第28話 カウザルギー8
ほとんど効かない痛み止めを、それでも一応は飲んでいたが、肝心の右手首の痛みには本当にほんのわずか、心持ち軽くなるような気がする程度しか効かないのに、他の場所の痛みはしっかり隠してしまって、気づかないうちに左手までも痛めていた。
それ以上、他の場所まで悪くするわけにはいかなかったので、痛み止めはすっぱりやめた。
この時期は右手に加え、左手にもあまり力を入れられず、私は不便だし、周りはさらに大変だったと思う。
少しずつ、本当にほんの少しずつ。
回復は気が遠くなるほど遅かった。
お粥で下痢をすることが減ってくると、メニューに野菜が加わった。
妹が食事の支度をする時はスープか煮物を加えてくれた。
妹の留守中には私が勝手に冷蔵庫から出して食べられるように、大根やニンジンなどのスティックを作って置いていってくれた。
それでも、一体何の拍子にか、やはり突然下痢をしてしまう。法則性は全くわからず、妹は、
「一体、何なら食べられるの?」
と、半ばパニックになっていたが、それは私自身が聞きたい位だった。
体重はあっという間に落ちていき、私は痩せてしまったと嘆いていたが、ダイエット中の妹は、どうもピンとこなかったようで、
「自慢なの?」
などと、からかってきた。
後日、自分でうまく洗えず、どうにも背中がかゆくて、妹に背中を洗ってもらったとき、骨の浮いた私を見て、呆気にとられていた。
健康的に運動で痩せたならいざ知らず、病気で、しかもこの年で痩せるとみすぼらしくて仕方がない。
それに、見た目がどうと言うよりも、これ以上減ってしまったらどうなるだろう、動けなくなってしまうのではと、それも不安だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます