第8話 泰介の授業/欠片
泰介は博樹の話を聞いて、あの今年1月某日の自分の音楽史の授業中に起こった話を思い出した。
ドイツの音楽家の話をする流れで、泰介は世間話として次の話をした。
今ドイツは、丁度一年前のドラッヘ災害後の復興で大変だけど、
第二次世界大戦中にはドイツは世界中を敵に回す程強かった。
日本、イタリアと三国同盟を結び、潜水艦による遣日潜水艦作戦というのを行ってたんだ。
中に兵器や物資、兵隊や学者なんかを載せてドイツと日本とイタリアは行き来していたんだ。
1945年ドイツの戦況が悪くなった時にヒトラーは、財宝なんかを潜水艦に積んで日本に隠したとか、そんな伝説がある。
それらは金ののべ棒だとか、美術品だとか、遺跡から発掘した物だとかって説もある。
で、先生のお祖父さんが生前福島県の山ん中に住んでたんだけど、昔日本軍の輜重兵科という所に配属されてて、倉庫の管理兵だった。
そこに遣日潜水艦作戦の時の物資を福島の倉庫まで運んで隠していたらしい。
子供の頃夏休みにおじいさんちに遊びに行くとそんな話を聞かされてたりしたんだ。
おじいさんに小さい頃にもらったものがあって…。
戦後日本政府がGHQと倉庫内の物資回収した時に俺のお祖父さんが鍵開けて、
お祖父さんは倉庫内は武器の出し入れがある度入ってはいたんだけど、ヒトラーの遺産と噂されたコンテナの中は見た事無かったんだ。
コンテナの中には遺跡から発掘された物なのか石碑があったそうだ。
中から石碑だけ持ち出して政府とGHQが回収、その後ドイツに戻したんじゃねえかな、とお祖父さんは言ってた。
で、コンテナの廃棄をお祖父さんは頼まれて、その時に底に落ちていたかけらを、もうゴミだから貰ったんだな。
遺跡のかけらならご利益がある、なんて思ったのかわかんないけど。
それは石碑のかけららしいんだが…見てもその辺の石畳のかけらと区別付かなくて…、
子供心に、これはもしかしたら本当は石畳のかけらで、お祖父さんは石碑と嘘ついてくれたのかも知れない、なんて思ってたんだけどな。
この話を泰介は宮内博樹のいるクラスの授業で話した。
この時には特に何も起きなかった。
泰介は一つの授業プログラムを全て台本化し、別のクラスでも同じ事を話している。この「石碑のかけら」の雑談も。
篠崎春香のクラスでも話した。その時少し異変があった。
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