第92話 30代・詐欺全容4

最初の頃は、弁護士費用として、そして、管財人に送り込むための根回し費用として請求されたそうだ。

他にも、各種の手続き費用として、何度も繰り返し請求された。


さらに、この件の裁判が始まったということで、裁判の費用、供託金、ということで、請求額がどんどん上がる。



何年も、そうして、少しずつ、何度も何度も何度も何度も繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し・・・


毎日毎日、電話が来て、何時間も何時間も話す。

何度も何度も。

振り込ませる日も、振り込ませない日も。




ずっと後、鎌倉に引っ越してからの事だけれど、私は父と話していて、あることに気がついた。

父は、何度も何度も同じ話を、とても良いアイディアとして話し聞かせると、本当にいい意見だという気がしてくるらしいのだ。

しかも、最初は反対とまではいかずとも、特に賛成もしていなかった意見さえ、いつの間にか賛成し、最終的に自分の発案だった気さえしてくるようだった。


おそらく、脳内出血の損傷によりそのようになってしまっていたのか、それとも、長年にわたり、Yにそうやって洗脳され続けた後遺症だったのかもしれない。





Yの物語の内容は、そのうちにだんだん変化して、全て終わったら、みんなで、財団を作って、社会に貢献しましょう、今までのつらかった分を取り返しましょう…と言う具合になっていったらしい。

今度は請求理由に、その財団法人の設立費用が加わった。




最終的にYに奪われた金額は、Yの個人的借金も合わせて、証拠が残っているだけで、1億4千万円を超えた。

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