第170話乙女ゲーのヒロインは、ギャルゲの主人公に勝ちたいのです。その15
美月は、ワクワク、ソワソワで、放課後、今まで超絶不機嫌だった美月が、たまに、機嫌が良さそうに生徒会の仕事をこなしている様子に、周囲は戸惑うのであった。
「では、お疲れ様です」
美月は、珍しく機嫌良さそうにそう言って、生徒会室を急いで後にして、夕焼けに染まる道を急いで帰るのである。そして、美月はいつも通り、公園の前で、前髪をいじりながら、郁人の事を待つのであった。
待つこと数十分すると、あからさまに疲れた様子の郁人を発見する美月の表情は、物凄く明るくなり、ジッと郁人の方を見つめる美月に、すぐに気がつく郁人なのである。
「美月……また、ここで待っててくれたのか? 先に俺の部屋に行ってていいんだぞ」
「たまたまだよ!! 待ってたけど……待ってたわけじゃないからね」
「なんだそれ……でも、美月の顔が見れて元気出た……ありがとな…美月」
意味不明な照れ隠しをする美月に、呆れながらも微笑む郁人に、顔が赤くなる美月なのである。
「郁人……疲れてるみたいだけど、何かあったの?」
「いや……まぁ、大丈夫だ……美月の方は、今日は機嫌よさそうだな……何か良いことでもあったのか?」
「え!? えっと……そ、そんなことないよ!!」
「……そうか? 最近、美月……ずっと、不満そうに、頬膨らませてること多かったからな」
「そ、そんなことないよ!! そんなことしないよ!!」
そう郁人に揶揄われて、頬を膨らませながら、プンプンと怒る美月の頭を、撫でる郁人なのである。
「郁人……そうやって、私の頭を撫でれば、私が誤魔化されるって思ってるよね?」
「そんなことないぞ」
「そんなことあるよ!!」
最近、よく郁人に揶揄われて、ムッとなる美月だが、結局郁人に頭を撫でられれば、機嫌がよくなるのである。もうすでに、頬が緩んでる美月だが、必死に、頬を膨らませて、怒りの表情を保つのである。
「そんなに必死になって、怒ってるアピールしなくてもいいだろ……本当に、美月は可愛いな」
「い、郁人!? な、何でバレ……な、なんでもないよ!!」
美月は、もうすでに怒ってないのに、頭を撫でられたくらいで、許すチョロい奴と思われたくなくて必死に怒ってるアピールをしていたことがバレて、顔を真っ赤になりながら、何でバレたのと言いそうになった美月なのである。
「美月、本気で怒ったら、まず口きかないだろ……喋ってくれるなら、そんなに怒ってないってわかるって」
「い、郁人の意地悪!! 本当に怒ったんだからね!!」
「そうか……それはごめんな……美月、許してくれ」
「……あ!! じゃあ、郁人の学校での話を聞かせてよ!!」
「……なんで?」
郁人が適当に謝っている姿に、絶対に郁人反省してないと思う美月は、郁人の昼休みの行動を調査する任務を受けていることを思い出すのである。美月が急に学校の話を聞いてくるので、さすがに郁人は疑問顔なのである。
「学校の話してくれたら、許してあげるよ」
「まぁ……別に普通だぞ……今日は、普通に、勉強して、風紀委員の仕事して、今、美月と一緒に居るって感じか」
「そ、そうじゃなくて、もっと、具体的な話をしてよ!! 例えば、お昼休みどう過ごしてるとか!!」
「どう……ああ、美月、今日の弁当美味かったぞ……ありがとな」
「そ、それはよかったよ……って、そうじゃなくて!!」
郁人は、美月にそう言われて、ふむっと腕を組んで一瞬考えて、そう答えを導き出して、美月にお礼を言う郁人に、嬉しくなる美月だが、ブンブンと首を振って、郁人との幸せお昼タイム実現させるために、頑張る美月なのである。
「そんなことより、早く帰らないと、時間なくなるぞ」
「え!? も、もうそんな時間なの!?」
郁人にそう言われて、美月は、急いで帰ろうと郁人の手を握るのである。
「美月……許してくれるのか?」
「え? なんで?」
「だって、手握ってくれるんだもんな」
「な!? い、郁人!! また、私を揶揄って……」
無意識に郁人の手を握ってしまった美月は、郁人にそう揶揄われて、真っ赤になりながら、もう知らないと、そっぽ向いて、家に向かって歩き出すのである。もちろん、郁人とは恋人繋ぎをした状態で、そんな、美月を愛しく思う郁人なのであった。
そして、美月は、自分の家に帰ると、すぐに私服に着替えて、郁人の家に向かうのであった。母の美里はすでに帰っていたが、行先もつけずに出て行く美月に、何も言えず気まずい母の美里なのであった。
いつも通り、すでに帰宅している郁人の両親と弟の雅人に挨拶をして、郁人の部屋に向かう美月は、郁人の部屋にノックして入ると、すぐにベッドにダイブするのである。
「もう、あと30分くらいしか時間ないから……アニメも見れずに録画が溜まる一方だな」
ベッドにダイブして、郁人の枕をギュっと抱きしめながらゴロゴロしている美月にそう言う郁人に、美月はハッと、自分の任務を思い出すのである。
「い、郁人!! さ、先の話の続きだよ!! 郁人お昼ってどう過ごしてるの?」
「どうしたんだ? 美月……急に…」
先ほどまで、幸せそうにベッドに横になっていた美月が、急に上半身だけ起こして、枕をギュっと抱っこして聞いてくるので、困惑する郁人なのである。
「いいから!! お昼はどう過ごしてるの!?」
「ど、どうと言われても……普通に過ごしてるけど……ま、まさか、み、美月…あ、安心してくれ!! 決して何もやましいことなどないからな!!」
今度は、いきなり郁人がテンパりだすので疑問顔になる美月なのである。
「うん? よくわかんないけど、私は郁人がどんな感じにお昼を過ごしているのか知りたいだけだよ」
「み……美月……お、怒っているのか? そ、その……確かに屋上でクラスの女子や、ゆるふわが連れて来る女子生徒達とお昼ご飯を食べてるが……それは仕方なくてだな」
「それは知ってるよ……そうじゃなくて、まず、授業が終わってから、郁人は何をするの?」
「な、何をするって……いや、何もやましいことはないぞ」
グイグイと質問する美月に、冷や汗ダラダラでテンパる郁人なのである。会話だけ聞くと、浮気を疑われている恋人同士の修羅場なのだが、美月は単純に、郁人との幸せお昼休みタイムのために、質問しているだけなのである。
しかし、そんなことは知らない郁人は、完全に美月に、女子生徒達と一緒にお昼を過ごしていることを怒られているのだと思っており、必死に弁明する郁人なのであった。話がかみ合わない二人は、帰りの時間まで、なんちゃって修羅場会話をするのであった。
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