第8話 フィオナの嫉妬とハプニング
さらに数日経ち。
俺は完成した店を見て、歓喜の声を上げた。
「おお、これが俺の店か」
俺の小屋よりずっと大きい木造の建物である。
さっそく扉を開いて中に入ると、かなり広々とした空間が出迎えてくれる。
それだけでも驚いたのに、魔導士の扱う杖を立て掛けるためのスタンドや、魔導具の展示用ケース、小物を置ける棚まで完備されているのを見て、感動を抑えきれなかった。
「これらはクレアさんのサービスか」
ガラス張りの展示ケースを開閉していると、扉が開かれる音がした。
フィオナが来たのだろうか、と後ろを振り向けば。
「……随分と広い店だな」
低い声で呟いた褐色肌の少女が後ろにいた。
「あんたは、村の用心棒さん?」
俺がこの村に戻ってきた日に出会った、狼人族の少女が、なぜか出来たての俺の店にやってきている。
偶然通りがかっただけとは思えない。
「なにか用か? まだ店はオープンしていないんだが」
「ボクはクレア様から頼まれてここに来た。なにやら力仕事が必要だと言われてな」
「力仕事? ああ」
魔導具の仕入れの件についてだろうか。
確かに色々と仕入れれば、それだけ運ぶ手間がかかるし、魔導具の中には杖や冷蔵庫などの大きなものまである。それらを一人で運ぶのは確かに辛い。
狼人族の少女はレザーグローブに包まれた手を差し出してくる。
「ボクはセンリだ。よろしく頼む」
「俺はリオン。こちらこそ、お世話になるよ」
握手を交わした俺とセンリは、ひとまず店を出た。
「仕入れ時はいつだ?」
「今日の夕方にはメーカーに発注して仕入れるつもりだ。大体商品が完成して届くまでに七日は掛かる」
「七日か。ならばそれまでは暇だということか」
「そうなるな」
センリと村を歩きながら、今後の予定を話し合っていると、前方からフィオナが走り寄ってきた。
「リオン、店の様子はどうでしたか?」
「ああ、すごく広くて良い店だったよ」
「そうですか。ところで、リオンはなぜセンリさんと一緒に歩いているのですか?」
フィオナが、なにやらじっとりとした視線を向けてくる。
不服そうな表情で、隣のセンリを見やっていた。
「仕入れ時に商品を運んでもらおうと思ってな。その相談をさっきまでしていた」
「……本当に?」
「なぜ訝しむんだ?」
「だってリオンとセンリさん、仲良さそうですし」
若干頬を膨らませて、そう言ったフィオナ。
……もしかして、俺が他の女と仲よさげに歩いていたから嫉妬しているのか?
「フィオナ、言っておくが俺とセンリはそこまで仲が良いというわけじゃない。まともに話したのも今日が初めてなんだ。なあ、センリ」
「そうだな。だから安心してくれ、フィオナ嬢。ボクは貴女からリオン殿を奪うつもりは全くない」
「べ、別にリオンを奪われる心配をしているわけではありません!」
拗ねたように俺達から顔を反らすフィオナ。
なんだかそんな妻を可愛く感じて、俺は彼女の手を取って引き寄せた。
「な、なんですかリオン」
「俺の大事な妻を愛でたくてな。そういうわけでセンリ、俺達はここで失礼するよ」
「承知した。また七日後、店に出向く」
センリは短くそう言って、足音も立てずにこの場を去っていった。
俺はフィオナの温かな手を握って、歩き出す。
フィオナは未だに納得いかないみたいで、こちらに視線を合わせてくれない。
俺はフィオナの形の良い耳に唇を寄せて、ささやく。
「家に帰ったら、しようか」
「な、ななな何言ってるんですか!? まだお昼が過ぎたばかりですよ!?」
「関係ないだろう? 俺は今、フィオナとしたいんだ。もちろん、夜にもする」
「……リオンのばか。絶倫」
絶倫。
それは男にとって最高の褒め言葉である。
俺は家に戻った途端、有無を言わせずフィオナを布団に押し倒すのであった。
可愛らしくポカポカと胸を叩いてくる妻の服を徐々に脱がせていく。
俺もまた服を半脱ぎにさせ、頬を赤くしている妻に覆いかぶさった。
「ねえ、リオン……こんな時間からしていたら、外に声が漏れて村の人達に聴かれてしまいませんか?」
「大丈夫、している最中は俺がずっと魔法で消音するから。バレないぞ」
「本当ですか……? 私をはずかしめるための嘘じゃないですよね……?」
「そんなことしない。フィオナの可愛い声を聴けるのは、俺だけでいい」
俺はフィオナの唇を、自分の唇でふさいだ。
まるで媚薬のように甘い妻の唾液を吸い取る行為に夢中になっていると。
「リオンー、フィオナー、遊びにきたよー」
ユーノの声がしたと思ったら、バタンっと勢いよく小屋のドアが開け放たれる音が響く。
「ま、まずい。と、とりあえず服を着よう」
「え、ええ!」
俺達は急いで、乱れた服装を整える。
「二人ともー、いないのー?」
ユーノはいま恐らく居間を見渡している。
俺達がいる寝所は居間のすぐ隣だが、すだれで仕切られているから、すぐにはバレない。
ズボンを上げ、上着を着込む俺。
フィオナは上着のボタンを閉めるのに手間取っていた。
白くて大きな乳房が丸見えである。
そしてついに、すだれが開かれた。
「にゃんだ、ここにいたのかにゃー」
「あ、ああ。ユーノ、おはよう」
「今はお昼だけど? もしかして二人とも、今起きたの?」
「そ、そうだ」
「フィオナがおっぱい丸出しなのは、にゃんで?」
「そ、それはだな、フィオナは寝相が悪いんだ。だから服がはだけてだな」
「そゆことかー」
うんうんと頷くユーノ。
なんとか危機は脱したようだった。
――と思ったのだが。
「リオン」
「なんだ、ユーノ?」
「ズボン、すごく膨らんでる。にゃはは」
俺の股間は、フィオナとキスをしている間にビンビンに反り立っており、ズボンにテントを作っていたのだ。
「これはだな……朝に起こる男の生理現象で――」
「今はお昼だけど?」
ぐうの音も出ない俺であった。
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