第100話  フラグ回収早すぎません?

「うそ、、。まさか、そんな。アルが魔王だなんて。」


鍋を平らげ、〆は当然のごとく雑炊にした。

こっちにもおかゆ的な料理はあるはずなんだがすごく物珍しそうに食べていた。

身分が高い人はあまりこういうの食べないのかな?


そして雑炊もきれいに平らげたらあとはデザートの時間だ。

だがさすがにみんなの食べっぷりを見ていたらとてもデザート分の余力があるようには見えなかった。

なのであったかい紅茶を淹れ、食休みがてらリュースティアはみんなに話そうと思っていた事をすべて話した。

ヴァンの事、魔王アルフリックの事、自分の事。


そして古き時代を生きる魔王の1人が勇者アルフリックだと言ったときのルノティーナの反応。

小さい時から知っている相手が魔王だなどと言われれば信じられないのも当然かもしれない。

というか普通は勇者が魔王だなんて信じられるわけない。


「ルノティーナが信じられないのも無理はないと思う。けど事実だ。俺の固有魔法で視ても本人だったし、勇者と魔王、両方の称号があった。種族が人間なのは間違いないみたいだけど、、、。」


「ううん、驚いてはいるけど信じるわ。だってリューにぃが死にかけてまで手に入れた情報だもん。私は大丈夫!こんなことで揺らぐほど私の正義は軽くないわ!」


口ではそう言っているが無理しているのが見え見えだ。

だが本人がこう言っている以上、彼女の強がりには気が付かなかったことにしよう。

ルノティーナのことを見ていて本当にダメそうなら手を差し出してあげればいい。

その手を取ってくれるかは別問題だが放ってはおけないだろう。


「あ、あの、それでリュースティアさんはどうするんですか?」


「多分あいつは俺が死んでると思ってるはずだ。だからってわけじゃないけどしばらくはおとなしくして情報を集める。表でも裏でもあいつが大きな力を持っていることは間違いないからな。奴の狙いが知りたい。」


リズがこれからどうするつもりなのかと聞いてきたがそれに関する答えはすでに考えてあった。

変に目立ってこちらからトラブルを呼び込むつもりはない。

というかあいつの剣への対処法を見つけるまでは極力戦闘は避けたい。

今回はが次もそうとは限らない。

俺はまだ死にたくないからな。


「確かにそうかもしれないけど目立たないのは無理なんじゃない?だってリュースティアはSランクの冒険者として国に認められることになったんだし。」


はっ!

ヤバイ、完全に忘れていた。

国ってことは完全に勇者の耳には入る、そうすれば俺が生きていることがバレてしまう。

いや、もしかしたらもう手遅れかもしれない、、、。


「それならまだ大丈夫だと思うわよ。Sランク冒険者の地位は冒険者としては唯一国王陛下から与えられるものなのよ。年に二回ある爵位授与式で一緒にSランクを授与されるはずよ。」


「俺、そんな話聞いてないんだけど?」


ルノティーナの話は初耳だ。

彼女の言っていることが本当ならば現段階ではあくまで噂、ということだろう。


「だって今言ったもの。この話は担当の責任者が話すはず、、、、、、あっ。」


はい、アウト―。

完全に今思い出しただろ。

普段から仕事してないとはおもってたけどさぁ!

少しくらいちゃんと働けよ、、、、。


「ティナってよくSランクになれたわよね。」


「ふふふ、何言ってるのよ。この私の美貌と強さがあればSランクなんて楽勝よ!」


「頭にはなにも詰まってないみたいだけどね、、、。」


すごく偉そうに胸を張るルノティーナ。

すでに自分の仕事を忘れていたことなど頭にないだろう。

当然、呆れながらボソッとつぶやかれたシズの声は聞こえてない。

多分彼女には何を言っても無駄だろう。


「・・・リューの話、して?」


魔王の話にさほど興味がなかったのかスピネルがそんな事をいう。

忘れそうになるけどスピネルって魔王の娘なんだよね。

お父さんの事もう割り切れてるのかな?


「そうだな。魔王の事はすぐに答えが出るわけでもないしおいおい考えていこう。俺の話って言ってもどこから、、、っつ!何か来るぞ!」


リュースティアが自身の事を話そうとしたと危機感知が作動した。

悪意を持った何かが近くにいる。

屋敷には侵入者への対策として様々な阻害魔法がかけられているはずなのに、だ。

つまりそれらを障害と思わない程度には強者らしい。

めんどくさいな。


「ケケケ、ミツケタ。」


みんなが警戒態勢を取っていると突如なにもない空間から声が聞こえる。

そちらを見るとそこには何かが空間から這い出ようとしているところだった。


なんかつっかえてね?

というか、、、、。


「なんだこのピンクモフモフは。」


そう、思わず言葉に窮する変な生きものがいた。

そいつはピンク色をした毛玉のようで手足などはなく、体から羽のようなものが出ている。

魔王とか魔族でも現れたと思っていただけに拍子抜けだ。

ていうかどっから声出してんの?


「ケケケ、ワレハマゾク。サガシタゾ、ワレラノニンギョウ。」


魔族だと、、⁉

そのなりで?

それならまだカイザのほうがましだった。

というか魔族って裏で暗躍するんじゃないのかよ。

ポップアップしすぎだろ。


などと一人で内心ツッコミを入れる。

さすがに何度も実践を経験してきたので今更敵に対する恐怖心といったものはない。

いくらなんでもなれるのが早すぎないか?

とかも思うが別に困るわけでもないので気にしないことにした。

まあ簡単に言えば割とこの状況、余裕だったりする。


「ま、魔族。どうしてこんなところに、、、。」


「それよりもこの地の結界がこうも簡単に破られるなんてありえません。」


ん?

リズとシズは怖がっているみたいだ、アレそんなに怖がる必要ないと思うんだけどなぁ。

ただのモフモフじゃん。

それよりもリズが言ってることの方が気になる。

というかルノティーナ、絶対に動くなよ?

お前が戦い始めたら確実に屋敷を崩壊させる魔法を使う。

一日に二回も家を直すなんて願い下げだ。

それにこいつは人族の言葉をかろうじて話せてるみたいだから大人しく帰ってもらおう。


「ケケケ、ニンゲンハバカガオオイ。カンタンニココロアヤツレル。」


もういいよ。

聞いてて疲れるし早く帰ってくれないか?

でもこいつの言葉からするとこの街に魔族に操られている人間がいるって事なのか?

ますますめんどくさいな。


「お前さ、もういいよ。帰ってくれないか?」


こいつが何を企んでいるかは知らないがどうでもいい。

変に巻き込まれたくないしさっさと出ていってほしい。

後で騎士団には魔族の詳細と操られている人間を教えておけば問題ないだろう。

さっきマップで調べたら【支配;悪魔】になっている人間が5人ほどいたからきっとこの人達が操られている人達だろう。


「ケケケ、ソウハイカヌ。ワレハニンギョウヲカイシュウセネバナラヌ。」


モフモフ魔族はそう言って見えない手でスピネルを捕らえようとした、らしい。

リュースティアの持つ気配感知スキルのおかげでスピネルの近くに現れた微弱な気配を感知し、見えない何かがスピネルの体に触れるのを阻止した。


俺の養娘に手を出す気か?


「ケケケ、アリエナイ。ワレノマジックハンドガミエテイルノカ⁉ダガアルジノメイ、ヒクワケニハイカヌ。」


相変わらずモフモフがあるだけなので表情はわからないが動揺しているらしい。

主とかまためんどくさそうなもん出すなよ。

もしかして魔族九鬼門とかいうやつらのことだろうか?


「で、帰る気はないの?」


リュースティア威圧スキルを使いそんなことを言う。


「「「「っつ⁉」」」」


その場にいた全員がリュースティアの威圧をもろにくらって動けなくなる。

やべ、範囲限定するの忘れてた。

普段ならこんなミスはしないのだがスピネルを狙われて頭に血が上っていたらしい。

最も普段は威圧スキルを使うことなどないが。


「ケケケ、オモシロイ。ソノレベルデココマデノチカラヲツカウカ。ワレモホンキデイクトシヨウ。」


そのレベルでってもしかしてこのモフモフは他人のレベルがわかるのか?

そう思ってモフモフの備考欄を確認するとそこには確かに人物鑑定ステイタススルーの文字があった。

その他にも憑依や魅了、魅惑、精神魔法、物理攻撃耐性、魔神付与などのスキルが並んでいた。

しかもレベルは59。

手下にしては強くね?


「もういいよ、お前面倒だ。その主ってやつのところまで案内してもらうぞ。俺の子を狙ったんだ、覚悟はできてんだろ?」


今度は威圧に殺気も練り込む。

一家団欒の場を邪魔してきたことも許せないがスピネルを狙ったことはもっと許せない。

という事で黒幕ごと消えてもらおう。

こいつの主人はアルじゃなさそうだし問題ない、と思う。

実践訓練だと思って色々試させてもらうか。


「ケケケ、オオキナクチヲキケルノ、、、。」


全て言い終わる前にいきなり魔族が消えた。

犯人んはもちろんリュースティア。

魔族が気持ちよさそうに話しているタイミングを見計らって転移させた。

奴が憑依なり魅了なりの魔法を持っているのに他に人がいるここで戦うのはナンセンス。

というより自分の家でいくら敵と言え、殺すのは躊躇われる。

化けて出られても夢見が悪くなりそうだし。

まぁ一番の理由は家を壊したくないからなんだけどさ。



「ってことだから行ってくるわ。」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る