第42話 結婚指輪

 別に良いかとも思ったが、学校帰りに王城へ寄った。執務室に入ると、ソファに腰掛けて、サラビスに話し掛けた。


「一応、聞き取りと個別面談をして来た。」


 サラビスが顔を上げた。

「仕事が早いな。」


「この程度はな。報告しておくと、男子生徒は、全員領地持ち貴族の、次男三男だった。宮廷魔法師は憧れの職業らしく、入りたいってさ。」


「そうだろう、巷では超エリートで通っているからな。」


「そうみたいだね。で、女子生徒の方なんだけど、個別に面談した結果、全員引き取る事にした。ラーメリア王女、カステール王女、パルミナ大公家二女、クロード商会の娘。本国の返事待ちな感じだったけど、Sランク公示の時点で、実家の方は良かったみたい。本人達は知らなかったみたいだけどね。」


「また、メンバーが凄いな。パルミナ王国は王女がいないから、王女みたいなものだし。帝国、エルフ王国、ラーメリア王国、カステール王国、パルミナ王国とうち、6か国の王女か。これは、1冒険者と言う訳には……いかないだろうな。」


「うん、適当な場所を見繕って、小さい国でも作ろうかとは思ってる。何れは…だけどね。」


「なぁ、マサキ。しばらく前にコンスタンと話をしていたんだが、冒険者のままで構わないから、大公爵の爵位を叙爵しないか?それで、神の保養地を作って、そこを公国として国を作らないか?所謂、大公が治める国、になるんだが。」


「それをする意味は?」


「公国として、独立性は保ちつつ、エルスロームと兄弟国とする事で、うちの王子や若手貴族を派遣して、マサキの統治を勉強させたいのだ。マサキの知恵を勉強させてもらいたいと言うのが、こちらのメリット。

 逆に、マサキの側のメリットとしては、ある程度の人材を提供出来るのと、移民の斡旋や通貨の提供、食料の供給が出来ると思う。」


「ほほう、流石だね、初期に必要な物ばかりだな。」


「まあ、土地を探すのは、ゆっくりでも良いから、叙爵だけでもしておけば、嫁をもらうのに恰好も付くしな。それに、国がやらなければならない事を、充分にマサキはやってくれている。爵位を受けていないだけで、それ以上の仕事をしておるのだ。」


「そうだなぁ、少し考えて見る。」


「ああ、返事はいつでも良い。」




 執務室を出て、メイドを捕まえユイの所在を聞いた。ユイはすぐに見付かった、あの可愛い20歳のメイドさんも一緒にいた。


「お前達、俺の屋敷で働くか?お触り有りだが…。」


「私は行きます。」

 とユイは言った。


「ん~、私もお願いしようかな。私はルミエールって言います。20歳です。」

 どうやら、良いらしい。


「いいのか?お触り有りだぞ?」


「「構いません。」」


「あ、そう……。じゃ、荷物取りに行こうか。」


「「はい。」」



 こうして、セベインの領主館で働いていたメイド2人を連れて屋敷に戻った。


「えー、ここですか?」


「うむ。」


「お屋敷というか……。城ですね。」


「ま、何にせよ、人手が足りない。宜しく頼むわ。」


「「はい。」」


 玄関を入ると、霧を呼んで2人の使用人室の用意と仕事の割り振りを頼んだ。

 頼んであった50着のミニスカメイド服も届いていた様なので、2人とミレーナに着せて見た。これは、やばい。手を出さない自信がない。


 だが、3人とも、

「これ可愛い。これ着ていいんですか?」

 と、嬉しそうだったので、良いのだろう。


 後は任せて、俺は風呂に向かった。風呂に入っている時間が、1番頭が働く気がする。疲れもとれるしね。


 湯舟に浸かって、目を瞑った。全員、嫁にするとなると、少し予定の変更をせねばならない気がする。結婚式なんぞ、1回やれば充分だし、そもそもやりたくないのだ。もらう相手が相手だけに、対外的に必要だろうと思っているだけなのだ。


 要するに、みんな王女級の立場の美女なので、対外的に俺の嫁になったんだから、手を出すんじゃねーぞ的な意味合いがあると言うだけなのだ。シャルロットも狙われていた様に、どこの馬鹿が粉を掛けて来るか分からないので、彼女達の身を護る為にやりたいだけなのだ。


 そんな事を考えていたら、王女3姉妹とメイリーナ、シャルロット親子が入ってきた。考え込んでいるマサキを見て、シャルロットが声を掛けた。


「どうしました?考え込んでいるみたいですが。」


「結局、全員嫁にする事になったんだが、結婚式をどうしようかと思ってな。あんなもん1度やれば充分だと思うんだよ。かと言って、余り延期するのも、シリルに悪いなと思っていてな。こっちの結婚式って何すんの?」


 これには、メイリーナが答えた。

「特にこれと言ってないわよ。ある程度の要人を招待して、パーティ形式でお披露目をするだけかな。お式自体は、慈愛の女神様の前で誓いをして終わりよ?」


「マジか~、エリセーヌこえーんだよなぁ……。あいつ本当に慈愛の女神なのか?嫉妬と憤怒の悪魔じゃねーだろうな。」




『失礼な!!』

 と声が聞こえたので、左手中指の指輪を見た。

『あ、聞こえちゃったの?』


『仕方ないじゃないですか。マサキさんを愛しているんですから、少しくらい妬いても良いではありませんか。私は一緒にいられないのですから。』


『俺もエリセーヌを1番愛してる。だがな、成り行きもあって嫁が沢山になった。いいか?結婚して。』


『良いに決まっています。お嫁さんみんなに女神の加護をつけますから、女神像の前での誓いだけはして下さい。全員ですよ?身分関係無く。』


『うん、分かった、有難う。』


『まずは、そちらで幸せになって下さい。』


『頑張るよ。』




 指輪を、じっと見ているだけのマサキを、不思議そうにみんなが見ていた。マサキが話を終えて、左手を降ろし、顔を上げると、全員の視線が集まっていた。


「ん?何?」


 シャルロットが聞いた。

「マサキ様、その指輪がどうかしたのですか?じっと見ていましたけど。」


「あぁ、さっき『あいつ本当に慈愛の女神なのか?嫉妬と憤怒の悪魔じゃねーだろうな。』と言ったのを聞かれていたみたいでな、怒られていた。」


「「「は?」」」


 シャルロットは意味がわからないと言った。

「えーと、誰に怒られたのですか?」


「誰って、エリセーヌ。」


「「「え?」」」


 セレスティーナが言う。

「マサキ様?その話は、エルスローム王家の者しか知りませんし、ソルティアーナも知らない筈ですよ?だから、分からないと思います。」


「あ~、忘れてた。もう誰に話したのか覚えてないが、秘密で頼む。漏れるとエリセーヌが危ない。」


 シャルロットがサッパリわからない顔で言う。

「えっと、マサキ様は女神様とお話が出来るんですか?」


「ああ、まあな。」


 セレスティーナが余分な事を言う。

「マサキ様は、お話どころか、慈愛の女神様を手籠めにして来たそうです。」


「仕方ないだろ?やっちゃったんだから。」


「「「・・・え?」」」


「いいんだよ、最高神のガリルの爺ちゃんがサムズアップして、『大丈夫じゃ!』って言ってたし。」


 メイリーナが聞く。

「ねぇ、女神様が危ないって神様って死ぬの?」


「神界には時間って言う概念がないのな。だから年齢と言う考え方も当然ない、それ故、寿命と言うものはないんだけど、死とは言わないけど、消滅する可能性はあるんだ。

 この指輪は、アーティファクトなんだけど、エリセーヌと俺の『絆』の様な物でな、これを失ってしまうと、エリセーヌの所在を悪魔に捕捉される恐れがあるんだ。だから、万が一の時は左手を切り落としてでも、異空間に放り込まなければならない。」


「愛しているのね?」


「当たり前だろう。だから、頼まれてもいないのに、大罪系悪魔と戦うつもりなのさ。憂いは残さない。」


「こういう人なのよねぇ……。惚れちゃうわよね。」

 と、メイリーナは諦め顔だ。


「結婚式だがな、女神像の前で身分関係なく、俺の女は全員誓いを立てろってさ。嫁さん全員にエリセーヌが加護をつけるって。」


「女神様の加護を頂けるんですか?」


「うん。だから身分云々は言わない事な。」


 シャルロットは言い切る。

「そんなもの元々気にしていません。」




 のぼせる前に風呂からあがったマサキは、浴衣に着替え酒を取りに行った。ミニスカメイドはやべー、ミレーナを捕まえて、後ろからスカートを捲り上げてヤッてしまった……。


 これはやばい。痴態が繰り広げられてしまう。昼ドラどころではなく、イキなり深夜番組を通り越し、18禁になってしまう!


 また、連載が止まったらどうすんじゃごるぁぁぁぁぁ!!


 と、酒を飲みながら悩むのであった。



 その頃、風呂場に残っていた女性陣は、困った顔をしていた。

 シャルロットは言う。

「思った以上に、とんでもない人でした……。」


 リーザロットは首を傾げる。

「嫌なの?」


「そんな訳ないじゃないですか、生き様が恰好良すぎます。あの人は、いつも自分をロクでもないと言いますが、とんでもないの間違いです。」


 メイリーナは言う。

「でもね、あの子が頑張るのはいつも人の為、自分の事なんか二の次なんだから…

だから、配下の娘達も私も、見たければ見せるし、触りたければ触らせるし、したければさせるのよ。もっと、自分の為に自由に生きて欲しいのだけどね。」


「あ……、そういう事なのですね。」

 シャルロットは、霧の言った事の意味を理解出来て、満足した様だ。




 マサキは、ロクでもない事を考えていた。どうして学校の制服と言うのは、あんなにそそるのだと、性犯罪を助長しているのではないかと。そう、着る服は自由なのだ、現代日本においても服装は自由なのだ。裸でなければ。


 寧ろ、裸で歩かれても引いてしまうだけだが、見えそうで見えないミニスカートや大胆に胸に切れ込みの入った服など、そそる服装が溢れているのだ。これはもう、我慢大会と言って差し支えないだろう。そこで、行動してしまうのが、アウトなのだ。


 全く女性の魅力にも困ったものである。鼻血を出してでも堪える忍耐力がないと、男性諸君は生きていけない現代社会なのである。


 だが、男尊女卑のこの世界。セクハラなんて不便な言葉はないので、大概自由なのであるが、相手の気持ちに寄り添う事が重要だと思うのだ。それさえ出来れば、大体の事は許容されるのである。


 そんな訳で、今日は、セレスティーナに制服プレイを所望しようと心に決める、アホなのである。

 シャルロット達の尊敬など、台無しなのだ。ここら辺が、ロクデナシのロクデナシたる所以ゆえんなのだろう。



 晩飯を終えた後、セレスティーナは、嬉々として制服に着替えたのである。どう考えてもエロ担当なのだ。頭の回転は早いのだ、なのに思考が残念な方へ行ってしまわれるので、シャルロットに期待するのだ。


 だが、制服姿のセレスティーナの破壊力に抗える奴などいる訳がないのだ。セレスティーナは頑張ってくれた、5回戦もしてしまった。もう、きっと俺は駄目なのだろう。自重と言う言葉は、昔聞いた事があるぜ程度にしか思い出せない。


 と言うか、もう16人も嫁にすると決めてしまったのだ。ちゃんと16人とエッチをするのも仕事なのだ。例え、俺がしたいだけだとしても。16人か、1週間が8日なのだから、朝晩1人ずつで回るな。楽勝じゃないか!


 その日は、セレスティーナを抱いたまま、就寝。翌朝は、エルラーナに襲われて2回戦。これはもうルーティーンなので問題ない。



 この日、コンスタンと少し話をして、全ての書簡が届くまで、結婚を保留にして、シリルだけ先に攫って来る許可をもらった。シリルを迎えに行くと、喜んでくれたので、良かったと思う。良い体してんだ、ジュルリ。


 シリルはとても敏い娘なので、シリルの為に開けておいた部屋に連れて行くと、位置関係に感激していた。その感激に乗じて頂いてしまったわけだが、凄く描写したいのだ。良い体を余すところなく描写したいのだが、自主規制なのだよ。

 わかってくれるよね?男性諸君!!



 休日を利用して、帝国の自宅の工房へ一人で行った。結婚指輪を作ろうと思ったのだよ。王城からもらって来た、ミスリル鉱石とカルロスにもらった微量のオリハルコン鉱石があるので、挑戦してみる事にした。


 各鉱石を【精錬スメルティング】して不純物を取り除き、純粋なミスリルとオリハルコンを取り出したが、少なくなりすぎて足りるのかなぁ。


 ミスリルと微量のオリハルコンと擂り潰して粉にした魔石を【融合フュージョン】の魔法を使って合金とした。そこからは小さく切り出して、【形成フォーム】の魔法で20個の指輪を作り出した。勿論、オートリサイズは付与済みだ。


 ここからは完全な手作業で、1人1人の名前を彫金道具を使って裏側に彫っていった。エルラーナだけ名前が長いので苦労した。最後に極小の魔法陣を描いて完成した。


 ガリルの爺さんが、スマホの地図上に魔力の検索機能を付けてくれていて、魔物などの位置を地図上に表示できる様にしてくれていたのだ。魔力感知を使っていたので、全く気が付かなかったのだが、それならばと指輪から魔力を発信してみようと考えたのだ。上手くいくかどうかは、わからないんだけどね。


 上手くいけば、指輪の魔力を拾って、何処にいるかが分かると言う仕組みだ。心配なんだから仕方がない。俺はただの冒険者なので、護衛の騎士等付けてやれないのだ。せめてもの防衛策なのだ、みんな美人だからね。


 スマホを起動して地図ソフトを立ち上げると、指輪の位置が、青色のピンで表示された。成功の様だ。これで、くノ一のピンチや王女達が攫われた時には駆け付けられるだろう。


 デザインとしては、ミスリルリングにオリハルコンの金の細い線が螺旋状に走った感じのデザインにした。ただのコンビにするほど鉱石がなかったのだ。

 勿論、弥助と霧の分は少しデザインを変えて、2人専用にしてあるのさ。あの2人には、幸せになってもらいたい。


 指輪を作ってみて思ったのだが、付与魔法は使えるんじゃないだろうか、何故、今まで使わなかったんだろう。色々改造してみよう。


 さて、トイレを作らねばならないが、陶器はどこまでの強度が出せるだろう。場合によっては石材から切り出す必要もあるだろう。何れにもしても素材の選定からだな。帰って店を見て回るか。




 ゲートで屋敷に帰って、エルスの街へと出て来た訳だが、みんな着いてきてしまった。目立つ目立つ、王女3人と美女いっぱい連れた男が1人。嫌だわ~これ。


 取り敢えず、建設資材を売っている店を見てみたが、所謂、便器と言える物ではなく壺なのだ。この街には下水道があるのだが、何故か壺。まぁ、多分、発酵させて、肥料に使っているんだろうが、別に人糞を使う必要はないので、水洗自動分解洗浄機能付き便座を作りたいのだ。


 紙はあるが、お尻を拭くのに使える程、気軽に使える物ではないので、是非、洗浄・浄化は付与したい。衛生面が非常に心配だ。


 幸い我が屋敷は温泉もあるし、トイレも水洗ではないが、壺でもないので、それ程、心配はいらないが、それは屋敷に居られればであるので、ローレルに行こうと思っている俺としては、出来るだけ早く完成させたいのだ。


 陶器を売っている店を探したのだが、なかなかそれ専用の店がない。仕方がないので、呉服屋に行き、頼んであった、俺の羽織袴と弥助の羽織袴を受け取り、宝石商に寄って、仕入れの状況を確認し屋敷に戻った。


 弥助に羽織袴を渡すと感激していた。家紋を染め抜いた風呂敷も渡してやった。

それを受け取った霧が泣いてしまった。もう、上様抱いて下さい等と血迷った事を言ってしまう程だったので、少し休ませた。


 桜を呼んで、少し話を聞いて見た。日ノ本人が集まっている所は、関東甲信ばかりではない様で、話を聞く限りだと近江周辺の人も多かった様だ。

 陶磁器に関しては、有るんだそうだ、登り窯が。それも連房式と言ったかな?段々になっている奴があるらしい。磁器も作っている様なので実際に見てみたいと思う。


 そんな日から、何日か平穏な日を過ごし。

 ミニスカメイド服を着た、ユイとルミエールとやってしまったり、事故が起きていたが、まぁ平穏だったと言っていいだろう。本人達が嬉しそうなのだ、知った事ではない。


 この世界のメイド達は、屋敷の主の手が付くのは、普通の事なんだそうだ。特に貴族は老獪な連中が多い為、情報の漏洩を防ぐためにも、そうやって囲い込むらしいが、相手の方が上手かったり、イケメンだったらどうするんだろうと、マサキは疑問に思うのだった。


 そして、全ての書簡が届いたと王城から連絡が入ったのである。

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