第10話 (去年)・下水

私は川口駅から徒歩圏に住んでいたから、子供の頃から下水はあった。

小さい頃はそれが当たり前で、日本全国、よほどのど田舎、1日にバス2本しかないようなところ以外、全部下水が通っているものと思っていた。


高校は浦和だったが、浦和の駅のすぐ周辺をバキュームカーが走っていた時は驚いた。

川口に下水があるのに、県庁所在地にないってどうよ?

さすがに今はあるだろうけれど。


まあ、川口も駅から離れたところにはなかったらしい。それを知ったのは大学生の時だった。


鎌倉に引っ越した時は、北鎌倉駅のすぐ近くでも、やはり下水がないところがあると聞いた時には、なんで今時そんなものがないのかと驚愕した。


葉山の物件が、浄化槽と聞いた時、最初、確かに不安を感じた。

浄化槽は初めてだったから。

でも不動産屋さんは、

「今の浄化槽はきれいですよ。下水と変わらないですよ」

と言われ、ブロワー の音は少し不安だったけれど、葉山でも下水の場所はあるのだし、そのうち下水通るでしょ、と軽く考えてしまったのだ。


私の住んでいる地域は、下水工事の計画自体がなくなったと聞いたのは、引っ越した後だった。

ある程度、人が密集して住んでいる場所に下水が通るのは当然、日本は先進国なんだしね、と思っていた私の常識は非常識だったわけだ。


下水って、珍しいものだったんだなあ。


バブル期に、妙な建物建ててないで、下水作っとけば、誰も文句言わなかったろうに。


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