第163話 今・本を読んで
計測予定までまだ時間があるので、何もすることがないし、低周波についての勉強を始めることにした。
「低周波音被害を追って」
汐見文隆先生の遺作は去年、低周波障害を発症した後、購入していたのだけれど、エコキュート と風車による被害についての内容で、私は浄化槽によるものだったし、あまり関係ないと思ってきちんと読んでいなかったので、改めて最初から読み直してみた。
最初はなかなか進まなかった。
この年になって、勉強し直すと言うのはなかなか大変だ。
私は結構たくさん小説を読む方だけれど、ライトノベルばかりで、あまり難しい話は読まない。
読み始めるまでに時間がかかったけれど、取り掛かってしまえば、専門的な話は意外と少ない。
被害の発生状況などを説明した部分が多いので、心配したよりも読みやすかった。
この本の中に、独立行政法人産業技術総合研究所が行った「低周波音に関わる聴感特性実験」について書かれているのだけれど、その結果を、「苦情者は感度が良いと言う結果は得られなかった」と発表している。
これについて、実験に参加した方が、「実験に用いられた低周波音は、自分が日頃被害を受けている低周波音は音の質が違う」と証言している。
さらに、参加した被害者は、実験の始まる前から、外のモーター音を聞き取った、にもかかわらず、実験の実施者は「そんなはずがない」と切り捨てたそうだ。
このあたりを読んで、私はおかしくなって笑ってしまった。
この実験の様子は、電磁波過敏症の患者に対する実験と全く同じだ。
電磁波過敏症の患者は、すべての周波数に反応するわけではないのに、実験の実施者が用意した電波だけ流して、それを感じ取れないからといって、因果関係はないとした、お粗末な実験と全く同じ。
実はこの時も、外からの別の電波を患者たちは感じていたらしい。
けれど、その点は全く問題にされなかった。
御用学者と言うのはそういうものなのだろう。
そもそも、こちらの言うことを否定したくてやっているのだろうから、あちらの考える体裁さえ整えばそれでいいのかもしれない。
ほら、ちゃんと検証してるでしょ、結果、全然健常者と変わらない、気のせいなんだよ。
そう、「言い訳」したいがための実験に過ぎないのではないか。
どの周波数に反応しているかなど、その点を探ろうという気なんて全くない。
低周波音の場合は、気道音と骨導音の差であるけれど、いつもの感じと違うと言うことは、参加者に聞けばすぐわかる話だし、実際言った人もいたかもしれない。
けれど、そもそも彼らはそんなことを探る気は全くなかったのだろう。
むしろ、患者と健常者の違いが出なければ、万々歳。ただの気のせいで済ませることができる。
100%文系の私が、ちょっと聞いただけでもわかるお粗末極まりない実験を、理系の実施者が、どれほど穴だらけか分からないはずがない。

まず先に、被害者の家で実地調査をして、状況確認をし、その現場の周波数や、被害者の反応などを調査しておかなければいけない。
それぞれの被害者たちがすべて同じ周波数に反応するわけではないし、この実験は聴覚実験らしいけれど、例えば私は耳で聞こえる音が煩わしいわけではなく、体が痛いのだし、患者によってはそもそもが耳の問題ではないのだ。
何にどのように反応しているのか、現地調査の結果、仮説をいくつか立てて、どのような実験をするかを決める。
実験は1種類でいいのか、複数行うか、どの説をどのように検証すれば確かめられるかを考えて実験内容を決め、被害者以外の健常者を比較対象として集め、それから実験しなければいけない。
その、事前の調査と言うものを彼らは全くやっていない。
もう一つおまけに、人数が少なすぎ!
この手の実験を自称理系の人たちがよく、電磁波過敏症や、低周波障害のことを否定する材料として持ち出すのだけれど、この実験が本当にそれらを否定する根拠に足るものだと彼らが心の底から信じているのだとしたら、理系の実験と言うのは、文系の論文作成の手順よりもはるかにお粗末と言うほかはない。
これらの実験は、被害者は、「気道音に対する聴覚の問題で具合が悪くなるわけではない」、あるいは「実験で使用された周波数で体調を崩すわけではない」とそれだけの証明にしかなっていない。
後者の場合は、もしかしたら後から具合が悪くなった人もいたかもしれないので、「実験で使用された周波数では直ちに具合が悪くなるわけではない」かもしれない。
電磁波過敏症の患者は、電磁波を浴びて、すぐ具合が悪くなるとは限らない。
具合が悪くなるまで、時間差があるケースも多いのだ。

あまりの手抜きぶりに、呆れ返るけれど、彼らは本当は被害者の存在を全く信じていなかったのだろう。
もちろん、ただの知識不足の可能性もある。
まだまだ、研究途上の症状なのだから。
悪意ある否定派に都合よく引用されるだけで、実験実施者本人たちは、いくつも実施する予定の、最初の実験の一つとして実施したに過ぎないのかもしれない。
新しい病気というのは、試行錯誤しながら、複数の実験や調査による検証を経て、ようやく解明されるものなのだから。
けれど、この実験に限っては、やはりどこか、悪意の存在を感じずにはいられない。
そうでなければ、その場で外からの電波を感じる、または外から機械音を感じると患者たちに言われたときに、その場でそれを計測したはずだ。
実施予定になくても、データの一つになりうるのだから。
それすらもしなかったということは、被害者の言葉を頭から信じていなかった、それとも否定する材料こそが欲しかった、どちらかとしか解釈しようがない。
知りたい、解明したい、という熱意が全く感じられない。
ものすごく好意的に見て、めちゃくちゃ気が利かなかっただけ!恐ろしいほどのマニュアル人間だった、という可能性もあるけれど。
ところで、ここにあげた「実験」とやらは、どちらも意識的に感知可能な事柄についてしか、調べていない。
本当に身体に影響があるかないかは、患者が意識できるか否かは関係ない。
血流の変化や心電図、血液検査など、客観的なデータをとるべきなのだ。
最近では、ようやくそう言った、「本当に科学的な実験や検証」をしてくださっている方がいらっしゃるようなので、成果が出ることを祈っている。
政府は都合よく、無視を決め込むかもしれないけれど!
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