第8話 今・帰りたくない

どうもボーッとしているようで、最近うっかりなことばかりしてしまう。


通い慣れたところなのに、電車を乗り間違えたり。

行きに、乗り換え駅で本屋に寄って、そのまま帰ろうとしたり。


いつも混んでいる鍼灸院も今日は流石にガラガラだった。

私がお世話になっているところは、ただの鍼灸ではなく、気功治療と合わさったところ。

すぐ終わったのでいつものお蕎麦屋さんはまだ閉まっていて、帰りに乗り換え駅の横浜で食べて帰ることにする。


化学物質過敏症の他にアレルギーもあるので、なかなか安心して食事できるところがない。

ルミネも高島屋も閉まっている。そごうのおそば屋さんに行った。


換気扇の音もつらいけれど、座るところを選んで、超スピードで食べて出る。

このところ少し良くなって、前よりゆっくりしていられるようになっていたのに、今はすぐに出ないとならなくなってしまった。

それすらできなくなるのも時間の問題かも。


寄れるところがないので仕方なく葉山に早々に帰ってきたが、自宅の近くでチェーンソー の音。

お庭の手入れか、畑の手入れか。

いずれにせよ、すぐ家に戻らない方が良さそう。

チェーンソー の音がなくたって、今は家にいればいるほど、具合は悪化するのだから。


近所の無人の神社でお参りして、社殿の横に座った。


もう、ここにはいられなくなるかもしれない。

やっと買った、お気に入りの家だけど、今はもう帰るのが怖いのだから。


涙が出てきた。


無人の境内で、一頻り泣いた。



後悔してる?


自分に聞いてみる。


中古住宅購入を妹には止められたけど、どうしても欲しくて購入した。

自分好みにリフォームして、体調悪化するまですごく楽しかった。幸せだった。


してない。

住み始めてたった1年と3ヶ月。発病するまでだけを言えば、4ヶ月弱だったか。

とてもとても幸せだったから。


こうなってしまった今でさえ、やっぱりお気に入りの、大好きな家だから。


まだ決まったわけじゃない。

できることは全部やってみよう。


それでもダメなら。

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