第141話 砂漠のラヴァーズ・コンチェルト②
舞台の演舞は夜が明けるまで続けられる。
俺たちは情緒溢れる景色を堪能し、舞台から離れ、オアシスに沿うように右方向へと進み、所定の場所へ移動することにした。
途中、最前列のかぶりつきの席で、酒を飲んだスケベじじいが踊り子のぷりんぷりんの尻を見て「尻の冒険ここに極まれり」と言っていた気がするが、せっかくのファンタジックさがぶち壊しになりそうだったので、気のせいということにしておいた。
「エリィ、こっちで間違いない?」
「ええ。アグナスちゃんが合図を送ってくれたから間違いないわ」
照明で明るい舞台から遠ざかるほど、周囲は薄暗くなる。
オアシスが舞台上の光に照らされ、水面が揺れて幻想的に屈折し、見る者の目を穏やかにさせる。
中央広場からオアシスに沿うようにして続いている遊歩道は、ジェラで有名なデートスポットであった。
等間隔に設置されたベンチはオアシスを眺めるため遊歩道に背を向けてあり、その後ろには手入れをされた腰ほどの高さの植え込みと、金木犀が十メートルおきに植えてある。
そう。そうなのだ。ベンチに腰をかけると、遊歩道からはカップルの頭だけが見え、身を沈めて抱き合えば、どこからも見えなくなる、完全なるイチャイチャポイントなのだ。東京だったら井の頭公園とか代々木公園みたいなもんか。
これはいい。すごくいいぞ。絶対女の子を口説くときに絶対使うわ。俺、乙女で美少女でお嬢様だけどぉ! くぅぅっ!
何となく音を立てないように、俺とアリアナ、クチビール、三人娘は遊歩道を進む。
すると、赤い髪を束ねて右肩に垂らしている普段着のアグナスが、金木犀の脇にしゃがみこんで手招きをしていた。
「エリィ…!」とアリアナが笑みを浮かべる。
「どうやらあそこのようね…!」俺は生唾の飲み込んだ。
「でしゅ……かっ」神妙にうなずくクチビール。
「ごくり」わざわざ効果音付けるトラ美。
「ニャニャンと…!」興奮するネコ菜。
「覗きはよくないかと……でも……!」好奇心に負けてついてくるヒョウ子。
中腰になって素早く移動する。
アグナスはこちらを見ると、美麗な顔を茶目っ気たっぷりにニヤリと釣り上げ、親指を背後に向けてこちらに来いとジェスチャーをした。
こそこそと彼のあとについていく。
足元は芝生で、眼前には生命の源である水をたたえたオアシスが広がっている。
植え込みに隠れるようにしてメンバーが集まっていた。
しかし、当初の予定より大人数で、思わず目を剝いてしまう。
まずはルイボン。彼女を守るようにアグナス、トマホーク、ドン、クリムトのアグナスパーティー。
さらにはバーバラと女戦士、女盗賊。
冒険者上位ランカーと、調査団に参加した冒険者達。
調査団に参加したジェラの兵士達。人数が足りないのは非番をもらえなかった連中がいるためらしい。チェンバニーは長期休暇でジェラにはいない。
「なんでこんなに集まってるのよ…!」
小声でアグナスに抗議した。
「すまないエリィちゃん。話したらどうしても全員来たいと言ってね……ははは」
「エリィ! こんな面白いことなんでわたくしに教えてくれないのっ!」
「ちょ! ルイボン声が大きいわよっ」
「あら…ごひぇんふぁひゃい」
思わずルイボンの口を右手で塞いだ。
「大丈夫だエリィちゃん」
「どこが大丈夫なのよっ。こんなにいたらバレちゃうでしょ…!」
狭い植え込みの陰にこれだけの人数が隠れているのだ。息が詰まりそうなほど、ぎゅうぎゅうのすし詰め状態で、約四十人がしゃがみこんでいる。
愛を囁き合っているバカップルでもさすがに気づくだろう。
「コレを見てほしい」
自信ありげにアグナスが呟き、植え込みの横にある土壁を指さした。
ん? そういえば言われるまで気づかなかったが、めちゃくちゃ不自然な位置に、ベンチを覗く目的のために作られたかのような土壁がある。
腰の高さぐらいの土壁が、集合しているメンバーの横に五メートル伸びていた。
これなら顔を出せばベンチの様子が手に取るように分かる。
「土魔法“サンドウォール”に光魔法“
魔法の無駄遣いっ!
「こうして耳を近づけると…」
アグナスが土壁に顔を近づけたので、それに倣う。
すると、微かな人の話し声が聞こえてきた。
『そうだなコゼット……平和だな』
『うん。それもこれもエリィちゃんのおかげだよね』
『ああそうだな。助けたときは変わった子だなって思ったけど、今思えばあれは運命だったのかもしれない』
『運命……かぁ』
思いっきり盗聴じゃねえか!
みんなすんげえニヤニヤしながら嬉しそうに土壁に耳くっつけてるよおおおお!?
いや、俺はここまでしてほしいなんて言った憶えはないよ。ちょっと心配だったから邪魔が入らないように見守ろうって話だったよね? 違うかね?
「アニキ…!」
「敵か。何人だ?」
「若いカップルです」
「フォーメーション・パリオポテス」
アグナスが鋭い目線を全員に走らせる。
おいおい何が始まるんだと思っていたら、アリアナがこくりとうなずいて、遊歩道から近づいてくるカップルに黒魔法下級“
「うっ」
「……!?」
がくり、と首を前に垂らし、デートを楽しんでいたカップルは意識を刈り取られた。
ええええええええ!
いつの間にそんな打ち合わせしてたんだよ?!
聞いてねえよ?!
アリアナを見ると、長い睫毛をぱちぱちさせ、当然だという顔でこくりとうなずいた。
打ち合わせしてたこと聞いてないよお兄さん!?
ジェラの兵士二人が遊歩道へ飛び出し、バーバラと盗賊女と協力してカップルを運び、近くのベンチに座らせ、アグナスが満足げに首肯する。
「よしっ…」
「よしじゃないわよ…!」
「さすがアグナス様」
「ルイボン?!」
もうツッコミどころが多すぎてあかん。
「くっ、見えづらいな……我は闇に潜む獲物を捕らえる……“
冒険中、ずっとクールだったターバン姿のトマホークが歯がみしながら木魔法中級をかける。
まじで魔法の無駄遣いッ!
てゆうか土壁から顔出したらバレる!
頭下げて頭っ!
と言いつつ俺も覗いちゃうけどぉ!
両目だけ土壁から出るようにして、そろりとジャンジャンとコゼットの様子を伺う。
二人は拳一つ分の距離を開けてベンチに座っていた。奥にジャンジャン、手前にコゼット。コゼットの顔はジャンジャンに向けられているため、こちらからは見えない。
眼前に広がるオアシスにはカンテラをつけた船がぼんやりと浮かび、遠くからはハープと縦笛の音色が微かに聞こえる。
ちょうど曲の終わるところだったのか、美しい旋律が途切れ、その代わりに拍手が響いた。
ジャンジャンは『曲が終わったみたいだな』と言い、コゼットが『そうだね』と優しげに答える。
うん、前言撤回。この盗聴土壁最高。グッジョブと言わざるを得ない。
『ねえジャン。……そろそろエリィちゃん達、ジェラからいなくなっちゃうんでしょ?』
『賢者様が旧街道へ行くことを許してくれた、って言っていたからな』
『はぁ……ずっといてくれないかなぁ』
『そういうわけにもいかないよ。それに、グレイフナーの子ども達はジェラに置いていくことにしたみたいなんだ。もう西の商店街で子ども達の受け入れは決まっているし』
『え? そうなの?』
『旧街道を子ども連れで歩くのは危険だ。グレイフナーに一旦戻って、戦力を確保してから迎えにくるんだってさ』
『じゃあまた会えるね!』
『ああ、そうだな』
『よかったぁ~』
『………俺はさ、エリィちゃんのやっている商会に入ろうと思っているんだ』
『コバシガワ商会っていう不思議な名前の?』
『商店街を救ってもらったときの手腕をコゼットも憶えているだろ』
『うん。エリィちゃん何でもできて格好いいよねぇ。男の子だったら惚れちゃうよ~』
『…そ、そっか』
『いつも真っ直ぐで、思いやりがあって、お仕事もできて、努力家で…はぁ~憧れちゃうなぁ…』
『たしかにそれは……俺もそう思うけど』
なんか俺の話題で盛り上がってるな。
そうかそうか、コゼットは俺に惚れちゃうかぁ。いやー嬉しいねえ。
ジャンジャンは少し複雑な表情を作ってオアシスの水面へ視線をうつし、すぐにコゼットへ戻した。
『きっとエリィちゃんのやる商会は大きくなると思うんだ。それに、何かとんでもないことをしてくれるような気がする。その手伝いができればいいなって思うんだ』
『うんうん! いいと思う! 私もジャンのこと応援するね!』
『……それでさ……コゼット』
『なに?』
『お前もそばにいてくれないか?』
ジャンジャンが真剣な面持ちでコゼットを見つめる。
心なしかベンチに座る二人の距離が近づいたように見えた。
『もちろんいいよ』
後ろ姿で見えないが、コゼットは笑っていると思う。
ダメだジャンジャン。そんな回りくどい言い方じゃコゼットは気づかないぞ。彼女はお前に好かれているとは思ってないからな。
コゼットは真面目すぎるんだ。フェスティが攫われたとき、助けを呼べなかったことを未だに悔やんでいて、自分を卑下している。
だから、ここでジャンジャンが押して押して押しまくって、彼女を認めてやれ。
そうすればすべてが丸く収まって、コゼットが自分をようやく等身大の自己評価をできるんだ。決めろ。男みせろやジャンジャン!
「んふー、んふー」
「ん……」
それにしても右隣にいるルイボンが興奮しすぎで鼻息が荒い。
左隣にいるアリアナは真剣な顔でコゼットとジャンジャンに“
アグナス、ドン、トマホーク、クリムト、バーバラ、女盗賊、女戦士、冒険者達、兵士達は重なり合うようにして、我先にと強引に土壁に耳を当てている。「重いっ」とか「どけ」とか「邪魔よ」とか、静かなる陣地争奪戦でもうぐっちゃぐちゃだ。
クチビールはその後ろで四つん這いになり遠巻きに二人を見つめ、その上に三人娘が乗っかっていた。
そうこうしているうちにジャンジャンは決意したのか、ゆっくりと両手を伸ばし、コゼットの華奢な右手を包み込んだ。
『コゼット』
『ジャ、ジャン……?』
――――!!!!?
コゼットが息を飲み、俺たちは生唾を飲み込んだ。
土壁の下にいる連中は何が起きたか分からず「どうした…?!」と小声で尋ね、上の方を占領している連中が「手を握った…!」とぼそぼそと実況する。
さらに興奮の空気が膨張していく。
『そういう意味じゃないんだ…』
『それじゃ……どういう……?』
不安げな声を上げるコゼット。やはりここまで言われて、ジャンジャンが自分のことを好きだ、という考えには至らないようだ。
押せ。ここが正念場だジャンジャン。押すんだ。
両手を握る拳に思わず力が入る。
ふんすーふんすー、と隣のルイボンの鼻息がさらに荒くなる。うるさい。
『ずっと……ずっとお前と一緒にいたいんだ』
『え…………?』
『なんで俺が冒険者になったと思う?』
『それは……フェスティを探すためじゃないの?』
『そうだ。……俺はフェスティを探し出し、自分を責め続けるお前を否定したかった。俺は愛する二人のために冒険者に……男になろうと思った』
そこまで言い切ると、ジャンジャンはコゼットの手を握ったまま、身体を寄せた。
二人の太ももがくっつき、視線が生々しく絡み合う。
うっすらと舞台上から、愛のプレリュードが流れ、ちゃぽん、とオアシスにいる小魚が遠慮がちに跳ねた。
想い合う二人の間を、ゆったりしたそよ風が吹き抜ける。
さわさわ、と金木犀が葉音を鳴らす。
『コゼット………お前のことを愛している』
ジャンジャンが優しげにコゼットを見つめ、微笑んだ。
その笑顔は心からの言葉だと誰が見ても分かった。長年心の奥底へ仕舞い込んでいた彼の本当の気持ちだった。周囲の人間も胸を打たれ、ため息まじりの呻き声を上げる。
コゼットはびくり、と身体を震わせ、困ったように肩をすぼめた。
『う、うそ……ジャンが……わたしのこと……』
『嘘なんかじゃないさ』
『でも! でも!』
触れれば壊れてしまいそうな、そんな危なげな声色でコゼットが身をよじった。
『コゼット。落ち着いて。俺の目を見てくれ』
『………』
コゼットはジャンジャンに握られていない手で胸を押さえ、おずおずと逸らした顔を愛しの彼へ向けた。
視線が再度、絡み合う。
婉美の神クノーレリルが合図を送ったかのようなタイミングで、舞台上で吟遊詩人が甘いバラードを歌い始めた。恋に恋をする乙女が男に恋慕し、やがてふたりは両想いになるという甘ったるい詩が、テノールのビブラートに乗り、ゆったりと小さな音でベンチにいる二人へ染み込んでいく。
『コゼット……俺と………俺と結婚してくれ』
『……ジャン』
『優しくて可愛い、お前のことが好きなんだ。子どもの頃から、ずっと……好きだったんだ』
『………』
『お前のことを愛している』
隣にいるルイボンが「ううっ」と言って目と鼻を両手で覆った。
どうやら感動と興奮で涙と鼻血が出たらしい。
アリアナが目元を潤ませ、涙を堪えている。
『私も…………私もジャンが好き………私と、結婚、してくれますか?』
コゼットが涙声で愛を告白し、左手をジャンジャンの手へ添えた。
そして、どちらからともなく近づき、抱き合った。
『コゼット……』
『ジャン……』
二人は一度離れ、お互いの顔を確認し、蕩けた顔で見つめ合う。
これで……ようやくジャンジャンとコゼットの恋が成就したんだ。よかった……ほんとよかった!
どんだけ心配したと思ってるんだよ。ジャンジャンもやればできる男だ。よくやった!
そうと決まったらさあ、熱い燃えるようなチッスを!
ぶちゅーっと! いってしまえ!
隣のルイボンは「はわわっ」と声を殺して呟きつつ、目を充血させて食い入るようにベンチの二人を見ている。
アリアナは恍惚とした表情で「早く…キス…」とうわごとみたいに繰り返していた。
そんな俺達の心の叫び、魂の叫びが聞こえたのか、恋人となった二人はゆっくりとお互いの唇を近づけていった。
まさに、唇が触れあうと思ったそのときだった。
ドグワッッ!!
どたんばたん!!!
ガチャチャンガチャン!!!
ごろごろ、どさどさどさっ!!!
「いてっ」「うわ!」「しまっ……!」「きゃあ!」「ん…?!」「くっ!」「壁が!」「なんということだ!」「でしゅっ!」「ニャに?!」「キスっ?!?!」「よがっだ!」「いってえ!」「重い!」「どけっ!」「誰かおっぱい触った?!」「いててて……」「はわわっ」「ルイス様鼻血っ?!」
全員の圧力に耐えられなかった壁が決壊し、折り重なっていた連中がつんのめるようにして前方に投げ出され、雪崩式にごろごろと愛し合う二人の前へ転がった。
小さい悲鳴や焦りが口々から漏れると、全員の視線と、驚いて振り返るジャンジャン、コゼットの目が、ばっちりかち合った。
「みみみ、みんな?! ど、どうして?!」
「え? え? え? え?」
ジャンジャンが叫び、コゼットは完全に思考が停止したようだ。二人は目を白黒させて立ち上がり、手を取り合ってこちらを見下ろした。
四十人の瞳が、愛を囁き合って今まさにキッスをしようとしていた男女の視線と交錯する。
あかん………。
どうしよう………。
言い訳が思いつかない………。
全員がそう思った。
長い沈黙がオアシスのデートスポットに落ちる。
その沈黙を破ったのは、コゼットだった。
「あわわわわわわ! 違うんです! こ、こここ、これは! あのあのそのジャンがその! 私に好きって言ってくれて結婚するって言ったからキス! キキキキキ、キスゥ?!」
ぼんっ、と音が聞こえそうなぐらいコゼットが顔を真っ赤にし、ジャンジャンの後ろに隠れてしゃがみ、両手で顔を覆った。恥ずかしくて誰とも目を合わせたくないらしい。
「やはり“サンドウォール”に魔法を重ねがけするのは無理があったみたいだね」
やれやれ、とアグナスが立ち上がって服に付いた芝生を払い、崩れた土壁を見て肩をすくめた。あんたはいつでも冷静すぎる。
「フォーメーション・クノーレリル!!」
「応ッッ!!!」
突然のアグナスの叫びに、冒険者と兵士、は素早く立ち上がり、ジャンジャンを取り囲んだ。
「な、なにを…?!」
「やれっ!」
屈強な冒険者と兵士、約四十人に囲まれて全身を掴まれると、ジャンジャンは天高く胴上げされた。
誘拐調査団で二週間ジャンジャンと共に行動していた面々は、彼がいかにコゼットを愛しているかを散々聞かされていた。それを知っていたので、本気泣きをして「おめでとう!」とジャンジャンを祝福する。しかも身体強化している奴がいるのか、大きな月に届かんばかりにジャンジャンの身体が宙に浮かぶ。
何度も身体を宙に浮かせ、ジャンジャンも何だかだんだん面白くなってきたらしい。謝辞を叫びつつ、笑っている。
恥ずかしがるコゼットに俺とアリアナ、ルイボン、三人娘が寄り添って祝福の言葉を贈った。ついでに鼻血をだらだら流しているルイボンに“
「エリィぢゃああああん! わだじジャンど結婚じばずぅ!」
俺の胸に顔をうずめてコゼットがぐりぐりと顔をこすりつけてくる。
コゼットのジャンジャンに対する想いをずっと聞いていたので自分のことのように嬉しく感じ、熱い気持ちを込めて彼女を抱きしめた。コゼットの柔らかい匂いが鼻をくすぐる。
「よかったね」
「うん」
「コゼット頑張った……偉いね」
アリアナが弟妹を宥めるときと同じ仕草でコゼットの頭を撫でた。
「アリア゛ナ゛ぢゃん! だいしゅきぃぃぃっ!」
コゼットはアリアナにも飛び付いて、ぐりぐりと顔を胸に押しつけた。
こうして想い合うふたりは結ばれた。めでたしめでたし。
○
で、なんで二人がうまくいったあとに俺がクチビールと冒険者三人、兵士四人から告白されてんの?
しかもエリィの恋愛に対する免疫がなさすぎて顔がまじであっつい!
絶対に顔真っ赤だわーこれ。
「エ、エリィしゃん! 第一印象から決めてましゅた! 僕と付き合ってくだしゃい!」
「おねがいします!」
「おなしゃす!」
「エリィちゃん可愛すぎて死ねる!」
「僕をグレイフナーに連れてって!」
「君は俺が守るッ」
「好きです! マ・ジ・デ・君に恋してる!」
「トキメイたっ! いや、トキメイてるっ!!!!」
屈強な男達八人が、右手を突き出して頭を下げている。
クチビールは薔薇っぽい花を一輪持って差し出していた。
「え……あのぉ………」
え、あのぉ、じゃないよ?
ちょっとエリィさん、勝手に内股擦り合わせてもじもじするのやめようね。
これじゃリアル乙女だから。もーやだー。
「皆さんの気持ちは嬉しいんだけど……ごめんなさい……」
うおおおおおお、なんか勝手に断ってるし!!!
口が独りでに動くの慣れねえ!!
「でしゅっ!」
クチビールが白目を向いて倒れると、他七名もハートブレイクし、無残な恋の灰となった。
気持ちはわかる。わかるけど、本当に勘弁してほしい。
勝手にエリィが動いて制御不能になるし、なんかめっちゃ恥ずかしい行動するし、何回やっても勝手にしゃべるの慣れないし、まじで恋愛はタブー!
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