16話 閣下とサリーと妹達の微妙な関係 その1



 ガイアはサリエルと共に中破と一晩中激しい夜を過ごし、後の事をサリエルに託して、嵐のように去っていった。


「大変な一夜でしたね。

 いつもあんな調子なのですか?ガイア様は」


「昨日は中破さんに会えて、若干ハイテンションだったみたいです。

 ですが、中破さんがガイア様に好かれたことは大変良いことなのです」


「良いこととは、どういうメリットがあるのかな?」


「人間が神様に恩恵を受ける場合、加護という特別な能力が与えられます。

 加護を与える場合、通常は精神操作で与えますが、中破さんは女神と直接的に肉体関係を結んだわけです。

 そのため、加護というより神々に近い能力、つまり私達天使と同様の能力が与えられた可能性が高いわけです」


「私のバイオロイド体にも存在していますが、神々が使用するブランク体にはナノマシンが人間体に住んでいる微小細菌と同様の働きをしています」


「そこまでは理解した。微小細菌は細胞分裂で増えるが、そのナノマシンも同じなのか?」


「自己増殖作用があり、一定の数を保ちながら人工細胞と共存しています」


「それが、俺に何の関係があるのか?」


「つまり、ガイア様とHすると、ガイア様の身体に住んでいたナノマシンが、中破さんの身体に移り住んだと思います」


「移り住むとどうなるんだ?」


「私達天使のバイオロイド体を経て、最終的にはブランク体とほぼ同等の身体に変化します」


「つまり、老化する人間型細胞を人工細胞以上の存在に変換するわけです」


「それって、どの位の時間で変わるのか?」


「3日から一週間程度ですかね」


「その人工細胞に変換するメリットは何か?」


「不老、若しくは不死の身体になります。

 それと、精子細胞は人工細胞のコピー体になります」


「何だそれ?俺は無精子症か性不能者になるのか?」


「いいえ、精子細胞を造り出す精巣を凍結保護して、人工細胞が精巣を代行して、人工精液や貴男様の遺伝子情報をコピーした人工精子を造り出します。

 コレのメリットは、自己意思で受精をコントロール出来ますし、何より人工細胞の効果で性的にパワーアップします」


 中破は思わず頭を抱え込んだ。

 死ぬことが出来ない身体になることは、不老不死の身体になることである。

 或る意味人類の夢でもあるが、別な意味では拷問に近いものだった。


「中破さん、大丈夫ですか?」


「うむー、女神様は一体俺に何を期待しているのかな?

 沙理江さんなら分かるかな?」


「貴男様に呼ばれるならば、直接『沙理江』とお呼び下さい。

 その代わり、貴男様をプライベートでは『守様』と呼んで良いですか?」


 サリエルはベッドから起き上がった中破の背中に全裸のたわわの胸を押し付けながら抱き付いて甘える動作をしていた。


「ああ、良いよ。沙理江!」


「嬉しい、守様!」


 サリエルは背中に密着させていた身体を、中破の正面に回って再度抱き付くと、あれほどガイアに搾り取られたはずの精力が、サリエルの全裸姿を見ると再び元気になり、2人は何も言わずに求めるがままに行為に及び、前日の退庁日が金曜日で、次の日が休日の土曜日であったことが幸いして、職場からの問い合わせが全く無いため、2人が議員公宅を出たのは昼近くであった。


「さてと、何処に向かうかな?」


「お腹が空きましたね、閣下」


「お!いきなりその呼び方に変わるわけか」


「一歩外出すれば、そこは公的空間です。特に閣下の場合は」


「了解した、高田秘書官。

 それでは安全安心を確保して、食べることが出来る蕎麦屋の手配を頼む」


「了解、この辺りでは市ヶ谷地区の中の国防総省内ビルですね」


「フッ、確かに一番安全かもな。

 俺達には仕事をするのが一番か」


「そして、たまには私との密着デートで息抜きすることをお忘れ無く」


「了解した、高田秘書官」


「それでは市ヶ谷に向かいましょうね」



 市ヶ谷地区 国防総省ビル内のグルメエリア 高級蕎麦店にて


「高田君、こんなところがあったんだ」


「閣下は仕事にかまけすぎで、いつも隣接エリアの職員食堂で食事を済まそうとするから、こういう場所があることに気付かないのですよ」


「ここで働いている職員は?」


「全員、元軍人経験者で、補給班の食事係です」


「或る意味では予備役軍人でもあります。

 陸海空全ての補給班が揃っていますが、一番多いのは陸軍と海軍でしょう」


「メニューを開くか、お!こんなところで更科蕎麦が食べられるとは。

 高田君は何をする?」


「私はいつものざる蕎麦で」


「よし、店主。俺はとろろ蕎麦、コッチはざる蕎麦を頼むぞ!」


「了解!お客様」


「ん?何で了解なの?」


「ここの板長が陸軍基地出身なもので、つい従業員にも癖が移っているみたいです」


「それじゃ、ここから見える向かいのカレー屋は、もしかして海軍関係か?」


「おそらく海軍カレーだと思いますが、出来れば金曜日に食べた方が美味しさが倍増すると思いますよ」


「そうか、来週はカレーだな」


「ハイ、閣下」


「お待たせしました。とろろ蕎麦とざる蕎麦です」


「お、来た来た。食べるぞ、高田君」


「それでは頂きます、閣下」



「なかなか美味い蕎麦だな。喉越しと歯応え、それに微かな蕎麦の香り。

 それにとろろが何とも絶妙だった」


「私のは海苔の香りとパリパリ感が新鮮な感覚でした」


「そうか、高田君はコッチの世界の食べ物は初めてだったな。

 しばらくはこのビルのグルメフロアの常連になりそうだな」


「ハイ、閣下と御一緒して食事が出来るなら、何よりの幸せです」


「それより、このビルフロアは食事だけでなく、ファッションフロアや趣味や家具、電化製品のフロアまであるのか。まるで百貨店か大型ショッピングセンター並だな」


「日本国を防衛するために、日夜働く人々への癒やし空間ですかね」


「俺の執務室の隣は、議員官舎より豪華な宿舎が用意されているから、このまま俺の自宅にするかな?」


「私も一緒に住んで良いですか?」


「一応、それは体面上不味いから、俺の宿舎隣の秘書用宿舎が用意されているから、高田君はそっちの方に引っ越しを」


「うーん、もう閣下はイケズなんだから。

 だけど実際は23時間は閣下の側にいるから、実際は秘書というより夫婦と同じですね」


「残りの1時間は何?」


「私の着替えとお化粧&トイレタイムです」


「なるほどな」


「私の妹達の1人で、蘭子に閣下の引っ越しを手伝ってもらいましょ。

 彼女は亜空間転移と瞬間移動が得意技ですから。

 早速蘭子にテレパシーで連絡を取ります。

 『ハイ、うん、分かった』

 閣下、今すぐ来るから、大臣執務室に移動してとのことです」



 2人が大臣執務室に移動して間もなくすると、中破の正面に蘭子と呼ばれているラジエルが瞬間移動して来た。


「初めまして、閣下。私が蘭子ことラジエルでーす!」


「初めまして、蘭子さん。我々の引っ越しを手伝ってくれるというけど、一体どうやってするのかな?」


「閣下の頭の中で、自宅の場所を思い浮かべて下さい。

 良いですか、サリ姉、閣下も私の手を握って下さいね。飛びますから」


 一瞬であった。

 蘭子が『飛ぶ』と言った瞬間に中破の自宅居間に3人は瞬間移動した。


「コレはシンプルな部屋で荷物が殆ど無いですね。

 それでは、次々と入れちゃいましょう」


 蘭子は中破の自宅内の荷物を次々と空間収納していった。


「凄い力ですね、その能力」


「だけど、女神ガイア様には負けますよ。

 だって、ガイア様は地球、否、太陽系丸ごと移転&コピー出来ますから。

 私の能力は精々北海道位の面積の土地を移転する位かな?」


「え?蘭子、貴女の空間収納能力がまた伸びたの?

 昨年は佐渡島位の面積と言っていたじゃない?」


「無限大じゃないけど、個々の能力が上昇すると収納力が大きくなるみたい。

 ハイ、コッチは終わりです。閣下、他には何かありますか?」


「ウーン、一応別荘にも荷物があって取りに行きたいがな」


「お安い御用です、先程と同様に別荘の位置を、、、、、」


 中破が次に頭に思い浮かべた景色は、熱海であった。

 ラジエルはその景色のある場所に瞬間移動したところ、3人は熱海の別荘に着いていた。


「うわー、海が見えて良いところですね」


「このまま海岸を降りる階段が付いているし、内緒だが別荘の基礎を支持している岩場の内にプライベート潜水艇があり、そこから海へ発進出来るんだ」


「持っていくものは何ですか?閣下」


「この別荘からは、岩場地下にあるプライベート潜水艇を横須賀基地に持って行く位かな?

 後は2人の手間を労う意味で、ささやかな引っ越しパーティーを別荘で開こうと思い、食材調達で近場の魚屋に寄りたいと思っているのだが」


「閣下、あそこに見える魚屋ですね。

 蘭子に頼らずに、他人を驚かさないで密かにあの場所に移動しますか」


「サリ姉、例の影移動をするの?」


「閣下は私の伴侶で、一応私の能力を知ってもらうためにも丁度良い距離かなと思って」


「閣下、蘭子。私の手を握って下さい。次に私が別荘の影に入りますから」


『太陽の影が私達を隠す!』


 サリエルが隠すと言った瞬間、魚屋の建物影に3人は瞬間移動していた。


 中破は呆然としていた。

 見た目は20歳前後に見える美女達が、いとも簡単に能力を発揮出来ることに、心の中に感嘆と衝撃が入り交じっていた。


「閣下、中破閣下。どうしましたか?」


「あ?ああ、済まない。少し考え事をしていた」


「おや?中破の旦那じゃないですか。

 久しぶりのお国帰りですか?」


「今日は休みでプライベートで別荘に来ている」


「コチラの娘さん2人は、ずいぶん別嬪さんだね。

 もしかして、旦那のアレですか?」


「こちらは俺の秘書官で、そちらは秘書官の友人だけど秘書採用予定者か」


「(蘭子。貴女、第2秘書になりそうよ。もう1人の妹も採用かな?)」


「親父、とりあえず良いところの魚を捌いて刺身盛り合わせにしてくれ」


「あいよ、旦那。ちょっと一寸待って下せい」


「閣下、蘭子も秘書として雇いますか?」


「ああ、是非雇いたいね。その収納力と瞬間移動は最大の魅力だ」


「もう1人、凄い能力の妹がいるのですが」


「大丈夫、沙理江君は政策担当秘書、蘭子君は公設第1秘書で、もう1人の妹さんの名前は?」


「玲美こと『レミエル』です」


「分かった、その妹も秘書として雇おう。

 早速だが、蘭子君はその玲美君をコチラの別荘に連れて来て欲しい」


「了解、直ちに向かいます」


 蘭子は中破の命令を聞くと同時に一瞬で姿を消した。


「旦那、かなりの量の刺身と煮付け、それに焼き魚も一通り用意しましたが、運ぶのに大丈夫ですか?」


「ああ、ウチの別荘は目の前だから、その台車を貸してくれればOKだ。

 支払いはカードを使えるのか?」


「馬鹿にしないで下さい、旦那。旦那が最初に国会議員の新人の頃にこの地域にインターネットの光高速回線を優先して引いたじゃないですか。おかげでウチは外国人相手のカード決済と自動翻訳機が使えて大助かりしてますわ」


「それもそうだったな。ワハハ!親父、また来るからな」


「またのお越しを!」



 中破とサリエルは仲睦まじく台車を押しながら建物影に入った瞬間、別荘の建物影に移動していた。


 その後、蘭子が別荘に玲美を連れて来て、その日は別荘にて魚料理パーティーとなり、その後の4人は相当激しい夜を過ごした。

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