槍を地面に深く突き刺しそれを支えとしてノクサリオは前転するように地面を飛ぶ。
飛んだとはいえ斧槍を握りしめたままだ。
ノクサリオはその斧槍を握りしめた両手にさらに力を入れ逆立ちの状態を維持する。
カイシキの巨大化した剣が斧槍にぶつかろうとする寸前、今度は斧槍と同時に飛び上がった。
間髪入れず斧槍を振り下ろす。
だが、カイシキは既に剣の大きさを元に戻しており向かってきた斧槍を眉一つ動かさずに受け止めてしまう。
「マジかよ……。俺の全力の一撃を片手で止めるかよ。話にならないな」
ノクサリオは反撃を恐れて後ろに飛び退くがカイシキにはその気はなく剣を肩に置きあからさまに溜め息をしてみせる。
「もう終わりか小僧。生半可な力を持って図に乗っていたか? お前より強い者など数えても切りがないわ!」
その言葉にノクサリオはうんざりした顔になる。
「それはすっごく分かっているつもりだ。いや、ほんとに」
そう言いながらノクサリオは次の攻撃に思考を駆け巡らせていた。
(真っ向で駄目なら虚を突くしかないな。これが無理なら……はは、もう無理だ)
ノクサリオは覚悟を決めて斧槍を振り回して先端を上に向けて地面に刺す。
その眼差しを見て本気だと直感したカイシキは気を引き締めたらしく剣を構えた。
そのときノクサリオの足下から白い煙が出現した。
煙はさらに溢れ出て瞬く間にノクサリオとカイシキを飲み込んだ。
これがノクサリオの唯一無詠唱で使える魔法“白の煙(スモーク)”だ。
「煙……」
カイシキはノクサリオから立ち上る煙を見るや息を止めた。
それを見てノクサリオは心の中で笑ってしまう。
カイシキはこの煙に毒があると思ったのだろうが正直なところこの煙にはなんの力も宿っていない。
強いて言うとすれば術者であるノクサリオは煙の中に入った敵の姿が見えることぐらいだ。
吸ったとしても有害ではなく、煙はノクサリオから一定の距離の間だけ発生しているだけで抜け出そうと思えば軽く走ればすぐに抜け出すことができる。
弱点を上げると切りがない。
だが、種がわからないカイシキは勝手な思い込みをしてくれるため立派なハッタリになる。
ノクサリオは煙の中でカイシキと睨み合いを続けじりじりと後ろに下がり煙に溶け込んだ。
今、カイシキの視界は白で埋め尽くされておりノクサリオの姿を完全に見失っているだろう。
ノクサリオは素早くそして密かに動きカイシキの背後まで忍び寄る。
集中力を研ぎ澄まし流れる造作で斧槍を構え突きを放った。
(いける!!)
だが、金属音がなり響きノクサリオはすぐに防がれたと分かった。
(マジかよ!! 視界は封じているはずなのに)
堪らず次々と場所を変えてその度に突きや斬りかかったりするが見事に防がれてしまう。
(はぁ!? 俺の場所、分かっているのか!?)
そこから焦りが攻撃に表れておりいつの間にか単調な攻撃になっていた。
次はどうしようかと考えるがうまく考えがまとまらない。
(!!)
ノクサリオに悪寒がいきなり走り咄嗟に頭を下げる。
すると、目の前に髪の毛が舞い落ちてきた。
それでようやく頭上を通り過ぎたのがカイシキの剣だということを理解した。
(あっぶね~~! もう少し下だったら首が飛ぶところだった)
ノクサリオは逃げるように距離を取ると煙が風に飛ばされたわけでもなく急に掻き消えた。
(やっぱり持って一分ってとこか)
カイシキはノクサリオの姿を発見すると笑みを浮かべた。
「お前、人を殺すのは初めてか?」
「それがどうした?」
「躊躇いが混ざった殺気が伝わってくる。あれじゃここにいると教えていると同じだ。煙の意味を成さない。不幸だったな。相手が悪かった。あの世で自分の不幸を憎むといい」
ノクサリオはカイシキの言葉は半分無視して考える。
(真っ向からは駄目、虚を突こうとしても駄目。……うん、駄目だ)
ノクサリオは再び足下から煙を立ち上らせあっという間にカイシキを包み込んだ。
カイシキは煙の中に閉じ込められる寸前に溜め息を大きく吐く。
「芸のないやつだ。何度やっても同じ事を」
カイシキはその場でじっと立ちノクサリオの攻撃を待つ。
今度は外しはしないといっているかのような殺気がノクサリオにひしひしと襲いかかる。
だが、ノクサリオは一向に攻撃を放たない。
それどころかノクサリオは回れ右をした。
そして、カイシキに背を向けて全力疾走を始めた。
(ば~か、煙がなくなるまでずっとそうしていろ~。逃げるが勝ちだ!)
カイシキは未だにノクサリオの動きが読めていなくその様子を見てノクサリオは笑いがこみ上げてくる。
(案外、俺の煙も中々……だ!?)
そのときノクサリオの目の前に何かかが舞い降りてきた。
それが何なのかノクサリオが理解する前にそれは静かにそれでいて力の籠もった拳が突き出してきた。
「がはっ!!」
その声が聞こえた瞬間、煙が霧散する。
そして、最初にカイシキの目に写った図は少し先にノクサリオが腹を両手で押さえて突っ伏している姿だった。
ノクサリオは悲痛な喘ぎ声を出し痛みに悶えている。
そして、ノクサリオのすぐ横にはたいそうご立腹な女性が仁王立ちしていた。
大剣を片手に蔑むようにノクサリオを見下ろしている。
カイシキのことは無視してアクルガの叱咤が始まった。
「ノクサリオ! 勝負を投げ出して逃げるものがあるか! この、馬鹿者!」
「も、問答無用かよ……。お、俺は全力でやったぞ。勝てる見込みがなかったから逃げただけだ」
そのノクサリオの言葉に何か引っかかったのかアクルガは眉をひそめる。
「あたしは全てを見ていた。嘘をつくな! お前、本当に勝つ気があったのか?」
ノクサリオは尻を地に着けて口を尖らして反論する。
アクルガの拳の威力は凄まじかったらしく未だに腹を抑えているが。
「ああ、俺は本気の本気だった!!」
「あたしが見る限りでは最初の攻撃を防がれたときでもう勝てないと悟り逃げ腰で戦っているふうに見えたが。あれは見間違いか? どうせお前のことだ。どうやって逃げようとか既に考えていたのだろう」
その言葉にノクサリオは言い返すことができず目を横に逸らす。
「それは肯定と見ても……」
アクルガは途中で言葉を止めノクサリオの背後に一瞬で移動した。
そして、片手で持っている大剣を横に突き出して迫ってきていたカイシキの巨大化した大剣を受け止めた。
カイシキの剣の大きさはアクルガの大剣以上になっておりスピードの乗り威力が倍増しているというのに力を入れてもびくともせずカイシキは目を見開いた。
「邪魔をするな!!」
アクルガは力を入れカイシキの剣を弾くと同時に跳躍しカイシキの懐まで一瞬で入り込む。
そして、アクルガは回し蹴りをカイシキの腹部に横からぶつけて吹き飛ばした。
カイシキは防御が間に合わず直接食らってしまい飛ばされている身体を止めようにも威力が強すぎてどうにもならない。
一体アクルガのどこからそんな力を出しているというのか。
アクルガの見た目は女性にしては長身であるが体格は至って普通に見える。
そんな外見からは想像ができないほどの力だ。
カイシキは地面に足をつけてブレーキをかける。
地面との摩擦によりカイシキの足の防具に焼けているような熱が籠もってきたらしくそこから煙が発生していた。
ようやく止まることができたカイシキは既に怒りが頂点に達していた様子であったがアクルガは不敵な笑みを絶やしていない。
それどころか視線をカイシキから外して再びノクサリオに向かっていった。
「ノクサリオ。お前の言いたいことも分かる。あたしも無駄死をしろと言っているわけじゃない」
「……え? この状況でまだ話続くの?」
食い気味にノクサリオはそう言いさらに言葉を続ける。
「ひたすら無視を続けてあのおっさん可哀想だろ」
ノクサリオはあれほど強いカイシキが不憫に思えて敵とはいえど気を遣わずにはいられなかった。
どうやらアクルガは完全にカイシキのことを強敵だと認識していないようだ。
「なるほど、お前は言葉ではなく実戦で教えてくれと言っているわけだな!!」
アクルガはノクサリオの話を一切聞かずに勝手に表情を一段と明るくさせる。
「確かに見取り稽古は大切だ。あたしの技をいくらでも盗むがいい!」
そのときノクサリオの心中はこうだった。
(えっこれって何も学べなかったら怒られるやつじゃないか……?)
ノクサリオはあからさまに嫌がっている表情を見せるが全く気付く様子のないアクルガは意気揚々に動きの止まっているカイシキに視線をやる。
アクルガがノクサリオと話している間、アクルガは完全な無防備だった。
それでもカイシキが動かなかったのは先程の不意打ちの際に実力の差を感じ取ったからだ。
どんな攻撃をしても避けられるという未来しかカイシキは見えなかったのだろう。
だが、それでも実力差に余りあるアクルガに対して一歩も退く様子はない。
ノクサリオはそれに敬意抱くとともに今からカイシキに訪れる悲劇を考えると同情してしまう。
「しかし、残念だ。せっかく敵の将を討ち取り正義の味方アクルガここにあり!! と広めたかったのだがどうやらお前の実力を見るにそうではなかったらしい」
アクルガは大袈裟に溜め息をつき首を振る。
「な、なんだと!?」
カイシキは目を充血させ額に血管が浮き出ている。
それを見ただけで怒りが頂点に達しているのだなとノクサリオは感じた。
だが、ノクサリオは知っている。
アクルガは挑発を促したわけではなくその言葉には悪意が一切含まれていない。
ただ本音を言っているだけだ。
(それがまた、たちが悪いのだけどな)
「俺はフロンブド様、親衛三隊長の一人であるカイシキだ。小娘ごときがこのカイシキを侮辱するとは!!」
そんなカイシキの怒号にアクルガは目をぱちくりしている。
「まさか、お前……将なのか? それは悪いことを言ってしまったな。ハッハッハ。許してくれ」
満面の笑みのアクルガの言葉でカイシキの我慢の限界は訪れついに斬りかかってくる。
「ノクサリオ! よく見ておけ!」
アクルガは迫り来るカイシキの剣を受け止め打ち合いを繰り返す。
先程、次々と剣の大きさを変えてくるカイシキの攻撃にノクサリオは苦しめられていたがアクルガは的確に捌いている。
(分かっていたけどアクルガって凄いんだな。頭は少しあれだけど)
次第に、カイシキの集中力が薄れていきノクサリオは微かな隙に気づくことができた。
ノクサリオでも見つけた隙をアクルガは見逃すことなく腰を思い切り捻りカイシキの剣を打ち上げる。
カイシキはその衝撃に耐えることができなく剣を手放してしまった。
武器がなくなったカイシキは苦し紛れに突進を行いアクルガは大剣を捨て身軽にそれを躱す。
「お前も武器を失った! これで状況は白紙に戻ったわけだ! いや」
カイシキはアクルガが捨てた大剣を拾い構える。
「これで優勢は逆転だ……」
だが、アクルガはカイシキが言い終わる前に一瞬でカイシキとの距離を詰め懐に潜り込んだ。
その動きにカイシキはついて行けていなくまだ目線は先程までアクルガがいた位置に向いている。
「あたしには武器がない? ここにあるではないか」
その言葉でようやくアクルガの位置に気が付いたカイシキだったがもう遅い。
アクルガは自分の右腕を突き出して掌をカイシキの鳩尾に軽く乗せる。
そして、左腕で右腕の手首を握りしめて動かないように固定した。
「目に焼き付けろ! 正義の鉄槌!
アクルガの叫びとともに大気が揺れカイシキの背中一面から波動が貫通した。
その波動の形は虎の顔を象っておりまるで虎がカイシキの身体を突き抜けたかのように見える。
その波動はさらに突き進み途中にあった岩をも砕いていきやがて虎の顔の形が少しずつ消えついに跡形もなくなった。
カイシキの身体は遅れて反応して一直線に吹っ飛んでいき姿が見えなくなった。
アクルガの虎掌波は魔力を掌に溜め衝撃波として一気に解き放つ技だ。
威力は申し分がなくあれほど素早く掌に一点集中して魔力を解き放てると言うことは己の魔力を制御していることに他ならない。
単純そうな技だがこれを扱うには血の滲む鍛錬を繰り返さなければならないだろう。
(これを……真似しろっていうのか?)
ノクサリオは突っ立ったまま唖然とし無理という言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。
「ノクサリオ! 大丈夫か!」
横から突然声が聞こえたのでノクサリオは身構えたがその声の主がデルフだったため力を抜く。
「丁度、今終わった。俺じゃなくアクルガが、だけどな」
「仕留めたのか?」
「いや、吹っ飛んでいったから生死はわからないな」
「デルフ! 怪我はもういいのか?」
ノクサリオとデルフが話しているとアクルガが右肩を回しながら戻ってきた。
「ああ」
デルフは大丈夫だというように左肩をぽんぽんと叩く。
それを見てアクルガは頷いた後、アクルガは不満そうに自分の掌を見詰めた。
「あたしはまだまだ未熟だ」
「どこがだよ。あんなやばい技を出しておいて」
ノクサリオは透かさずアクルガに突っ込むがアクルガは手を握りしめて悔しそうに言う。
「あれはまだ未完成だ。本来は顔だけではなく虎が走って駆け抜けていくのだ」
あれで未完成なのかとノクサリオは唖然としていると戦場内が騒がしくなってきた。
ノクサリオは何事かと思って視線を移すとどうやら敵軍が撤退を始めたらしい。
「ノクサリオ、アクルガ。あれを見てみろ」
デルフが指を差した先を見てみるがなにも見えない。
目を凝らしてようやく薄らと何かが動いているのが見えたぐらいだ。
アクルガも見えていないらしくなんとか見ようと目を細めている。
どんな状況なのか質問しようとするがその前にデルフは説明してくれた。
「どうやら、敵軍の本隊も退却を始めたらしい。流石、ハルザードさんだ。俺たちも引き上げるぞ」
「今追撃しなくていいのか? チャンスだぞ?」
ノクサリオはそう言うがデルフは呆れたように息を吐く。
「ノクサリオ、クルスィーの言葉を忘れたのか? 敵が退却したら深追いはせず戻ってこいだ」
「そういやそんなこと言っていたな。ということは全部あの娘の筋書き通りということか」
「ああ、ハルザードさんたちも陣まで後退するだろう。これもクルスィーの策通りだ。まぁそもそも数が少ない俺らが追撃することはない。さぁ戻るとしよう」
デルフは馬を呼び跳躍して飛び乗ると大声で命令を下して三番隊は戦場を後にして陣に引き返し始めた。
それに続いてノクサリオとアクルガは合流したガンテツとヴィールとともに陣に引き返す。
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