第113話ギャルゲの主人公と乙女ゲーのヒロインは、勉強が得意なのである。その13

 場の雰囲気は最悪なのである。そんな中、ジト目でジッと郁人と美悠を見ている美月に冷や汗ダラダラな郁人と美悠なのである。


「郁人……美悠は私のいも…」

「あああああ~、みみみみ、美月さん……こ、ここここ、ここわからないのですが~!!」

「ひろみん…ちょっと待ってね……郁人…美悠…」


 ゆるふわ宏美がそう誤魔化そうとするが、ゆるふわ宏美に優しくそう言って、美月は郁人と美悠をジト目でなんでそうなっているのと追及するのである。そんな美月を、郁人様ファンクラブ幹部メンバーは睨むのである。


「美悠ちゃんは…い、妹だろ……うん」

「え、えっと……お、お兄ちゃんど、どうしよう」


 郁人がそう言うが美悠は戸惑いまくるのである。何を言っていいかわからずオロオロする美悠なのである。最悪の場の雰囲気に、梨緒だけが清楚な笑みを浮かべているのである。


「夜桜さん…夜桜さんも、郁人君の事で知らないことがあるってことだよぉ」

「……どういう事?」


 美月に、ニッコリ清楚笑みを浮かべて梨緒は不機嫌な美月にそう言い放つのである。


「夜桜さん……美悠ちゃんは郁人君の妹ってことだよぉ」

「なんで、美悠が郁人の妹なのよ? 美悠はわた…」

「夜桜さん! 美悠ちゃんは郁人君の妹、それでいいよねぇ」


 美月は、美悠は自分の妹と言おうとするも、梨緒が清楚笑みを浮かべて、美月の発言を遮って、そう言い放つのである。もちろん、美月はそんな梨緒に怒りの視線を向ける。そろそろ、やばいと思ったゆるふわ宏美が美月に話しかけるのである。


「み、美月さん!! わ、わたしぃの部屋に行きませんか~!! み、美月さんに見せたいものがあるんですよ~!! 親友の美月さんに~!!」

「……え!? ひろみん? 親友の私に!? な、なにかな!?」


 美月は、ゆるふわ宏美の親友発言に喜んで反応するのである。先ほどまで、梨緒に怒りの視線と感情を向けていたのに、誤魔化されるちょろい美月に安堵するゆるふわ宏美は美月をこの場から連れ出そうとするのである。


「美月さん……いいですか~…郁人様はこう言いたいのですよ~……将来美月さんと結婚したら美悠さんは妹だろって~……そう言う事ですよ~」


 美月の耳元で小声でそう言うゆるふわ宏美なのである。そう言われた美月は郁人の方を見ると、よくわかってない郁人だが、驚いて、少し嬉しそうな美月の表情から、とりあえず、ゆるふわが何とか誤魔化したのだろうと思い親指を立ててグッとするのである。


「……い、郁人…でも…あれ…おかしくないかな?」

「なにもおかしくないですよ~!! さぁ、美月さん、わたしぃの部屋に行きましょうね~」


 美月は、それは何かおかしいと疑問に思うのだが、美月に考える隙与えないように、ゆるふわ宏美は美月をこの場から連れ出そうとするのである。


「……でも、やっぱり、それでも、郁人の妹って事にはならない気が…」

「さ、さぁ、行きますよ~!! 美月さん!!」


 考える美月を引っ張って、自分の寝室に連れて行くゆるふわ宏美に、郁人様ファンクラブ幹部メンバーはエールを送るのである。


「会長…頑張ってくださいね!!」

「会長!! ファイトです!!」

「尊い郁人様のためにも、会長頑張ってくださいね」

「一生郁人様を推すために、会長気合です!!」


 好き勝手言われるゆるふわ宏美は心の中で、絶対に許さないと怒りの声をあげて、美月を連れ出すのであった。その様子をジッと見ていた郁人なのである。


「……よ、よし、俺も…トイレに行くかな……トイレどこだ?」

「……郁人君?」


 ゆるふわ宏美が、リビングから美月を連れ出して、すぐに郁人が不自然にそう言い放つのである。もちろん、梨緒は疑惑の視線で郁人を睨むのである。


「しまった……トイレの場所がわからないな…ゆるふわに聞かないと…ちょっと、行ってく……」


 立ち上がり、リビングから出て行こうとする郁人を、二人の手が摑まえるのである。


「す、すまないが…放してくれないか?」

「どこに行くのかなぁ? 郁人君?」

「お、お兄ちゃん!! 私を一人にしないでよ!!」


 ガッシリと掴まれてしまった郁人は、もちろん、美月のところに行こうとしたのである。それを察した二人は、絶対に郁人を逃がす気はないのである。


「……トイレに行ってくるから……その手を放してくれないか?」

「フフフフ、郁人君…嘘だダメだよぉ」

「お兄ちゃん!! いいから、ここに居てよね!!」


 ハイライトオフのヤンデレ瞳で、梨緒に嘘を見抜かれる郁人は、冷や汗ダラダラなのである。そして、美悠は単純にこの場で一人で居たくないからである。先ほどから、郁人様ファンクラブ幹部メンバーにチラチラ見られて、緊張している美悠なのである。


 そう、もしも、この場から郁人が居なくなれば、幹部メンバー達の美悠に対する怒涛の質問ラッシュが繰り広げられてしまうのである。


「……いや…もう我慢がな」

「……男の人は少しぐらい我慢できるから大丈夫だよねぇ…二人が戻ってくるまでは我慢してねぇ」

「お兄ちゃん!! 頑張って我慢して!!」

「い、いや……無理だからな…俺は、トイレに行ってくる」


 しかし、絶対に郁人を逃がす気はない二人なのである。ガッシリ掴まれている郁人は、トイレに行けないのである。


「……仕方ないなぁ…じゃあ、これでしていいよぉ」

「お…お前…そ、そ……」


 清楚笑みを浮かべて、梨緒はペットボトルを指さすのである。郁人達が来る前にみんなで、飲み干した空きのペットボトルである。驚愕の表情でペットボトルを見つめて、清楚笑みでとんでもないことを言う梨緒を見る郁人なのである。


「そ…それは無理だろ…いいから、トイレに行かせてくれ」

「嫌なら我慢しようねぇ……郁人君…ほら、勉強しよう…ねぇ」

「お兄ちゃん!! どうしても行くなら、私もついて行くからねぇ!!」


 実際にトイレに行きたい訳でもない郁人は、美悠と梨緒の圧倒的な圧に負けて、仕方なく座るのである。ゆるふわ宏美に美月の事は任せて、美悠に勉強を教えるのを再開して、みんなも、試験勉強を再開するのである。


 そして、梨緒達から、わからないところを聞かれて、親切丁寧に教える郁人の評価は言うまでもなく上昇して、妹の美悠に優しく勉強を教える姿に、感動する郁人様ファンクラブ幹部メンバーなのである。これにより、郁人のクラスでの人気は絶対的なものになるのであった。


 しかし、この姿を後に見ることになる美月がどう思うかは、言うまでもないのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る