第175話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その20
次の日の朝、郁人も美月も、期待に胸を膨らませ、家を出ると、本日も家の前で鉢合わせる郁人と美月なのである。
「美月……おはよう」
「おはよう!! 郁人……はい!! 今日のお弁当だよ!!」
楽しみで眠れない夜を過ごして、結局、少ししか眠れないまま、朝早くに気合を入れて作ったお弁当を郁人に両手で手渡すのである。
「美月、ありがとう……いや……でも、やっぱり、俺が美月に作ってあげたかったな」
「そ、それはダメだよ!! 郁人のお弁当は私が作るの!! 本当は毎日作りたいのに……」
郁人がそう残念そうに言うと、美月が頬をぷくっと膨らませて、不満そうにそう怒るのである。そんな美月を見て、今朝から、テンションの高い郁人は、美月の頭を撫でるのである。
「美月は、本当に可愛いな!!」
「えへへへへへ」
美月は、頭が上下左右にブンブン揺さぶられながら、嬉しそうに郁人から激しく頭を撫でられるのである。美月は、この郁人の激し、過激な頭なでなでが昔から大好きなのである。
そして、今日は、テンション高めな二人は、久しぶりにお互い上機嫌に、ゆるふわ宏美との待ち合わせ場所に向かうのである。ゆるふわ宏美は、いつも通り、コンビニの珈琲を飲みながら、郁人達を待っていたのだが、今日はなぜか、普段の待ち合わせ時間より早めに郁人達が来たため、まだ、コンビニ珈琲を飲み終わってないゆるふわ宏美は、一口飲みながら、こちらに向かう郁人達を見て、珈琲を吹き出しそうになるのである。
「ごほっ!! けほっ!! み、美月さん……ど、どうしたんですか~!?」
「ひろみん、おはようだよ!! どうしたのって…どうもしてないよ」
「どうもしてないことないですよ~!! そのか……」
ゆるふわ宏美は、郁人と仲良く恋人繋ぎで待ち合わせ場所に来た美月の髪が、超ぼさぼさヘアーになっていることに、驚いて、髪凄いことなってますよ~と言おうとしたら、美月に素早く口を封じられるゆるふわ宏美なのである。
「ひろみん……さぁ、一緒に学校行こうか……じゃあ、郁人……私達はもう行くね……お昼休みにまた会おうね!!」
「あ……ああ…」
美月は、有無を言わさぬ圧を放って、ゆるふわ宏美の口を封じ込めたまま、学校に向かって歩き出すのである。そんな、美月に疑問顔で首を傾げる郁人なのであった。
そして、郁人から見えないところまで来ると、美月はゆるふわ宏美を解放するのである。
「はぁ、はぁ……み、美月さん!? な、何するんですか~!! ていうか、髪の毛大変なことになってますよ~!!」
美月から、解放されたゆるふわ宏美は、必死に呼吸をした後に、美月のぼさぼさヘアーに再度ツッコムのである。
「えへへへへ」
しかし、何故か嬉しそうな美月に、目を見開いて困惑するゆるふわ宏美なのである。
「な、何で嬉しそうなんですか~!?」
「え!? だって、朝から、郁人に頭撫でてもらえたんだよ!! こんなに、嬉しいことないよ!!」
「頭を撫でてって~……どんな撫で方したら~、そんな凄いことになるんですか~!?」
嬉しそうにそう言う美月を見て、ゆるふわ宏美は、ツッコムのである。いつも、きちんとセットされた美月の綺麗なボブヘアーが今は、超ボサボサで、寝起きでもそんなに、ならないでしょと言うほどなのである。
「えへへへへ、さすが郁人だよね」
「いえ、郁人様のことを褒めてはないですよ~!! これから、学校なのに、その髪はダメですよ~!!」
「あ……大丈夫だよ……ちゃんと直すから」
そう言って、美月は、髪を整えだすのである。ゆるふわ宏美は、嬉しそうに髪を戻していく美月を見ながら、疑問を口にするのである。
「髪が凄いことになってることに、気がついているのでしたら~、何ですぐに直さなかったんですか~!?」
「え!? それは当たり前だよ!! 郁人の前で治せる訳ないよね!!」
え? ひろみん、何言ってるのと疑問顔でそう言い放つ美月に、んんんん? と疑問顔になるゆるふわ宏美なのである。
「いえ~、普通にすぐに直せばいいじゃないですか~……正直、物凄いことなってましたよ~」
「ひろみん……だから、郁人の前で、髪の話をしようとしたんだね……ダメだよ!! ひろみん、郁人の前で、絶対に、髪の話は厳禁だからね!!」
「な、何でですか~!?」
ゆるふわ宏美の言い分に、美月は、人差し指を突きつけながら、絶対ダメと言い放つが、納得のいかないゆるふわ宏美なのである。
「だって、郁人の前で髪を直したり、いじったりしたら、郁人が気にして、次から私の頭を撫でてくれなくなったらどうするの!? 大変なことになるよね!? それに、そのままにしておけば、また郁人が、ナデナデしてくれるかもしれないでしょ!!」
「は、はぁ~?」
ドヤ顔でそう言い放つ美月に、呆れ果てるゆるふわ宏美なのである。正直、ゆるふわ宏美は、え? そんな理由でと、かなり呆れているが、美月は本気で言っているのである。
「ひろみん……これは、大事なことだからね!! 郁人のナデナデは世界一なんだからね!! しかも、ここまで、激しくナデナデしてくれることなんてないんだから!! 貴重なんだよ!!」
「は、はぁ~…」
いまいち、納得いってない表情のゆるふわ宏美に、美月は、なんでわからないのとばかりに、そう必死に説明するが、やはり、ゆるふわ宏美は、呆れ顔なのである。
「……いえ、美月さん……それだけの理由なら~……髪すぐに戻した方が良いですよ~」
「だから、ダメだって!! 郁人に、二度とナデナデしてもらえなかったら、どうするの!?」
ゆるふわ宏美は、ぼさぼさヘアーの美月を思い出して、それだけの理由なら、戻した方が良いと正論を言うのだが、美月にとっては、暴論なのである。ムッとしている美月に、わたしぃが間違っているんですか~と驚きの表情を浮かべ、納得のいかないゆるふわ宏美は、残っているコンビニ珈琲を飲みながら、美月の郁人のナデナデがどれだけ凄いかという解説を聞き流すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます