第11話

 6歳になった。そして今は夏だ!

 カルマ値について、ここ3年であれこれ悩んだが、今のところマイナスは無い。実はこっそり悪行を行い、マイナスされないかテストしているのだ。まぁ、悪行といってもたいした事はしてないが……。

 悪行その1、お手伝いをサボる。これは失敗に終わった。サボって遊びに行っても、「子供はそれくらい元気じゃなきゃね!」というかーちゃんの一言で流されてしまった。

 悪行その2、物陰から飛び出て「わッ!」と大声で脅かしてみる。しかし、一切驚かず、普通に「どうかしたの、シンクちゃん?」と返されてしまった。……うん、元冒険者に子供のドッキリなんて効くわけないか。

 悪行その3、財布から小銭を盗む。財布から…… 財布どこだ? そう言えば、あまり買い物している姿を見たことないな。変に大それたことをして叱られるのは怖いし、正直そこまで無理してマイナスを知りたいわけでもないので、カルマ値のマイナスについては、今後も気を付けるに留めることとした。

 となるとあとはガチャだ。さすがにカルマ値”0”は怖いので、11連1回分にあたる1000を残して、残りは全部使って引くようにした。カルマ値は5000あったので、1000残しだと11連 4回だ。その結果がこれだ。


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 名前:シンク 


 Lv5


 HP  20/20

 MP  54/54


 力   7

 魔力  5

 素早さ 10

 器用さ 6

 体力  8

 精神  4


【攻撃スキル】

 剣術 Lv4

 体術・地級 Lv1 NEW!

 槍術 Lv1 NEW!

 槍術・地級 Lv1 NEW!

 短剣術 Lv1 NEW!

 弓術・極級 Lv1 NEW!

 火術 Lv4

 水術 Lv1 NEW!

 土術 Lv1 NEW!

 神聖術 Lv2 NEW!


【攻撃補助スキル】

 行動観察 Lv3

 回避 Lv3

 詠唱変換-印術 Lv2

 魔力圧縮 Lv1 NEW!

 魔力強化 Lv1 NEW!


【耐性スキル】

 火耐性 Lv1 NEW!

 精神耐性 Lv1 NEW!

 毒耐性 Lv1 NEW!

 麻痺耐性 Lv1 NEW!

 幻影耐性 Lv1 NEW!


【探索スキル】

 追跡 Lv1 NEW!

 隠密 Lv1 NEW!

 気配察知 Lv1 NEW!

 錠前術 Lv1 NEW!

 罠術 Lv1 NEW!

 暗視 Lv1 NEW!

 精霊視 Lv1 NEW!


【極スキル】

 極剣技 龍殺斬

 地術極 メテオスウォーム


【生産スキル】

 採取 Lv2

 採掘 Lv1 NEW!

 調合 Lv1 NEW!

 錬金 Lv1 NEW!

 造船 Lv1 NEW!

 鍛冶 Lv1 NEW!

 建設 Lv1 NEW!

 器具作成 Lv1 NEW!


【技術スキル】

 エステティック Lv3

 礼儀作法 Lv1 NEW!

 水泳 Lv1 NEW!

 占い Lv1 NEW!

 育児 Lv1 NEW!

 演奏 Lv1 NEW!

 絵画 Lv1 NEW!

 天候把握 Lv1 NEW!

 野営 Lv1 NEW!

 嘘看破 Lv1 NEW!


【身体強化スキル】

 力UP Lv1 NEW!

 動体視力 Lv1 NEW!

 鋭敏聴覚 Lv1 NEW!


【パッシブスキル】

 言語-大陸共通語

 手話-大陸共通語

 幸運 NEW!

 剣の才能 NEW!


【特殊】

 携帯-スキルガチャ

 スキル取得不可-習熟

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 スキルが一度に増えたな。とてもじゃないが、すべてを完璧に使いこなすことなど出来ない。時間に限りもあるので、優先順位をつけてやっていくしかないな。器用貧乏になるよりも、厳選して伸ばしたほうが良いだろう。

 武器はもう剣で行こう。今まで練習してきたし、武器を変えると立ち回りも変えなくてはいけない。何より、6歳の誕生日にとーちゃんからショートソードをもらったのだ。ただの鉄製らしいのだが、全体のつくりがきちんとしている。鍛冶のスキルをゲットしたので、金属製の武器についてもある程度分かる。重心の位置がよく、血を通す溝もある。砥ぎも丁寧なものだ。

 持ち歩く癖をつけておくように、とはとーちゃんの弁で、剣のこと以外にも、冒険者の基本となる知識をあれこれ教えてくれるようになった。最初、俺が冒険者になりたいと切り出した時、両親は、気持ちは分かるとしたものの、あまり良い顔はしなかった。そりゃ、かーちゃんが怪我したこともあるし、無理してそちらの道に進むことも無いだろう、というのも分かる。正直、”償い”が無ければ、俺も冒険者なぞやらずにこの田舎でスローライフしていたい。

 しかし、そういうわけにもいかない。”償い”の他に4つの目的もある。その目的について話したら両親は号泣し、最後には許可をくれた。『アムリタはともかく、ベンノは見つけて欲しい』と頼まれた。俺が旅立つ前にアムリタを持ったベンノさんが現れる展開もひょっとしたらあるかもしれないが、その場合は別の目的を考えよう。


 武器に剣を選んだのにはもうひとつ理由がある。パッシブスキルの”剣の才能”だ。これは剣術スキルのレベル上昇に補正がかかるというものだ。ひとつの武器スキルをLv10にするのは、非常に困難を極める。3年も剣を振り続けているのに、剣術はやっとLv4だ。まだ剣でモンスターを倒していないことを差し引いても、上がるのが遅い。地級を得て一人前、って話もよく分かる。このままいくと、剣術をLv10にするには成人までかかりそうな勢いだったが、”剣の才能”を手に入れたのだから、多少は上がりやすくなるだろう。”剣術・地級”をガチャで引く必要があるんだよな……。

 ”弓術・極級”についてだが、基本を全部すっとばして応用だけある状態だからなのだろう、試しに弓を持ってみたものの、引き方などがさっぱりわからない。スキルは一応使えるようだが、現時点ではMP消費が大きく、それだけで継続戦闘は難しい。ゲームソフトのアップグレードパッチみたいに、本体は無く、修正部分だけある感じだな。スキルだけなら何かピンポイントで使える時がくるかもしれないけど、その時に思い出せるかどうかだな。若い脳みそに期待しておこう。

 槍は”槍術”も”槍術・地級”もあるので、十分使える。ただ、地級を使っての立ち回りは、身体が無理をしているのをひしひしと感じる。槍術がまだLv10になってない影響だろうか。結局のところ、使いこなすには地道に下積みを行うしかない、ということのようだ。もうちょっとイージーモードだとありがたかった。極級引いたら下位は全部網羅しているような、そんな感じが……。

 とはいえ、複数種類の武器が扱えるのは、剣術だけでは手詰まりになった際に、有効な部分も出てくるだろう。


 そうそう、スキルについてはひとつ、ギースさんより注意されたことがあった。それは”鑑定”のスキルだ。ステータスを調べるのには鑑定紙を使えばよいと教わったが、このスキルを使えば、鑑定紙が無くても相手のステータスやスキルを把握できる。

 ギースさんが言うには、鑑定スキルを所持しているものは国の管理下に置かれてしまうらしい。また、取得方法についても厳しく管理されているとのこと。表向きの理由は、王侯貴族の護衛のスキル構成を見破られ暗殺されるのを防ぐため、となっているが、ギースさん曰く、本来の目的は別にあるらしい。

 例えば、”詐欺”のスキルを高いレベルで持っている貴族がいたとする。それを鑑定スキル持ちの庶民に知られた場合、貴族のちょっとした行動や言動から「本当は領民を騙しているのでは」「実は横領をしているのでは」と疑心暗鬼に陥る者が出るかもしれない。疑惑が燻れば、反乱の種にもなり得る。

 他にも、地位ある人の引き連れている護衛や用心棒が、暗殺向きのスキル構成をしているなどと知れると、在らぬ噂を立てられてしまう、などなど……まぁ、政治はきれいごとだけでは成り立たないってことだな。大きな町に入る際には、衛兵から鑑定スキルの有無を確認されるらしい。衛兵は教育の中で”嘘看破”のスキルを得ているので、ごまかせないそうだ。

 鑑定スキルが発現してしまったら、すぐ相談するようにとギースさんに言われている。村に来る徴税官も嘘看破スキルを持っているらしく、村に鑑定スキルを持ったものがいないか毎年村長は聞かれているらしい。村人全員に聞いて回ることは無いから、周囲に知れ渡る前に対策を行えば何とかなる、とのことだ。

 鑑定スキルはモンスターとの戦闘で有利だと思うのだが、その点をギースさんに聞いたら、国もそこに関してはきちんとフォローしているらしく、モンスターのステータスやスキルは国お抱えの鑑定スキル持ちが調べ、公表しているとのことだ。これだけ聞くと、鑑定スキルを持てば一発で公務員になって安定した生活が送れそうに思えるが、実際のところ、鑑定スキル持ちは外部との交流も一切絶たれた地下牢のような場所に監禁されることになるらしい。


 この近辺のモンスターのレベルは1から10と低い。始まりの村としてはなんともベストな場所だが、一昔前まで、ここは人が住める場所ではなかったらしい。近くにある湖にヒュドラが住み着き、それが原因で周囲にも高い魔素溜まりが発生するようになり、それに引き寄せられて強力なモンスターが多く徘徊していたという。

 元凶であるそのヒュドラを討伐したのが他でもない、とーちゃんたちのパーティだった、とのことだ。討伐したことにより、湖は浄化され、周辺の魔素が大幅に減り、人が暮らすに最適な場所になったそうだ。それ以来この一帯を治めている領主にはとーちゃん達の覚えもめでたく、顔見知りらしい。この村にも、領主に乞われて住んでいるとのこと。権力者とつながりがある両親。最高だね。


 さて、気になるスキルはもう一つある。パッシブスキルの”幸運”だ。これはアイテム取得時に、レアリティ上昇補正がつくもののようだ。アイテム取得時、ってどういうことだ? 採取や採掘時に良いアイテムが手に入りやすいってことかな? あとで検証してみよう。

 ガチャで同じスキルを得るとスキルレベルが上昇するようで、”神聖魔術”がLv2なのは連続して引いたからだ。これはつまり、上がりづらいスキルもガチャ運次第で上昇させることが出来る……ということではないだろうか? しまった! それならばカルマ値は溜めておいて、習得が難しくなってから引けば簡単にスキルレベルを上げられる可能性があるではないか! 剣術Lv10になるまでガチャは控えるかな? これからのスキルレベル上げは剣術、火術、神聖魔術、回避、行動観察を重点的にやっていこう。

 それはそうと、”精神耐性”をゲットした。これによりグロ耐性もあるはずだ。冒険者となれば、モンスター討伐後の剥ぎ取りは欠かせないだろう。スキルとしてゲット出来てないが、一度挑戦してみるのも良いかもしれない。さっそくとーちゃんに聞いてみる。


「とーちゃん、剥ぎ取り方法を教えてほしいんだけど。」


「剥ぎ取り? 剥ぎ取りって何だ?」


 おう、通じない。もうちょっと細かく説明しよう。


「モンスター倒すじゃない? 冒険者は倒した素材とか売って生計立てるんだよね?」


「おう、そうだぞ!」


「だから、倒したモンスターから素材を剥ぎ取る方法教えてほしいのだけど。」


「うん? 剥ぎ取るも何もモンスターは倒せば魔素になって消えちまうだろう?」


 な、なんだってー!!


「え? そうすると素材は?」


「魔素になって消えた後に残るのさ。爪だったり牙だったり皮だったり魔石だったりがな。たまーに魔道具も落ちてたりするんだぞ。スライム倒して鑑定紙、ってのは定番だな。」


 グロは無い! ありがとう! イージーモード万歳!

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