七話 精神科の洗礼

入院して間もなくのこと。隣の病棟で工事が始まった。

夜に眠れない私は、昼寝をしていたのだが、工事の音が意外と煩くて眠れない。対策として、ヘッドホンをして寝ることが多かった。


昼間は「工事があってる時は部屋に居ないようにする」とか対策が立てられた。この頃は、田中さんとか入院患者のおばちゃんとか話せる人が何人か居たし……。

しかし!

夜にも「ガンガン!」って音が響いてくることがあったのだ。


理由は簡単。私が居た部屋の下が、閉鎖病棟の「暴れる人用の部屋」だったからだ。

その部屋は、パニックになったり怒りが収まらなかったりと理由は様々だが、とにかく一人で落ち着かせるという目的で入れておく部屋だという。

そこで「出せ!」と暴れる人が壁やらドアやらを叩くので、上の階(つまり私の部屋)まで音が響いていたのだ。


この後、昼夜の騒音は、ヘッドホン装着して音楽聴くという対策で解決した。

めでたしめでたし。



入院して何日か経ったある日。ふと視線を感じた。


私が入院していた部屋は、入院したての人が入る部屋だったらしく、看護師さんが定期的に部屋の前を通って大丈夫かどうかの確認がしやすい構造になっていた。(ドアの一部に磨りガラスがはめてあった。)


だからその時も、看護師さんかと思ったのだ。しかし磨りガラスから見えるのは、看護師さんの服の色ではなかった。


(ん?誰?)


患者さん同士はお互いの部屋に行き来しない。談話室で話せば済むし、部屋にいる時は一人で居たい時という不文律があったからだ。


よくよく見てみると、パジャマの前ボタンが見える。つまり、私の部屋をめっちゃ見てるということだ。


「え、なに!?怖っ」

その時、恐怖が私を支配した。

思わず声が出てしまう程、びっくりしたし怖かった。


少しして、その人は自分の部屋(私の隣の部屋)に戻って行った。

その後すぐに、私は患者さんに個室に移れるのか聞いてみた。

「ともちゃんが移りたいなら大丈夫なんじゃないかな。空いてたらいけると思うよ」

と言われたので看護師さんに相談して、主治医の先生にお願いして、個室に移ることに成功した。



精神病院が怖い。というイメージが作られる原因かもしれんと思った。


一応言っておくと、精神疾患の人が皆がみんな、怖い感じではない。むしろ大人しい、自分で抱え込んでしまう人がほとんどだ。

この後色んなハプニングや事件が起きるが、私の周りは優しい人ばかりで、基本的に心穏やかに入院生活が送れたことをここに記しておく。


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