「紹介」
「ハロルドからよ」
その一言に部屋の中に緊張感が走ったのが分かった。皆が私の方を見て
「美咲。今は大丈夫か?」
「ええ。待ってたわ。ハロルド。実はアメリアとアメリアのパートナー、香坂潤くん、そして私の部下の春日部遥と、私の昔の知り合いの加藤悟さんも来ているの」
「加藤悟?って人だけ知らないな」
「彼はティーファ・オルゼとマッチングしてるのよ」
「なんだって!?」
「これって偶然なのかしら?悟さんとは昔からの知り合いだったし、今日、
「確かに……」
「兎に角、お互いに情報を共有しましょう」
「ああ……」
ハロルドは弱々しく頷いた。情報が多すぎて混乱している様子だ。私は画面共有のボタンを押して、皆の顔がハロルドに見えるようにした。
「
「そうなんだ。俺も今朝、思念通話……ええと、思念通話ってのは、術式の一種で遠くにいる相手に、お互いにメッセージを飛ばしあったり話せたりする術式だ。そっちの世界でいうとスマートフォン?だっけ。まあ、そんな術式があるんだけど、その術式でメッセージが飛んできて、レベル3になった事と、術式の解析を始めた事を俺に伝えてきたんだ」
「そうなのね。どうやってレベル3になったかは聞いてる?」
「なんでも術式を解析して、少しだけだが術式の仕様を変える事が出来る様になったらしい。普通、この術式は一度に一人としか出会えない。だが、ティーファは一度に出会える人数を増やす事に成功したようだ。何人と出会えるようにしたかは不明だけど、レベルアップのスピードは俺達の何倍も早くなっていると思う」
アメリアが、遠慮気味に手を挙げた。
「ハロルドさん。ティーファ先生の目的にツイテは何か聞いてイマスカ?」
「いいえ。でも想像には
「私もそう思いマス」
「なんとしてでも阻止しないと……アルトリアは
アメリアはハロルドの意見に強く賛同したようで、首を大きく縦に振った。
「ハロルドはティーファ・オルゼが今、何処に居るのか知ってるの?」
「多分、オルゼ家にある研究棟だと思う。なんでだ?」
「その……言いずらいんだけど……」
「殺せ?と?」
「違うわ。けれど何かの手段を使って、止める事が出来るんじゃないかと思ったのよ」
「かなり難しいと思う。錬金術師は秘匿の存在とされてるんだ。オルゼ家の研究棟が何処にあるのか、俺は知らない」
「アメリアは知ってる?」
アメリアの方を見ると、アメリアは申し訳なさそうに首を横に振った。
「研究棟には一部の錬金術師しか出入りを許されてイマセン。私は学生の身でしたし、オルゼ家の中での身分も低い方デシタ。ティーファ先生を含めテモ、十数人しか、その存在を知らないと思いマス」
「そうなのね……じゃあ、物理的にティーファ・オルゼを止める事は出来そうにないわね」
「スイマセン……」
「謝らないで、アメリア。他の手段を考えましょう」
一瞬、会話が途切れて沈黙が訪れた。
すると、画面に映っているハロルドの胸元にぶら下げてある小型水晶が光った。
「ティーファからだ……」
「なんて?」
「ちょっと待ってくれ。直ぐにメッセージを読む」
「えーと……『レベルが4になりましたが、何故かスキルを与えられませんでした。解析と改造のどこかにミスがあったのかも知れません。羽生美咲さんに、レベル4のスキルは何だったか聞いて頂けますか?』だそうだ」
「私達、まだレベル3よ」
「そうだな。分かりません、と伝えるか。それとも、ここで何か誤った情報を伝えて、混乱させるか?」
「難しいわね。変に情報を開示する事はないと思う。そもそも私達のレベルアップの
「確かにそうだな」
ハロルドは首を
「そもそもレベル12で手に入る
「そうね……」
ハロルドの小型水晶が、再び光った。同時に私のスマートフォンから無機質な声がした。
「レベル4になりました。誰かにこのアプリを紹介出来るようになりました。アプリを紹介すると、あなたのレベルアップの速度が『早くなります』。以下のURLを紹介したい人に送ってください」
スマートフォンから聞こえた内容に、春日部遥が驚いて声を上げた。
「早くなる!?早くなるですって?」
「落ち着いて、春日部さん」
「だって、課長。私や潤くんの時は『遅くなる』でしたよ?」
「好都合じゃない!URLを送るわね」
「ありがとうございます、課長……」
春日部遥は、目に涙を浮かべた。
「ハロルドの所にも同じ内容が届いてるの?」
「ああ……誰かに紹介すれば、レベルアップが早くなるなら紹介した方がいいな。春日部さん?」
ハロルドは微笑んで、春日部遥の方に視線をやって続けた。
「なんとしても、カイル王子の元へ届けますね」
春日部遥は泣きながら笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます