第239話 表彰式
夕焼け色に染まる空。赤く照らされた校庭に、競技を終えた生徒達が集まっていた。グルリと円形闘技場を囲み、ノイマン学長とラヴレス副学長の言葉を待っている。
「ほっほっほっ、ではお待ちかねの表彰式ですな」
「表彰台に立つのは誰でしょう、非常に楽しみですね」
楽しかった運動会の締め括り、ついに最終結果の発表だ。シンと静まり返る中、ラヴレス副学長はよく通る声で最終結果の書かれた紙を読みあげる。
「では発表します、第三位は……リィアンさんです!」
「やった、三位はリィだって!」
三位に輝いたのは飛び入り参加のリィアンだ。一日目から好成績を重ね、剣術合戦と剣術大会で健闘した結果の三位である。
「ではリィアンさん、三位の表彰状をお受け取りください」
「ありがとうございます!」
「せっかくですからな、今の気持ちを一言どうぞですな」
「えっと……三位になれて凄く嬉しいです、この表彰状は宝物にします! とっても楽しい二日間でした、また皆と一緒に運動会をやりたいです!」
リィアンは表彰状を抱え、「えへへっ」と笑って心から嬉しそう。この運動会はリィアンにとって、忘れられない思い出となったことだろう。
「では続いて第二位を発表します、第二位は……ハインリヒさんです!」
「……二位か」
二位に輝いたのは生徒会長のハインリヒ。一日目終了の時点では一位だったが、剣術合戦と剣術大会での敗北により順位を落としてしまった模様。二位の表彰状を受け取るも、その表情はどこか浮かない。
「ではハインリヒさんも、今のお気持ちを一言どうぞ」
「一位になれず悔しいです、とても悔しい……しかしそれ以上に、今は晴れやかな気持ちです! 心から愛する学園で、心から愛する生徒達と運動会を楽しめたのですから。一位こそ逃しはしましがた、私に憂いはありませんとも!」
「ほっほっほっ、成長しましたな」
浮かない表情はほんの一瞬、ハインリヒは満面の笑顔で表彰状を高々と掲げる。学園祭の人気投票で三位だった時とは違い、スッキリとした気持ちで結果を受け入れたのだ。
成長した孫の姿に、祖父であるノイマン学長も嬉しそうである。
「さて、それでは第一位を発表しましょう」
風のそよぐ緩やかな音、それ以外の音は一切ない。緊張感は最高潮に達したところで、いよいよ一位の発表である。
「栄えある第一位は……ナターシャさんです、おめでとうございます!」
「やった、やりましたーっ!」
見事一位に輝いたのはナターシャだ。剣術合戦と剣術大会での好成績により、ハインリヒの順位を上回ったのである。
この日一番の大きな拍手に包まれながら、ナターシャはノイマン学長から豪華な優勝杯を受け取る。
「おめでとうですな、これは一位の者にのみ贈られる優勝杯ですな」
「凄いです、嬉しいです!」
「では第一位に輝いたナターシャさん、どうぞ今のお気持ちお願いします」
「とても楽しかったです、最高の思い出になりました! 一緒に特訓してくれたクラスメイトやエリザベス先生、そして応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました!」
「では一位から三位に輝いた三名、表彰台へお上がりください」
凸型の表彰台に立つナターシャ、ハインリヒ、そしてリィアン、三人に贈られる拍手は一向に鳴りやまない。
こうして運動会は幕を閉じ──。
「おっと、この後は後夜祭もありますからな。急いで片づけて、後夜祭の準備をしますぞ!」
運動会は幕を閉じたが、まだまだ楽しい時間は続く。
続いては後夜祭だ。
✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡
賑わう表彰式の様子を、ヴィクトリア女王、クリスティーナ、ガーランドは校舎の陰から覗いていた。その表情は非常に険しく、とても表彰式を楽しんでいる雰囲気ではない。
「ガーランド……、今の話は……本当なの……?」
「そんなまさか、信じられないわ」
ガーランドはそっと身を乗り出し、表彰台に立つリィアンを指差す。
「間違いありません、あの娘はガレウス邪教団の魔人です!」
リィアンへと迫る危機、そして静かに日は落ちる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます