第9話 今・葉山は浄化槽の町だから

雨が止んだので、散歩に出ることにした。


家にいても暗いことばかり考えてしまうし、浄化槽を動かすのにできるだけ散歩するようにしている。


ちょっと不安だけど、ガスヒーターもつけて出る。


この冬は、ガスヒーターをつけて部屋を温めている間、別の部屋で片付けなどして、温まった頃キッチンに戻ってヒーターを消し、部屋が冷え切るまで厚着でできるだけ我慢する、と言う生活をしていたのだが、今は他の部屋にいてもちょっとつらい。

洗濯も、やっと最近普通に、もちろん洗濯機から離れているようにはしているけれど、回している間散歩、とかしないでできるようになっていたのに、今日はかなりつらく、ざっと手洗いして脱水だけ機械を使った。


歩きながら、昨日お隣の人に言われた言葉が頭を離れない。


「音なんて、そこら中でしているじゃないか。葉山は浄化槽の町なんだから、下水のところへ引っ越せばいい」


簡単に言ってくれるよなあ。


そう言うあの人は、何かあった時そんなに簡単に、引っ越すのだろうか。

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