第99話番外編 ギャルゲのゆるふわサブヒロインは、乙女ゲーのヒロインの幼馴染トークに付き合わされる その1
時は遡り、ゴールデンウィークより数日前ぐらいの夜の事である。ゆるふわ宏美は、いつも通り、お風呂に入り、ゆっくり湯船につかり鼻歌交じりに、お風呂を堪能して、一日の疲れを癒すのである。入浴時間はだいたい一時間くらいのゆるふわ宏美は、お風呂から上がり、髪を乾かしていると、脱衣所に置いておいたスマホから、通話を知らせる音楽が流れるのである。
「……これは~…いつも通り美月さんですかね~」
ゆるふわ宏美は、大好きなお風呂で一日の疲れを癒したばかりなのに、さっそく、回復したはずの、メンタルポイントを消費しないといけないのである。仕方なく通話にでるゆるふわ宏美なのである。
「もしもし~…美月さんですか~? 何かわたしぃにご用ですか~?」
「あ…ひろみん…今、大丈夫?」
そう美月に言われて、正直に言えば、まだ、髪を乾かし終わってないので、大丈夫ではないのだが、ゆるふわ宏美は、通話なので顔は見えないのに、ゆるふわ笑みを浮かべる宏美なのである。
「大丈夫ですよ~…何かあったのですか~?」
「えっとね…その、ひ、ひろみんと話したくなって…ダメかな?」
ゆるふわ宏美は、頭にタオルを巻いて、台所に向かい珈琲メーカーで、お気に入りのブレンド珈琲を準備するのである。
さぁ、今夜も長くなるなと覚悟を決めるゆるふわ宏美なのである。
「全然、問題ないですよ~…それで、何かお話ししたいことでもあるんですか~?」
「えっとね…い、郁人の事なんだけどね」
珈琲を入れながら、そうでしょうね~と思うゆるふわ宏美なのである。美月が、郁人以外の話を宏美にしたことなどないのである。そもそも、美月のトークデッキは郁人一択であり、郁人以外は持ち合わせにないのである。
「郁人様がどうかしたんですか~?」
「えっとね…郁人がね!! 郁人が、今日もカッコよくてね!!」
宏美が、美月に聞き返すと、美月はとても嬉しそうに、郁人の話をし始めるのである。宏美が、美月の事を邪険にできないのも、こうやって嬉しそうに話す美月を、少なからず可愛いなと思っているからなのである。
「そうですね~…郁人様はカッコいいですね~」
「そうなんだよ!! ひろみん!! わかるよね!! でね、でね」
適当に話を合わせる宏美に対して、物凄くテンションの上がる美月なのである。そう、美月はついに念願の、郁人デッキを使用しても大丈夫な相手を見つけられて、滅茶苦茶嬉しいのである。
「はい~、なんですかね~?」
それに巻き込まれるゆるふわ宏美はたまったものではないのである。さすがに、毎日郁人の話を聞かされても困るゆるふわ宏美なのだが、なんだかんだで、優しい宏美は、美月の話に合わせてあげるのである。
「今日は、郁人がね…私の手をギュって握ってくれてね!! 郁人の手は大きくて安心するんだよ!!」
「あ…はい~…そうなんですね~」
ゆるふわ宏美は、珈琲メーカーで淹れた珈琲を持って、寝室に向かうのである。ベッドに腰を下ろして、珈琲を飲みながら、このお話は何度目でしょうね~と思うゆるふわ宏美なのである。そもそも、美月さんはいつも、郁人様とお手手をおつなぎしてますよね~と心の中でツッコムゆるふわ宏美なのである。
「今日は郁人の部屋に遊びに行ったんだけどね…やっぱり、郁人の部屋って落ち着くんだよね!!」
「あの~…美月さん…それは~…今日はなのですか~?」
「え? なんで? 今日はだよ!!」
ゆるふわ宏美の疑問に対して、間髪入れずにそう即答する美月に、もはや何も言えないゆるふわ宏美なのである。
「そ、それでね…最近悩みがあってね…し、親友のひろみんだから、言うけどね…あ…誰にも言っちゃダメだよ!! 郁人にもだからね!!」
「あ…はいはい~、任せてください~…わたしぃは口は堅い方ですからね~」
ゆるふわ宏美は、どうせ大した悩みではないだろうと、珈琲をちびちび飲みながら、適当に話を合わせるのである。
「あのね…郁人のベッドで寝るにはどうすればいいと思うかな?」
「ゲホッゴホッ!! な、なんですか~!? 美月さん…何を言っているんですか~!?」
唐突の美月の発言に、むせ返るゆるふわ宏美なのである。ゆるふわ宏美は、美月の発言の郁人の、の所を、と、と聞き間違えたのである。予想外の美月の発言に顔を真っ赤にするゆるふわ宏美は、美月の発言を疑うのである。
「だから…郁人のベッドで寝るにはどうすればいいのかって話だよ」
「あの~…わ、わたしぃはそう言う話は~…ちょっと、専門外と言いますか~」
「ひろみん!! こんなこと相談できるのはひろみんだけなんだよ!! どうすればいいかな?」
真剣な声でそう問われるゆるふわ宏美だが、こういった話はてんで疎い宏美なのである。
「わ、わたしぃでは~…お力になれませんよ~!! そもそも、経験がありませんから~!!」
「わ、私はいちよね…前はね…郁人のベッドで寝てたんだけどね」
「え、えええ~!? そ、その、ね、ね、寝たんですか~? それって、つまり…」
勘違いから、真っ赤になって動揺するゆるふわ宏美は、持っているコーヒーカップと受け皿を震わせてカタカタと音を鳴らすのである。
「でもね…さ、最近は…その…なんか恥ずかしくて…ど、どうすればいいと思う?」
「え? え? ふ、普通は~…そ、その~…は、初めての方が…は、恥ずかしいんじゃないんですか~?」
「そ…そういうものなのかな? そ、そのね…つ、付き合いだして…きゅ、急になんかね…恥ずかしくなって…」
「ど、どういうことですか~!? ふ、普通は、付き合いだして~…そ、そういうことはするものじゃないんですか~!?」
完全に話の噛み合っていない二人なのである。美月の話す一言一言に対して、過剰な反応を示すゆるふわ宏美なのである。
「そうなのかな? そう言うものなの? ひろみん?」
「は、はい~…そう言うものだと思いますよ~…そ、その、わたしぃは経験がないので…その、み、美月さんみたいな経験者にアドバイスできることは何もありませんが~」
ゆるふわ宏美は、たぶん自分が一般的だと遠回しに美月に伝えるが、宏美もそう言ったことには疎いので、最後に予防線を張るゆるふわ宏美なのである。
「そっか…そう言うものなんだね…うん…わかったよ…私頑張ってみるね」
「は、はい~!! 頑張ってくださいね~!!」
ゆるふわ宏美は、やっと話題が終わったと一安心して、落ち着きを取り戻して、珈琲を飲む宏美に美月は、やはり新しい話題を振るのである。
「でね…郁人の事なんだけどね」
「……あ…はい~…な、なんですかね~」
そう言って、再度郁人デッキを披露しだす美月に。疲れた表情を浮かべるゆるふわ宏美は、無限ループって怖いですね~と思いながら、美月の話に付き合うのであった。
こうして、ひたすら美月の郁人トークに付き合わされるゆるふわ宏美なのであった。
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