第78話乙女ゲーのヒロインは、幼馴染と恋人同士になれたのに、よそよそしくなってしまうのである。 その3

 いつも通り、宏美と合流して、美月と別れる郁人は、待ち合わせ場所で少し、待機してから、学校に向かう郁人は、校門を抜けると、女子生徒達に話しかけられるのである。


「郁人様……郁人様の新作のブロマイド素晴らしかったです!!」

「今回も素晴らしかったです!!」

「一生推します!!」


 いきなり、女子生徒達に囲まれて、そう超テンションで言われる郁人の表情は、引きつるのである。


「そ、そうか…あ、ありがとう」


 郁人は、ゆるふわ宏美に、とりあえず、女子生徒に褒められたら、お礼を言ってくださいね~と言われている郁人は、その助言通りに行動するのであった。


「い、郁人様!!」

「次回の新作も楽しみにしています!!」

「郁人様、生涯推します!!」


 嬉しそうな女子生徒達に、困る郁人なのであった。そして、しばらく、女子生徒達の会話に付き合わされ、解放されると、郁人は教室に向かうのである。これが、最近の郁人の朝の日課になりつつあるのである。


 ちなみに、この朝の郁人との会話に参加した1組のファンクラブメンバーの女子生徒達は、郁人の後方から、距離をあけて、教室に向かうのが恒例なのである。


 もちろん、男子生徒達からは大ブーイングである。


 やつれた顔で、1組教室に入る郁人は、真っ先に自分の席に向かうと、自分の席に座り、眠たげにげっそりしていたゆるふわ宏美が、トボトボと郁人の席に来るのである。


「郁人様…おはようございます~」

「ああ、おはよう」


 郁人と宏美は、本日二度目の挨拶をするのである。これも、最近は日課になりつつあることである。


「はぁ~…い、郁人様…美月さんどうにかしてくださいよ~」

「…美月がどうかしたのか?」


 目の下にクマができているゆるふわ宏美は、疲れた表情で、郁人に耳打ちして、小声で不満を漏らすと、郁人は、自分の席に座って、頬杖をついて、ゆるふわ宏美を見るのである。


「…美月さんの郁人様トークをずっと、夜遅くまで聞かされるわたしぃの身になって考えてくださいよ~!!」

「……それは、幸せなことじゃないか…よかったな、ゆるふわ」


 郁人と宏美は、顔を近づけて小声でヒソヒソ話をするのである、不満を訴える宏美に、そう答える郁人を、驚きの表情で見た後に、どっと呆れるゆるふわ宏美なのである。


「郁人様に、相談したわたしぃが馬鹿でしたね~…とにかくですね~…わたしぃとしては、美月さんの郁人様トークをずっと聞かされても困るんですよ~」

「…まぁ、ゆるふわ…美月と仲良くしてやってくれよな」


 そう郁人に、言われると、ゆるふわ宏美は、何も言えなくなって、郁人から離れて不満気なゆるふわ宏美のである。


「それより…ブロマイドがどうのこうのと言う話を聞いたんだがな…ゆるふわ…俺、写真の撮影ってこの間が初めてだったよな?」

「そうですね~…次回の撮影いつにしますか~?」


 郁人の質問に、ニコニコのゆるふわ笑顔を浮かべる宏美は、両手を合わせて、上機嫌に次の撮影日を決めようとするのだが、そんな、宏美に呆れる郁人なのである。


「…なぁ…ゆるふわ…今日な…初めて写真撮影したはずなのにな…新作のブロマイドって言われたんだよな…これって、どういうことだと思う? ゆるふわ?」


 郁人の圧のこもった発言に、ゆるふわ宏美は、完全に固まるのである。ダラダラ冷や汗が流れるゆるふわ宏美は、内心超焦るのである。


「そう言えば…謎の盗撮写真があったよな…ゆるふわ?」

「……き、記憶にないですね~…き、気のせいだと思いますよ~」


 ゆるふわ笑顔で、そう言うと宏美は、ジッと郁人に睨まれるのである。冷や汗が止まらないゆるふわ宏美は、ヤバイヤバイと内心焦るのである。


「そうか…俺の気のせいだな」

「そうですよ~…気のせいですよ~」

「そうか…そうだよな……ゆるふわの事…俺は信じてるからな」

「は、はい~…し、信じてくださいよ~…だ、だ、大丈夫ですからね~」


 目が泳いで、挙動不審なゆるふわ宏美は、震えた声でそう言うのである。そんな、ゆるふわ宏美を疑惑の眼差しで見つめる郁人なのである。


「い、い、郁人様~!! そんな目で見ないでくださいよ~!!」

「まぁ…いいか…ゆるふわは嘘つかないもんな」


 邪悪な笑みを浮かべてそう言い放つ郁人に、コクコクと必死に頷くゆるふわ宏美なのである。


 そんな二人のやり取りを、ニッコリ笑顔で眺めている人物がいるのである。ジーっと声をかけることなく二人を見つめるヤンデレに、郁人と宏美も気がつかないのである。


「あ…郁人様…あと、本当に美月さんのこと~、お願いしますよ~…あのテンションの美月さんを相手にするの大変なんですからね~」

「頑張れ、ゆるふわ」

「頑張れじゃないですよ~…どうにかしてくださいよ~」


 また、ゆるふわ宏美は、郁人に近づいて小声で、美月をどうにかして欲しいと頼むのだが、全く聞く耳を持たない郁人なのである。そんな、二人の近距離のやり取りを、ゴゴゴッと覇気を放ちながら見つめるヤンデレなのである。


 しかし、二人は全く気がつかないのである。教室は静かになるのである。


[…ゆるふわ…そう言えば…教室が静かじゃないか?]

「そ、そうですね~…なんか前にもこんな事がありましたよね~」


 郁人と宏美は、引きつった笑みを浮かべてお互い見つめ合うと、嫌な予感がする二人はそっと後ろを振り向くと、そこには、にっこりヤンデレ笑みを浮かべて立っている梨緒が居たのである。


「おはよう……郁人君、宏美ちゃん…朝から、仲が良いねぇ」


 圧倒的な圧を挨拶に込める梨緒に、冷や汗ダラダラな郁人と宏美なのである。


「…ああ…おはよう」

「お、おはようございます~…り、梨緒さん」

「二人でなんのお話をしていたのかなぁ?」


 にっこり笑顔の梨緒は、細目で、郁人と宏美を見つめながら、圧のこもったヤンデレボイスでそう尋ねるのである。


「あ、あれですよ~!! 郁人様のブロマイド撮影会のお話ですよ~!! 第二弾が決定したんです~!! 梨緒さんも楽しみにしてくださいね~!!」


 咄嗟の言い訳でそう言う宏美に、怒りの視線を送る郁人なのである。


「そっかぁ!! そうなんだねぇ…うん!! 楽しみだよぉ!!」


 一気に上機嫌になる梨緒は、ニコニコの笑顔で喜んでいるのである。そんな中、どうするんだという視線をゆるふわ宏美に送る郁人に、にっこりゆるふわ笑顔を浮かべて、頑張ってくださいね~と先ほどの仕返しをするゆるふわ宏美なのであった。

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