8 邂逅
デモ隊が集まっているのは、帝国議会鉄学議事堂近くの赤坂山公園である。まさに今から帝国議会鉄学議事堂前に移動を開始しようとしている。粗野老はデモ隊を観察しながら近づいた。
「ワシに任せるのであれば、その場で仲間にするわけではない。連れて来いっと言っとった。なら力ずくでいいわけだ。あの男女?ホンマに大丈夫なんやろうか?だが、あの針ほどの奴が信頼しとる。まさか、他に何か秘密があるんか?まあ、今それを考えてもしゃーないか」
粗野老は前に出る。デモ隊のメンバーが粗野老に気付き近づいてきた。
「お前も我等【
粗野老は鼻で笑う。男はカーっと顔を赤くなる。大層ご立腹のようだ。
「躾のなってない子犬やな、お前等がやってることは糞にたかるハエや。見ていて気分が悪くなるだけの鬱陶しい存在だ。ホンマにデモでなにかが変わると本気で思ってるんか?革命などという大層な名前をつけとるが、お前等じゃ無理や」
「今なんて言った。俺達にケンカ売っとるのか?俺達の崇高な平等な世界にケチをつける気か!」
「世界は誰にでも平等で優しく出来てるんならお前等みたいなのはおらん。だがな、だから楽しいんや。お前等は平等になにを求めてるん?人が努力して得たものを妬む人間にはなるな。人には役割ちゅうもんがある。人には人にあった場所がある。それで満足してればええんや、求めるモノが大きすぎると人は破滅する」
「弱いもんは地べたを這いつくばってろというんか?俺達は努力をしとるんや。だがな、理不尽過ぎると思わんのか?」
「努力をしてない奴なんておらんぞ。誰だって努力しとる。だがな、ただの努力しかしとらん奴が選ばれる道理はないぞ」
「お前には俺達の気持ちなんぞ、わかってたまるか。理屈を並べて、勝ち組気取りか」
粗野老は笑う。
「ワシは弱いもんの気持ちはよくわかっとるつもりや。お前等は口だけでなんもせん奴に比べれば立派だ。行動することに意味があるんや」
そこにデモ隊の中から一人の男に道が出来る。
「はじめまして、貴方は私に用があるのではないですか?」
スーツ姿の平凡そうな男、迅に言われた特徴と一致する。こいつが手陽か。
「やっと出てきたか、お前に用がある」
「私に用ですか?あー、ちょっと待ってください。革命隊の皆様。先ほどのこの方の弁舌、どうやら女側の人間ではないようです。矛を収めてください」
手陽の言葉で場は収まった。
「一端のことは出来るようやな」
手陽は苦笑する。
「貴方の目的はわかりませんが、同じ志を持つ仲間のような気がします。是非、話を聞かせてもらえますか?」
粗野老はぶっきらぼうに返事をする。
「ワシの役目は連れてくることや、話ならこの場所で好きにするとええ」
粗野老は地図を渡す。
「わかりました。ですが、一人は不安なので店の前に仲間を待たせていいですか?」
「構わん、お前は優秀な奴やな。臆病な奴ほど生き残れる。だが、臆病な奴ほど結果は出せん」
「なるほど、肝に命じておきます」
「用は済んだ、じゃあな」
「それでは、また」
粗野老はこの場を去った。
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