第50話 次なる波乱

 分厚い雲のかかった空の下。

 ウルリカ様、オリヴィア、シャルロット、ナターシャの四人は、寮から学園までの道のりを歩いていた。


「学校じゃ~! 学校なのじゃ~!」


「ウルリカ様! 上着を忘れていますよ!」


 朝早くから、大はしゃぎで登校するウルリカ様。

 走り回るウルリカ様を追いかけて、オリヴィアは汗びっしょりだ。


「ウルリカ様、つかまえました! はぁ……はぁ……」


「うむ? オリヴィアよ、なにやら疲れておるな?」


「ウルリカ様のせいですよぉ~」


 平和な朝の登校風景。

 そんな中ナターシャは、とある異変に気づく。


「おかしいですね……今は通学の時間なのに、他のクラスの生徒は寮に戻っていきますよ?」


「本当だわ……どういうことかしら?」


 不思議に思いながらも、教室塔へ到着する四人。

 そこでシャルロットは、見知った顔を発見する。


「あら、ルードルフ大臣?」


「お待ちしておりましたよ、シャルロット様」


 教室塔の前で待っていたのは、ロムルス王国の大臣ルードルフである。

 大きな馬車を引き連れて、物々しい雰囲気だ。


「わざわざ学園まで……一体どうしましたの?」


「実はみなさんに、残念なお知らせを持ってきたのです……」


 そう言ってルードルフは、申し訳なさそうに表情を曇らせる。


「えー……本日の授業は全て中止です」


「なっ、なんじゃとぉっ!?」


 ルードルフからのお知らせを聞いて、ウルリカ様は膝から崩れ落ちてしまう。


「ウルリカ様! しっかりしてください!」


「中止……なぜじゃ……中止……なぜじゃ……中止……なぜじゃ……」


 グルグルと目を回しながら、ブツブツと呟くウルリカ様。

 先ほどまでの元気は様子からは一転、オリヴィアに支えられてフラフラだ。

 そんなウルリカ様を心配そうにしながら、シャルロットはルードルフに質問をする。


「まさか……また下級クラスという理由で、授業を中止にされましたの?」


「いいえ、今回はロームルス学園の全クラスで、一斉中止となっております」


「「全クラスで一斉中止!?」」


 驚くシャルロットオリヴィア。そして呆然自失のウルリカ様。

 一人冷静なナターシャは、あることに気づく。


「そっか! それで他のクラスの生徒は、寮に戻っていたのですね」


「そういうことですの……でもどうして、授業は中止になりましたの?」


「理由については後ほど説明しますよ」


 パチンと指を鳴らすルードルフ。

 すると、馬車の扉がゆっくり開いていく。


「とりあえずシャルロット様とウルリカは、ロームルス城までお越しください」


「ロームルス城ですの?」


「ええ、ゼノン王がお二人をお待ちです」


 こうして、またもや授業を受けられなくなってしまったウルリカ様。


 次なる波乱が、幕を開ける。

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