第35話 今・計測

低周波計測器が到着。


電波計測器より大きいが、形が似ている。

電波計測機の方は、電磁波過敏症になった時に購入したが、低周波計測器は高額すぎてとても手が届くものではなかった。


借りられてよかった。

入っていた箱は、何度も行った来たしているのを思わせる。

私が問い合わせした時も貸し出し中だったし、低周波で苦しんでいる人は私だけじゃない。


計測器をお借りするのに、こちらのNPOの会員になった。

もちろんそのためだけじゃなくて、今まで相談する先もなかったので。

化学物質過敏症の方も、別組織の会員になっているし。

相談できる相手がいるだけでもありがたい。


個人相談のメールではなく、会員への通知で、HPに、化学物質過敏症で電磁波過敏症で低周波過敏症でもある方の記事を更新したとある。


三つ全部発症、私だけじゃないんだ。


そもそも、電磁波過敏症と低周波過敏症を分けること自体が間違いなのかも。

反応する周波数帯が違うだけで、この二つは同じ病なのかもしれない。



夜、計測開始。


最初は自宅内で、卓越した周波数にマーカーを設定する。

次に外へ出て、自宅の東西南北で計測。

心当たりの場所や機械があれば、そのあとそれの近くで計測するが、私の場合は全く見当もつかないので、マーカーの周波数の高い方向を探すという手順のはずだった。


でも。


数値に差がない。



私はあちらこちらと歩き回り、計測器を向けつづけたが、ここ、と思える場所はなかった。


機械の作動音がないわけではない。

どの家にもブロワーはあり、音はそこここで響いている。


しかし、それはこれまでだってそうだったのだ。

もしブロワーなら異音がしなければならないし、でなくば全く新しい機械のはず。



気づけば計測記録が残る時間はとっくに過ぎていた。

記録するスイッチを押すと100分、記録ができるそうだが、それを過ぎても数値自体を見ることはできる。

もはや、結果を照合することはできないが、場所の見当だけでもつけたいと、計測器の数値を見つめ続けた。



一晩中、家の周囲を走り回ったが、結局、何も見つけることはできなかった。

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