第152話 それはもはや戦争

 ここは魔王城。

 魔界の中心に建つ、巨大な城である。


 ウルリカ様のいない謁見の間は、どこか寂しい雰囲気に包まれている。そんな謁見の間に突如として大量の魔法陣が浮かびあがる。幾重にも重なった魔法陣は周囲を眩く照らし、そして──。



 ──ズズンッ!!──。



 魔王城を揺るがすほどの巨大な衝撃、モヤモヤと立ち込める光の靄。

 舞い踊る光の靄を掻き分けて、銀色の少年と漆黒の竜が姿を現す。魔界を統べる大公爵、銀星エミリオと黒竜ドラルグである。


「フム、ココハ魔王城カ?」


「あぁ、無事に到着ですね」


 どうやらエミリオとドラルグは、ウルリカ様の時空間魔法によって魔界へと帰ってきたようだ。


「グルルルルッ! 久シブリニオ会イシタウルリカ様ハ最高デアッタナ!」


「ええ! やはりボク達の魔王様は最高でしたね!」


「トコロデエミリオヨ、我ハ人間界ニ弟子ヲ作ッテヤッタゾ!」


「あぁ、ボクなんて教え子を三人も作ってしまいましたよ!」


 人間界での思い出を振り返り、大盛りあがりのエミリオとドラルグ。そこへ背後から氷河よりも冷たく暗い声が突き刺さる。


「お帰りなさいエミリオ、そしてドラルグ……」


 地獄の底から響くような声、コツコツと響く不気味な靴音。現れたのはタキシード姿の大悪魔、魔界の宰相ゼーファードである。


「あらあらぁ? ずいぶんと人間界を楽しんできたみたいねぇ?」


「それにしても遅かったな、いつまで待たされるのかと思ったぞ?」


「ふぁ……アタイなんて待ちくたびれて眠たくなっちゃったよ……」


 現れたのはゼーファードだけではない。暗闇を割いて現れる四つの強大な魔力、エミリオとドラルグを除いた四体の大公爵だ。


「エミリオヨ、我ハ嫌ナ予感ガスル……」


「奇遇ですね、ボクも嫌な予感がしますよ……」


「フフッ、そう身構えないでください……ところで人間界は楽しかったですか? ウルリカ様はお元気でしたか?」


 警戒していたエミリオとドラルグだったが、ゼーファードの柔らかな態度に油断して口を滑らせてしまい──。


「あぁ、久しぶりにウルリカ様と過ごせて楽しかったですよ。ウルリカ様もお元気そうで、そして最高に可愛らしかったです!」


「ナント言ッテモウルリカ様ノメイド服姿デアル! アノ可愛ラシイ姿、オ前達二モ見セテヤリタカッタゾ!」


 ──そして場の空気は凍りつく。


「待てドラルグ殿……ウルリカ様のメイド服姿だと……?」


「もしかしてぇ……ウルリカ様がメイド服を着てくれたのかしらぁ……?」


「ウルリカ様のメイド服姿……アタイも見たかったな……」


 凄まじく強大な魔力と殺気の嵐、謁見の間全体に大きな亀裂が迸る。


「フフッ……、エミリオ……ドラルグ……」


「な、なんでしょうゼーファードさん?」


「宰相権限により、両名を極刑に処します……」


「ハッ!? ゼーファードヨ、冗談ハヨセ!」


「冗談ではありませんよ……罪状は“ウルリカ様の貴重なメイド服姿を見せてもらいやがってこの上なく羨ましいなクソ野郎共罪”だあぁぁっ!!」


 憎悪と嫉妬の感情を大爆発させるゼーファード。


「さあ! あのクソ野郎共を極刑に処するのです!!」


「「「極刑! 極刑! 極刑!!」」」


 そして響き渡る“極刑”の大合唱。しかしエミリオとドラルグも黙って極刑に処されるはずはない。


「こうなったら徹底抗戦です! 第七階梯、銀星魔法──!」


「グルオォォッ! 集ウノダ、黒キ竜ノ雷ヨ──!」


「ムカつくクソ野郎共に極刑を! 第七階梯、悪災魔法──!」


「消し炭にしてやるんだから! 神器解放──!」


「久しぶりに全力を出すとしよう……鬼の太刀、秘剣──!」


「百獣ヴァーミリアの本気を見せてあげるわぁ……クルルルゥ──!」


 大公達による壮絶なケンカ、それはもはや戦争と呼ぶにふさわしい。

 そして数日後、そこには倒壊した魔王城とボロボロのエミリオ、ドラルグが転がっていたという……。



 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡



 セリフの頭にキャラクター名を入れました。

「誰が喋っているか分からない!」という方は、以下から読んでみてください。



 ✡ ✡ ✡ ✡ ✡ ✡



 ここは魔王城。

 魔界の中心に建つ、巨大な城である。


 ウルリカ様のいない謁見の間は、どこか寂しい雰囲気に包まれている。そんな謁見の間に突如として大量の魔法陣が浮かびあがる。幾重にも重なった魔法陣は周囲を眩く照らし、そして──。



 ──ズズンッ!!──。



 魔王城を揺るがすほどの巨大な衝撃、モヤモヤと立ち込める光の靄。

 舞い踊る光の靄を掻き分けて、銀色の少年と漆黒の竜が姿を現す。魔界を統べる大公爵、銀星エミリオと黒竜ドラルグである。


ドラルグ「フム、ココハ魔王城カ?」


エミリオ「あぁ、無事に到着ですね」


 どうやらエミリオとドラルグは、ウルリカ様の時空間魔法によって魔界へと帰ってきたようだ。


ドラルグ「グルルルルッ! 久シブリニオ会イシタウルリカ様ハ最高デアッタナ!」


エミリオ「ええ! やはりボク達の魔王様は最高でしたね!」


ドラルグ「トコロデエミリオヨ、我ハ人間界ニ弟子ヲ作ッテヤッタゾ!」


エミリオ「あぁ、ボクなんて教え子を三人も作ってしまいましたよ!」


 人間界での思い出を振り返り、大盛りあがりのエミリオとドラルグ。そこへ背後から氷河よりも冷たく暗い声が突き刺さる。


ゼーファード「お帰りなさいエミリオ、そしてドラルグ……」


 地獄の底から響くような声、コツコツと響く不気味な靴音。現れたのはタキシード姿の大悪魔、魔界の宰相ゼーファードである。


ヴァーミリア「あらあらぁ? ずいぶんと人間界を楽しんできたみたいねぇ?」


ジュウベエ「それにしても遅かったな、いつまで待たされるのかと思ったぞ?」


ミーア「ふぁ……アタイなんて待ちくたびれて眠たくなっちゃったよ……」


 現れたのはゼーファードだけではない。暗闇を割いて現れる四つの強大な魔力、エミリオとドラルグを除いた四体の大公爵だ。


ドラルグ「エミリオヨ、我ハ嫌ナ予感ガスル……」


エミリオ「奇遇ですね、ボクも嫌な予感がしますよ……」


ゼーファード「フフッ、そう身構えないでください……ところで人間界は楽しかったですか? ウルリカ様はお元気でしたか?」


 警戒していたエミリオとドラルグだったが、ゼーファードの柔らかな態度に油断して口を滑らせてしまい──。


エミリオ「あぁ、久しぶりにウルリカ様と過ごせて楽しかったですよ。ウルリカ様もお元気そうで、そして最高に可愛らしかったです!」


ドラルグ「ナント言ッテモウルリカ様ノメイド服姿デアル! アノ可愛ラシイ姿、オ前達二モ見セテヤリタカッタゾ!」


 ──そして場の空気は凍りつく。


ジュウベエ「待てドラルグ殿……ウルリカ様のメイド服姿だと……?」


ヴァーミリア「もしかしてぇ……ウルリカ様がメイド服を着てくれたのかしらぁ……?」


ミーア「ウルリカ様のメイド服姿……アタイも見たかったな……」


 凄まじく強大な魔力と殺気の嵐、謁見の間全体に大きな亀裂が迸る。


ゼーファード「フフッ……、エミリオ……ドラルグ……」


エミリオ「な、なんでしょうゼーファードさん?」


ゼーファード「宰相権限により、両名を極刑に処します……」


ドラルグ「ハッ!? ゼーファードヨ、冗談ハヨセ!」


ゼーファード「冗談ではありませんよ……罪状は“ウルリカ様の貴重なメイド服姿を見せてもらいやがってこの上なく羨ましいなクソ野郎共罪”だあぁぁっ!!」


 憎悪と嫉妬の感情を大爆発させるゼーファード。


ゼーファード「さあ! あのクソ野郎共を極刑に処するのです!!」


ミーア、ジュウベエ、ヴァーミリア「「「極刑! 極刑! 極刑!!」」」


 そして響き渡る“極刑”の大合唱。しかしエミリオとドラルグも黙って極刑に処されるはずはない。


エミリオ「こうなったら徹底抗戦です! 第七階梯、銀星魔法──!」


ドラルグ「グルオォォッ! 集ウノダ、黒キ竜ノ雷ヨ──!」


ゼーファード「ムカつくクソ野郎共に極刑を! 第七階梯、悪災魔法──!」


ミーア「消し炭にしてやるんだから! 神器解放──!」


ジュウベエ「久しぶりに全力を出すとしよう……鬼の太刀、秘剣──!」


ヴァーミリア「百獣ヴァーミリアの本気を見せてあげるわぁ……クルルルゥ──!」


 大公達による壮絶なケンカ、それはもはや戦争と呼ぶにふさわしい。

 そして数日後、そこには倒壊した魔王城とボロボロのエミリオ、ドラルグが転がっていたという……。

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