第39話 血染めの制服
真夜中午前2時過ぎ。
静まり返った救急病院のオペ室前に設置されているベンチに、生気を失った瑞樹と寄り添うように岸田が座っていた。
間宮が倒れたマンション前から比較的近い場所に大きな救急病院があり要請を受け入れてくれた為、不幸中の幸いというやつで最短でオペ室に運ぶ事が出来た。
今、間宮は緊急オペを受けている。
救急車に同乗して病院まで来た瑞樹と岸田は、現場検証に立ち会う事を警察から言われてるが、間宮のオペが終わるまで待って欲しいと嘆願していた。
「お姉ちゃん!」
岸田は家族が心配するから連絡をするよう勧めたのだが、瑞樹は全く耳を貸さずに間宮の側から離れようとしたかった為、瑞樹から番号だけを訊き出して電話に出た母親に事情を説明していた。
瑞樹の目の前まで駆けつけた両親と希は、瑞樹の姿を見て愕然と言葉を失った。
着ている制服、足、顔の部分に至るまでどす黒くなった血が付着して、両手に至っては肌の色が殆ど見えない程に、血に染まっていたのだ。
搬送先の看護師に着替えて血を洗い流すように言われた瑞樹だったが、まったく耳を貸さずにこの場から一歩も動こうとしなかったと瑞樹の家族に岸田が説明する。
「志乃! あなたは大丈夫なの!?」
母親の華に絞りだすような声でそう問われて、瑞樹がようやく口を開き消え去りそうな声で答える。
「……私は怪我なんてしてない……。でも、私のせいで間宮さんが……間宮さんが……」
そこまで話すと、再び光を失った瑞樹の目から大粒の涙が零れ落ちると、その後は言葉にならなかった。
「あの、初めまして。僕は瑞樹さんの中学の時の同級生で岸田といいます。この度は僕が付いていながらこんな事になってしまって……すみませんでした」
「君が連絡をくれた岸田君か。志乃の事を助けてくれてありがとう」
「……いえ、僕は何も……」
両親と岸田のやり取りにまったく関わろうとせずに、大粒の涙で視界が歪んだ先にある間宮が入ったオペ室の扉を見つめている。
「志乃ちゃん」
再び通路の奥から自分の名を呼ばれた。家族が声をかけても視線を移しただけだった瑞樹が、この声には瞬時に反応を示してベンチから立ち上がる。
「――あ……かねさん。それに……優希さんも」
「志乃ちゃん。状況を教えて貰える?」
茜の声には焦り色を滲ませていたが、あくまで冷静に努めようとしているようだ。
瑞樹は茜達に間宮が襲われそうになった自分を助けに入ったところから、現在に至るまでの経緯を嗚咽混じりに話した。
茜は最後まで黙って聞き終えると、間宮が入っているオペ室のドアを見つめた。
「そう。ありがとう」
茜は一言だけ言い残して瑞樹の両親に挨拶をしようとした時、瑞樹の声が静まり返ったオペ室前の空間に響き渡る。
「なにがありがとうなんですか!? どうして私を責めないんですか!? 私の……私のせいで間宮さんが刺されたんですよ!?」
瑞樹がそう叫ぶと、周囲の空気が一瞬で変わった。
だが、茜と優希だけはそんな瑞樹を見ても、態度を変えるどころが眉1つ動かさなかった。
「ご家族の方はいらっしゃいますか?」
そんな時、現在の状況を説明したいと担当医が瑞樹達の前に現れた。
その担当医にいち早く反応を見せたのは呼ばれた茜ではなく、瑞樹だった。
「あ、あの! 間宮さんは!? た、助かりますよね!? ねえ!?」
現れた担当医の胸元を掴んで、縋るようにそう問いただす。
掴んだ白衣に乾いて固まった間宮の血が付着する。
瑞樹の血まみれの恰好を見た担当医は状況を察したのか、患者である間宮の状態を簡単に説明しようと口を開いた。
担当医は幸いにも大動脈には損傷がなかったのだが、腸の一部分まで刃物が届いていて出血が酷かったと、縋りつく瑞樹とその後方にいる茜達に説明した。
「傷は全て塞いだのですが、まだ意識は回復していません。このまま戻らないと大変危険な状況になります」
「そ、そんな……お願いします! 間宮さんを助けて下さい! お願いします!」
瑞樹が悲壮めいた顔で追い縋ると、担当医はとれる手段は全て行ったと告げて「あとは患者次第ですね」と瑞樹の肩をポンと優しく手を添えて促す。
医者としてもう出来る事はないと告げられた瑞樹は膝から崩れ落ちるように、病院の床にへたり込み放心状態に陥った。
そんな瑞樹の横を通り過ぎて担当医に自分は妹だと告げた茜は、両親が大阪から今こっちに向かっているところだと説明すると、別室で詳しく説明すると担当医と茜は診察室に移動した。
「お、お姉ちゃん」
まるで魂の抜けた抜け殻のように目に光はなく、体中の力も抜け落ちて動かなかくなった瑞樹に居たたまれなくなった希が声をかけたが、何の反応もなく瑞樹はただ床に視線を落としていた。
「――――志乃」
「――志乃」
「志乃!!」
遠くから呼ばれている気がした自分の名前が3度告げられた時、ビクッと肩が跳ねた瑞樹の前に神楽優希が仁王立ちする。
「立てっ!!」
優希の乱暴な号令に自分の意思とは関係なく勢いよく立ち上がった瑞樹の姿を呆然と眺める希。
(神楽……優希……だよね。ホンモノ!? お姉ちゃんの事を呼び捨てとか――マジ!?)
仁王立ちする優希とまるで死人のような生気を感じない表情の瑞樹を交互に見上げながらそんな事を考えていた希は、この直後にもっと信じられない光景を目の当たりにする事になる。
パンッ!!
優希が瑞樹の頬を思い切り引っ叩き、その音が真夜中の病院の通路に大きく響いた。
「しっかりしなさい! 志乃がそんな事でどうする!」
「……優希さん」
2人に挟まれる位置にいる希の思考が固まる。
自分の頭の上で信じられない事が起こっている。
自分の姉がカリスマと呼ばれる有名人である神楽優希にビンタを喰らったのだから、無理もない。
「なに悲劇のヒロイン気取ってんの! アンタがするのはそんな事じゃないでしょ! こんな時だからこそ、志乃に出来る事をしなさい!」
気丈に叱咤する優希の目に僅かだが光るものが溜まっているのを、瑞樹は見逃さなかった。
本当は優希だって泣き崩れたい衝動を必死に自分を奮い立たせている。それは不甲斐ないライバルが目の前にいるから……。
そう察した瑞樹はそっと自分の両手を両頬に当てたかと思うと、勢いよく頬を力いっぱいに叩く。
(――そうだ! しっかりしろ私!!)
「優希さん、ごめんなさい! もう大丈夫!」
「まったく……世話の焼ける子だよ」
本当にカッコいい人だと羨望の眼差しを優希に向けている瑞樹達の元に、担当医から詳しい説明を受けた茜が戻ってきた。
茜の話によると、手は尽くして後は意識が戻るか戻らないかの問題だった為、明け方には集中治療室を出て個室の一般病棟へ移す事になるらしい。
現時点で瑞樹に出来る事。
それは間宮の意識が戻ると信じて、傍にいて声をかけ続ける事を決意した瑞樹の元に警察が訪れて事情聴取を受ける事になった為、一旦茜達や家族の元を離れた。
◇◆
明け方になり間宮は予定通り個室の病室に移った事で、ようやく姿を見る事が出来た茜や優希が涙を流しながら、未だ眠り続けている間宮に声をかけている光景が目に焼き付いたと、現場検証に立ち会って戻ってきた瑞樹に希がそう伝えた。
現場検証は間宮の意識が回復してからと言っていた瑞樹であったが、茜の説明ではそう簡単ではないという事と、なにより間宮に瀕死の重傷を負わせた犯人を一刻も早く捕まえたい。優希に自分に出来る事をやれと言われた瑞樹は積極的に現場検証に協力したのだ。
「おーい! 志乃ちゃん!」
現場検証を終えてまだ病院に残っていた家族の元へ向かう途中で、聞き覚えのある声に呼び止められ振り返ると、そこには間宮の両親である雅紀と涼子、それに弟の康介が瑞樹の元へ駆け寄ってきた。
雅紀達がまだ血まみれの制服を着た瑞樹を見て、大怪我をしてると勘違いして大騒ぎしたのは言うまでもない。
「え!? ほ、ほな、その血は全部良介のもんって事なんか!?」
雅紀達に血まみれの制服の事を説明すると、いつも天井知らずに明るい3人の顔色がみるみる青ざめていく。
この制服を見ればどれだけの出血量だったのかを想像するのは、難しくないのだから当然の反応だった。
「……私のせいで……間宮さんを……本当に……申し訳ありません」
瑞樹は雅紀達に深く、深く頭を下げて謝罪した。
「……今はそんな事より、良介の所に案内してもらえるか?」
「は、はい。こちらです」
瑞樹は希からのメールに表示された一般病棟に移った病室の番号を頼りに、雅紀達を間宮の元へ案内した。
◇◆
「優希、送っていくから貴方は少しでも休みなさい」
「良ちゃんがこんな時に冗談言わないで!」
茜が優希だけ帰宅させようとしたが、優希は頑としてここは離れる事を拒否する。
「冗談を言ってるのは貴方でしょ! ツアーが始まるのよ!? スケジュールだって分刻みだってのに!」
「ツアーに関係ない仕事は全部キャンセルして!」
プロのミュージシャンとプロのマネージメントとの主張が影しくぶつかり合う。
そんな光景を目の当たりにした一般人の瑞樹の両親達や岸田が2人に唖然とした。
「いい加減にしなさい!」
茜の怒鳴り声が病室に響き渡り、間宮が眠る病室に別の意味で緊張が走った。
特に岸田の驚きが大きい。
それは今の優希を見てようやくあの時、O駅のホームで間宮と一緒にいたのが神楽優希だと気付いたからだ。
同じ男を好きになった恋敵があの神楽優希なら、瑞樹程の女であってもショックを受けて落ち込んでも不思議ではないと思ったのだ。
「昔、優希に言った事あるよね!? 例え親の死に目に会えなくても、仕事があれば何事もなかったように仕事をこなすのが、プロなんだって!」
「だったら――そのプロってやつをやめてやるよ!」
優希の口からその言葉だけは聞きたくなかった茜の頭に血が上り、カッとなって右手が降り上げた時、閉じられていた病室のドアが勢いよく開いた。
「良介!」
ドアが開くと茜以外には聞き慣れない声が飛び込んできた。
間宮が眠るベッドを囲んでいた面々が向けた視線の先に、間宮の名を呼ぶ雅紀と涼子、康介の姿があった。
「お父さん、お母さん」
「待たせたな、茜! それで良介の容体はどうなんや!?」
振り上げた手を降ろして大阪から駆け付けた雅紀達の元へ駆け寄った茜と入れ替わりに、最後に病室に入って来た相変わらず血まみれの制服姿を瑞樹が、優希の前に立った。
「かなり離れた所からでも聞こえてましたよ。病院なんだからもっと静かにしないと……優希さん」
「志乃には関係ないじゃん!」
間宮の中で大きな存在となった2人が、間宮が眠る前で対峙する。
体中に管を通されて酸素マスクを口に当てた間宮の姿を見て、我を失ってしまった優希に対して、間宮をこんな目に合わせた犯人を一刻も早く捕まえようと警察に協力していた瑞樹では、間宮が手術を受けている時と比べて、2人の立ち位置が完全に逆転していた。
「私が間宮さんの意識が戻るまで、離れずに傍にいます」
「は? それは私がするって話してたんだけど?」
突然の提案に優希は勿論、周囲にいる人間の視線が一斉に瑞樹に集まった。
「優希さんがそんな事したら、大勢の人に迷惑をかける事になるんですよ?」
「だから! そんな事どうでもいいって言ってるじゃん!」
パンッ!
刹那、病室に勢いよく頬を叩く音でピンと張り詰めていた空気の中にいる雅紀達の肩がビクッと跳ねた。
跳ねなかったのは眠っている間宮と明後日の方に顔を向けた優希と、そして右手を振り下ろした瑞樹だけだった。
優希は振り下ろされた瑞樹の右手を、何が起こったのか分からないという表情で見つめている。
「……さっきのお返しですって言いたいところですけど、これは間宮さんの代わりです」
商売道具でもあるタレントの顔に傷をつけるという、あってはならないタブーを瑞樹は躊躇なく犯した。
一瞬状況が呑み込めずに立ち尽くしていた茜が慌てて優希の元に駆け寄ろうとすると、優希は手をかざしてそれを制止させる。
「良ちゃんの……代わり?」
「はい。間宮さんが起きていたら、我儘を言う優希さんをこうやって叱ったと思うから」
「……良ちゃんが……私……を」
言うと優希は眠っている間宮に視線を落とした。
「ふふ、嘘だよ。良ちゃんは女に手を上げたりしないよ」
「だね。私も言ってて嘘臭いなって思った。優希さんを叩いたのは単純に私がそうしたかったから……だね」
「私を引っ張叩くとか……さすがは志乃ってところかな、いい度胸してるよ」
「ふふ、でも勘違いしないでね。私が優希さんを叩いたのは間宮さんの為でもあるから……」
「ん? それはどういう?」
「前に……ね。間宮さんから聞いた事があるんだ。優希さんの生き方は俺の憧れなんだって」
「――私が良ちゃんの……憧れ?」
瑞樹からそう告げられた優希の頭の中には、出会ってからこれまでの色々な表情を向けた間宮の顔が次々と、まるでスマホに保存している画像の流れのように流れていく。
「――そっか。憧れられていたのか……私」
「うん。だから私達の大好きな人の憧れを壊さないで……下さい。お願いします」
様々な人間の視界の中で堂々と告白した瑞樹の顔には羞恥の色はなく、ただ真っ直ぐに優希の目を見つめていた。
「……志乃にそう言われちゃ何にも言い返せない……か。分かったよ。良ちゃんの事は志乃に任せる」
「うん! まかせて!」
力強く答える瑞樹に頷いた優希は軽く呼吸を整えたあと、2人を見守っていた茜の元に向かい頭を下げた。
「茜さん、さっきはごめんなさい。これから帰って時間まで休むよ」
「ええ、それがいいわ。それじゃ、車を正面に回してくるから」
「ううん、タクシーで帰るから、茜さんは少しでも良ちゃんの側にいてあげて」
「でも」と食い下がる茜に大丈夫だからと促した優希は、最後に「明日からまた忙しくなるけどよろしくね」と茜に言い残して、病院を立ち去っていった。
優希と茜の姿にプロというものを感じた。
いや、何も芸能人だけがプロと呼ぶわけではない。
仕事をして報酬を受ければ、どんな業界でもプロなのだ。
眠っている間宮も、会社を経営している雅紀も、そして会社員をしている父である拓郎だって各業界のプロフェッショナルなんだと、目の前にいるプロ達を見て瑞樹は思う。
瑞樹はまだ学生で親に大学に通わせてもらっている身で、報酬を受け取る立場にはいない。
大学を卒業して仕事に就いてプロになった時、初めて間宮達と同じ土俵に立つ事になる。
だから、今はその為に学べる事吸収出来る事を貪欲に欲して、少しでも間宮や優希に追い付けるように頑張ろうと思った時、少しだけではあるが、間宮の気持ちが理解出来た気がした。
東京を離れて新潟で新しい仕事に就くという事が、間宮にとってどれだけ大切かという事を瑞樹は自分なりに受け入れられた気がしたのだ。
だが、今はそうした事を考える時でない。今の瑞樹はなによりも優先してやり通したい事があるのだ。
瑞樹は優希が病室を立ち去った後、両親に話があると2人を病室の外に連れ出して、共同の休憩スペースにやってきた。
「お父さん、お母さん。間宮さんの意識が戻るまで、泊まり込みで傍にいさせて欲しい」
瑞樹が今、やりたい事。
それは意識が戻らない間宮を、泊まり込みで見守る事だった。
瑞樹がそう頼み込むと、2人はある程度は理解を示してくれたのだが、もう大学が始まるのだからと予想通り反対された。
正論を突き付けられた瑞樹だったが、これまで間宮にどれだけ助けられてきたのか、そして今回の事件が自分のせいで起こった事などを真剣に話して聞かせて、大学の遅れは必ず挽回すると訴えた。
「――だから、お願いします!」
最後は深く、深く頭を下げた。
「……わかったよ、お前を助けてくれた人だからな。志乃の気が済むようにしなさい――ただし! これが原因で大学生活に支障が出てしまったら、間宮さんが責任を感じてしまう事になるのを忘れるなよ」
「うん! わかってる。絶対にそんな事にならないって約束する! ありがとう、お父さん!」
娘の頼みを了承した拓郎達は雅紀達に改めてお礼を述べた後、娘をここに居させて欲しいと願い出た。
雅紀達は驚いた様子を見せたが、ここには母の涼子が茜の部屋から通う事になっている。
雅紀と康介は間宮が住んでいた引っ越し業者のキャンセルを済ませた後、住んでいるマンションの契約が完全に切れてしまう前に康介が東京で生活する為に契約した部屋へ間宮の荷物を運び込んだのち、雅紀と康介は一旦大阪に戻る事になっている。涼子だけがここへ残り間宮の看病をする事になっていた為、瑞樹がいれくれたら息子を心配する涼子の気がまぎれて助かると歓迎した。
とはいえ、泊まり込むのなら準備が必要だと一旦家に帰るように促された瑞樹は、1度はこのままここにいると否定した。
だが間宮の血があちこちに付着している恰好では、どっちが患者か分からないからと雅紀に冗談交じりに指摘されて、瑞樹は観念して1度帰宅する事にした。
この病院なら歩こうと思えば歩いていける距離に瑞樹の自宅があるのだが、今の瑞樹の恰好だと周囲に妙な勘違いをされてしまう恐れがあるからと、病院前で待機しているタクシーで帰宅する事になった。
「あの人が前に希が言っていた間宮君か」
帰宅中のタクシーの車内で流れる外の景色に目をやっていた拓郎が、独り言のように呟く。
「……そうだよ」
聞き流しても問題ない状況であったが、心なしか拓郎の横顔が寂しそうに見えた瑞樹は正直にそう答える。
「意識が戻ったら、改めてお礼を言わないといけないな」
「……そうだね。間宮さんが助けてくれなかったら、間違いなく私が刺されてた」
「――誰にでも出来る事じゃないわ。本当に凄い人だと思う」
2人の会話を黙って聞いていた母親の華が割って入ると、希も続けて口を開く。
「だよね。口では綺麗ごと並べる男は腐る程いるけど、本当にやってしまう人なんて初めて見たよ」
希は半ば呆れるような声で、華の言う事を肯定した。
「志乃は……その、なんだ。彼の事が好き……なのか?」
「…………」
「い、いや! 言いたくないのならいいんだ。言ってしまったらまたお父さんが煩いもんな」
「ううん、違くてね。間宮さんに対しての今の私の気持ちをどう言葉にしていいのか……わからなくて」
「……そうか。まぁお前も大学生になって半分大人の仲間入りするんだし……な。志乃の思うようにやってみなさい」
「……うん。ありがとう、お父さん」
大人の仲間入りと言われてもピンとこない瑞樹だったが、大学が始まれば少しは実感出来るのだろうかと考えたのも一瞬の事で、今はそんな事はどうでもいいと今も眠り続ける間宮へ意識を戻す。
(今は間宮さんの意識が戻る事を信じて、私に出来る事をするだけだ)
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