六話 ワーク

私が入院した精神病院には、「ワーク」と呼ばれる作業療法がある。月曜日から金曜日まで朝と昼に2時間ずつ行われるそれは、曜日や時間帯でメニューが決まっている。

自分の心と向き合う心理療法や行動療法もメニューの中に組み込まれており、それらは退院間近になると参加するよう促された。


入院したばかりの時は、隔日で朝か昼のどちらかに参加しても良いとのことだったので、私は工作がある作業療法に参加することにした。


座っているだけで疲れるような状態で、何かを作ろうという気分にもなれなかったため、作業療法士の人に促されて、いちばん簡単そうなコースター作りをすることにした。

ウッド調のコースターにプラスチックのタイルを貼るという簡単なものだったが、フィーリングで適当に貼ることがなかなか出来ず、始めるのに時間が掛かったのを覚えている。


(うーーん。何が正解なんだろう)


何が正解で、何がダメなのかなんて、誰も決めないし言ってもいないのに、そんなことばかり考えてしまって、作業が全く進まない。

そうこうしているうちに、向こうの机に座った人は、立体のプラモデルのようなものを作り上げている。


(はぁ、すごいなぁ)


ダンッダンッ


奥の方からは、革細工を作っている人がいて、革を叩く音がする。

その音が頭に響く。


ダンッダンッ


私のコースターはまだ出来ない。



それから少しして、作業療法士さんや田中さんに教えて貰いながら、私が思う「私らしい」コースターを作った。

色味としては緑が多かった。

隣で作っていた人が使いたい色を話していたので、それ以外にしてみたら自然とそうなった。


知らない人と一緒に過ごすことにかなり疲れたのか、その後少し昼寝をした。



作業療法には、工作の他にヨガやアロマに包まれながらマッサージしてリラックスするもの、料理などがあった。

約3ヶ月入院していて、結果的に私は工作が1番好きになった。

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