1章 終話 運命の悪戯
7月24日(月)
カタカタとデスクから、快調なキーボードを叩く音が聞こえる。
間宮は明日から出張に出る為、当面のデスクワークに追われていた。
「ん! こんなもんかなっと!」
一日中モニターと睨めっこしていた仕事がようやく片付き、PCをシャットダウンさせながら「ふぅ」と息を吐いた。
続いてデスク周りを入念にチェックして、やり残した仕事がないかを確認してから、両手を天井に向けて大きく体を伸ばす。
「やっと片付いたか」
ホッと一息ついていると「間宮! おつかれ!」と後ろから声をかけられる。
両手を上げたまま振り返ると、隣の部署に所属している同僚の松崎がいた。
「その様子だと終わったみたいだな。向こうで珈琲でもどうだ?」
松崎が親指を自販機に向けて、ニカっと白い歯を見せている。
「おぅ!」
2人は自販機で缶コーヒーを購入して、休憩スペースに設置している椅子に腰を下ろす。
「ここのところ、かなり遅くまで残ってたみたいだな」
2人はまるでビールジョッキを突き合わすように、お互い購入した缶を突き合わせる。
「……まぁな」
缶コーヒーをグビグビと半分程、一気に喉に流し込みコーヒーの後味を楽しみながら、間宮は少し疲れた声で答える。
「明日から出張なんだって?」
「あぁ……そうなんだよ。つか、あれを出張と言っていいのか微妙なんだけどな……」
間宮は溜息交じりに呟く。
「あぁ! 聞いた! 聞いた! 最初聞いた時は思わず吹き出したぜ!」
「だろうな……まさかあんな案件が受理されるなんて思ってなかったからな」
「ははは! それな! まぁ、それだけ上の連中も必死って事なんだろ」
笑っている松崎に、続けて愚痴をこぼす。
「だから、急いで元々のスケジュールを可能な限り前倒して片付けたんだけど、仕事が忙し過ぎて出張の準備が全然進んでないんだよなぁ」
「そっか。まぁ、気を付けて行ってこい! 土産と土産話を楽しみにしてるよ」
飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に放り込みながら、松崎はニヤリと笑みを浮かべて土産を催促してきた。
「何があるのか知らないけど、適当に買ってくるわ。土産話の方は失敗談ばかりにならないように、気を付けるよ」
「ははっ。おう! じゃあな! おつかれ!」
軽く手を上げた松崎は、自分の部署に戻っていく。
「じゃな! おつかれ! お先に!」
立ち去る松崎に軽く挨拶を済ませた間宮も、自分の部署へ戻る。
帰り支度を済ませて、課長のデスクへ書類を渡す為に向かうと、いつもは話しかけても目線すら合わさずに話す課長が、間宮の姿が視界に入ると珍しく手を止めた。
「課長。それでは明日から行ってきます」
書類を手渡して、挨拶をすると手を止めていた課長が立ち上がった。
「うん! お疲れさん! 頼んだぞ! 間宮!」
この課長が部下にこんな言葉をかけるのは、本当に珍しい事だった。
その証拠に周りにいた同僚達が驚いた顔をして、こちらを見ている。
「はい! もし何かありましたら、可能な限り携帯に出れるようにしておきますので……」
トラブルが起きても対処すると告げたのだが、立ち上がった課長は首を横に振り口を開く。
「いや! こっちの事は向こうにいる間は、忘れてくれていい! 間宮は明日からの事だけを考えて、先方さんの期待に応えてくれ!」
これまた予想外の言葉だった。
あの課長が、自分のミスで起こったトラブルでさえ、部下の休日を潰して対応させるような男に、そんな事を言われるなんて入社して初めての事だ。
「えっ? でもそれでは……」
予想外の展開に戸惑いはしたが、迷惑をかけるわけにはいかないと課長に告げようとしたのだが、途中で言葉を遮られた。
「今期はウチの部署の数字が芳しくないのは知ってるな? だがここで間宮の商談がまとまれば一気に業績が上がるんだ!」
課長は間宮の手を握り、鼻息荒く続ける。
「期待しているぞ! しっかりと先方を満足させてこい!」
課長に発破をかけられて、話しかけていた言葉を飲み込んで「はい! 精一杯やってきます!」と台詞を変えて力強く言い切る事にした。
帰宅後、軽く食事を済ませて、全く捗っていなかった出張準備に取り掛かった。
とはいえ、男はこの手の準備は大体いい加減なものだ。
必ず用意しなければいけない物以外は、雑にスーツケースに押し込み、足らなかった物は現地で購入すればいいと、かなり適当に準備を済ませて、明日は早いからとシャワーを手早く浴びた。
寝室に向かいベッドに入る前に、ビールを飲みながら先方に手渡された、明日からの資料に目を通して、色々と考え込まされた。
(まさか、また俺がアレをやる事になるなんてな……)
期待に応えられるか分からないけど、天谷社長は思った通りにやってくれればいいと言ってくれたんだしと、間宮はグッと気合いを入れて、残っていた缶ビールを飲み干して、明日からの出張に腹をくくって、眠りについた。
◇◆
7月25日(火) AM5時
目覚ましが鳴り響き、ベッドから眠たい目を擦りながら這い出る。
カーテンを開くと、辺りはまだ薄暗い景色で朝を迎えた気がしない。
目を覚まそうとシャワーを浴びて、頭をスッキリさせてから、身支度を整えてキッチンへ降りた。
我が家は両親が共働きで、疲れているのに朝早くに起こすのは悪いからと、なるべく音を立てずに簡単な朝食を用意して1人テーブルに向かう。
朝食を摂りながら、今日から始まる合宿のスケジュールを確認する瑞樹の目は真剣そのものだ。
この合宿の成果次第で、志望校を絞ろうと考えていた瑞樹は、受講する単元の内容を入念に熟読している。
前回の模試では志望大学のK大がB判定だった為、進路の変更を促されていたのだ。
この時期の模試でB判定では、進路の変更を勧められるのは当然だ。
だが、瑞樹はまだ諦めたくはなかった。
K大でやりたい事がある。
その目標が達成できれば、自分に少し自信が持てると信じているから。
だから、この合宿で自分の力を見極めるつもりでいた。
食事を済ませて、極力音を出さずに洗い物を終えた瑞樹は、足元に置いていたスーツケースを持ち上げて玄関へ向かう。
合宿の準備を始めだした頃、瑞樹が通っているゼミは全てタブレットで講義を行う為、かさばる物がないからとボストンバッグを用意していた。
だが、やはり女子の7泊8日の外泊だとボストンバッグでは到底賄えなかった為、急遽母親が出張時に使っているスーツケースを借りた。
スーツケースを避けていたのは、単純に自転車に積み込めないからだ。
玄関を出た瑞樹は仕方ないと、駅までスーツケースを引っ張り歩いて向かう事にした。
早朝とはいえ、7月下旬で夏真っ盛りのこの時期、日中と比べたら涼しいとはいえ、スーツケースを引っ張って歩いていると、少し汗が出るほど暑い。
駅前まで辿り着くと、駅周辺の木々から蝉の鳴き声が聴こえる。
そう言えば、近年の蝉は日中に鳴かなくなったと聞いた事がある。
原因はこの暑さで、夏の虫の蝉が暑さで鳴かなくなるなんて、昔の人が聞いたら驚くのではないだろうか。
来年の今頃は、どんな気持ちでこの蝉の鳴き声が聞こえない通りを歩いているんだろう。
もう後悔するのだけは沢山だ。
後悔しない未来の為に、今はこれから始まる合宿を全力で頑張ろう!
O駅に着き、いつものゼミの向かい側に比較的広い、アスファルトを敷き詰めただけの何もない広場がある。
市が管理している場所で、この場所で週末にはフリマなど色々なイベントが開催されている。
今日は合宿参加者の集合場所に使われていて、すでにバスが数台停まっていた。
「早めの来たつもりだったけど、もうこんなに集まってたんだ! 皆気合いはいってるなぁ!」
集合場所には合宿の参加者が、すでに半数近く集まっていた。
瑞樹はそんな参加者を見渡して、小さな手をギュッと握りしめて気合いを入れ直していると、中央に集まっている集団から少し外れた場所から、こちらに小走りで駆けてくる人物が視界に入った。
「おはよう! 瑞樹さん! 今日も暑いね!」
駆け寄ってきたのは、以前この合宿の事で話しかけてきた佐竹だった。
「おはようございます」
瑞樹は早速スイッチを切り替えて、見えない壁を張り巡らせる。
表情を一切変えることなく、愛想なんて微塵もない挨拶を返した。
だが、佐竹はそんな事を気にする素振りを見せる事なく、グイグイと距離を詰めようとしてくる。
「おぉ! 私服姿って初めて見たけど、凄く可愛いね!」
「そうですか? ありがとうございます」
勉強をする為に来たとはいえ、今日はバスで移動する事が大半だと聞いていた為、一応まともな恰好をしてきたつもりだ。
だが、この男に褒められても全く嬉しいとは思わなかったが、社交辞令ではないが、一応お礼は言っておいた。
周りの女子たちを見渡してみると、今からリゾートにでも行くのか?と訊きたくなるような恰好をしている者や、逆にすでに勉強という名の戦闘準備に入っているような、超カジュアルな服装をしている者もいて、眺めていて面白かった。
瑞樹はと言えば、夏らしく白を基調としたノースリーブのワンピースに淡い水色のシャツを腰に巻きワンポイントを作り、白と青が綺麗な模様を作っている少しだけヒールが入ったサンダルで合わせた。
アクセ類はチャラくならない程度に身に着けて、水色と白のボーダー柄のトートバックを肩から下げている。
瑞樹の今年の夏カラーは水色と白なのだ。
参加者の中では全体的に真ん中位のコーディネートで、決して目立ってはいないはずだ。
「あ、瑞樹さん! スーツケースを先に預けておいた方がいいよ。手ぶらの方が楽でしょ?」
早速佐竹が朝からテンション高く、瑞樹のエスコートに名乗り出た。
「そうですね。じゃあ、いってきます」
バスに向かおうとすると、佐竹は当然のようについてくる。
「スーツケース僕が運ぼうか?」とか「バスの席って基本的に自由なんだけど、よかったら一緒に座らない?」
などと、顔を合わせるなりしつこく付きまとわれている。
正直合宿中もずっとこんな感じだとたまったものではないと、深い溜息が漏れた。
「結構です。自分で出来るのでお構いなく! それとバスの席ですけど、流れに任せて適当に座るつもりなので、約束は出来ません!」
敢えて少しきつい口調で、佐竹の誘いを断った。
こうしないと、いつまでも付きまとわれそうだったからだ。
瑞樹の狙い通り、流石の佐竹も空気を読んだのか、一緒に歩いていた足を止めた。
「……そうか。余計なお世話だったね……ごめん」
ようやく瑞樹の気持ちに気が付いたのか、佐竹は離れていく瑞樹の背中を見る事なく俯いた。
瑞樹は佐竹の言葉を聞こえないふりをして、バスに向かいスタッフに手渡された名札をスーツケースに取り付けた。
その場で少し待っていると、バスに乗り込むように指示が出た為、瑞樹はそのまま流れに沿ってバスに乗り込むと、見事に窓際の席だけすでに埋まっている状況だった。
少し奥まで通路を進んでいくと、周りの男達の「おぉ!」という言葉が聞こえてくる。
(……嫌な予感しかしない)
嫌な予感程当たるもので、バスの通路を進むたびに左右の窓際の席から、お誘いの声がかかる。
そのパターンは様々で、すでに白々しく窓際の席を空けて誘い込む手口や、中には瑞樹が通りかかったタイミングで狭い車内で立ち上がり、手をそっと窓際の席に添えて、露骨なエスコートする者までいた。
そんな男共にウンザリしていると、かなり後ろの窓際の席にショートカットの女の子が座っているのが目に入った。
瑞樹は藁にも縋る思いで、男共の誘いを全て無視して女の子が座っている席へ急ぐ。
「あ、あの、すみません! 隣いいですか?」
ようやく女の子の席に辿り着いた瑞樹は、迷う事なくそう声をかけた。
女の子はスマホにイヤホンを刺して、音楽を聴いていたようで、瑞樹に気が付くと驚いた顔を見せた。
「あ! 気が付かなくてごめんなさい! どうぞ、座って下さい」
女の子は気持ちよく快諾してくれて、空いている隣の席に置いていた自分の鞄を膝の上に置いて、席を勧めてくれた。
「ありがとうございます」
瑞樹は空けてくれた席に、ホッと安堵しながら飛び込むように座った。
「同い年なんだし、敬語なんていらないよね? 名前聞いていい? 私は
「あ、うん! そうだよね。私は
「うん! こちらこそだよ! よろしく! 志乃!」
握手を求める加藤は、ボーダー柄のパーカーの下にカジュアルなTシャツ、七分丈のデニムのパンツに赤いスニーカーが良く似合っている、元気いっぱいの女の子だった。
「でも、志乃は私の隣でよかったの?」
「え? なんで?」
加藤は少し不思議そうに話題を振ってきた。
「だってすごく綺麗だし、こっちに来るまでに声かけられまくってなかった? 音楽聴きだす前に聞こえてたんだよね」
「あぁ……あれね」
瑞樹は加藤に声をかけるまでの事を思い出しながら、加藤の方に体を向けて手招きした。
「え? なに?」
加藤を近づけた瑞樹は、加藤の耳元に手をそっと当てて小声で話す。
「何しにここへ来たんだって言ってやりたい位に、本当に鬱陶しかったんだ。だから、愛菜がいてくれてメッチャ嬉しかった。ありがと」
瑞樹は加藤にだけ聞こえる様に、自分の本心を呟くように話した。
瑞樹の本心を聞かされた加藤は、初めは驚いた顔を見せていたが、瑞樹と目を合わせると「ぷっ」と手を口元に当てて吹き出した。
「あははは! それマジ!? そんな事考えてたの!? 格好良すぎるんだけど!」
ケラケラと笑い転げる加藤を見て、予想以上のリアクションに自分も何だか可笑しく思えてきて、一緒に肩をポンポンと叩き合いながら笑い合った。
バスが目的地を目指して走り出す。
車内は生徒同士でわいわいと賑やかだ。
瑞樹と加藤もどこの大学を狙っているのだとか、どの科目が苦手だとか受験生らしい話題を中心に盛り上がっていた。
やがて瑞樹達を乗せたバスは、何度か休憩を挟み数時間程度で目的地である伊豆高原にある大きな会議施設に到着した。
この施設は大、中、小と様々な会議施設が備わっており、多目的に使われている施設で、まだ完成して数年しか経っていないらしく、とても綺麗な建物だった。
会議施設ではあるものの、宿泊施設も完備されているようで、快適に過ごせる造りになっているそうだ。
バスから降りた瑞樹は、他のバスから降りてくる生徒達を眺めていて、気になった事があった。
「ねぇ、愛菜」
「ん? どうした?」
「合宿の講師ってバスに乗ってなかったの?」
「あぁ! 講師達は車で先乗りして、事前に色々と打ち合わせをしているらしいよ」
「へぇ! そうなんだ」
加藤と談笑しながら施設に向かうと、入口付近でスタッフが宿泊する部屋割りを記載したプリントを各個人に配布していた。
プリントを受け取った瑞樹は、施設の中に歩を進めながらプリントに目を通していると、後ろから「キャー!」と言う声と同時に抱き着かれた。
瑞樹は驚いた顔で自分の肩越しにある顔をみると、加藤の満面の笑みがこちらを見ていた。
「志乃! 私達同じ部屋だよ!」
加藤は抱き着きながら、ピョンピョンと跳ねて、同室に2人の名前があるプリントをひらひらと見せた。
「え? あ、ホントだ! やったね!」
「うん! 楽しい合宿になりそうだね! 頑張ろうね! 志乃!」
「うん! 宜しくね! 愛菜!」
2人でキャッキャとはしゃいでいると、スタッフから中央ホールへ向かうように指示が出された。
中央ホールとはこの施設最大規模の会議室で、参加者全員やスタッフ達も余裕で入れる規模の会場だった。
ホールの入口でスタッフがまたプリントを配っている。
受け取ったプリントには事前に受けたテストの結果を踏まえて、各教科の振り分けが記載されていた。
瑞樹は自分の振り分けを確認すると、殆どの教科がAクラスになっていたが、やはり英語だけはCクラスになっていて、思わず溜息をつく。
すると、隣にいた加藤が瑞樹のクラス分けの結果を見て、目を大きくした。
「うわ! 志乃すごいじゃん! 3教科AクラスでCクラスって英語だけなの!? 美人で頭が良いとかズルくない!?」
口を尖らせて拗ねるふりをする加藤が、何だか凄く可愛く見えた。
「私なんか見てよ! Aクラスなんて物理だけで、他はBよりCの方が多いんだよ!?」
瑞樹はそう訴えてくる加藤の肩に、ポンと手を置いた。
「あははっ、ホントだね! でもね愛菜? この評価を覆す為に私達はここにいるんだよ? だからこの評価はとりあえずクラス分けをする為だけのものって思わない?」
「……そうなのかな」
「そうだよ! 要は最終的に上がっていればいいんだからね!」
クラス分けの結果を気にしていた加藤をフォローした瑞樹の気持ちに、嘘はない。
自分もその気持ちで結果を受け止めているからだ。
「……うん! そうだね! なるほど、ポジティブな考え方だね! よし! やる気出てきた!」
「うん! うん! そうだよ! ガンバロ! 愛菜!」
ありがとうと言う、加藤の笑顔が瑞樹には眩しく見えた。
本当にポジティブなのは加藤だと思うから。
全員がホールに集まったところで、ゼミのオーナーが壇上で挨拶を始めた。
「合宿に参加された皆さん! 長距離の移動お疲れ様でした。当ゼミオーナーの
天谷が壇上に姿を現すと、さっきまであったざわついた空気が一変した。
「参加した皆さんの人生を良い方向に向かう為に、我々は最高の時間を用意させて頂きました。後は皆さん1人1人のやる気次第です」
参加した生徒の目の色が、次々と変わっていく。
「どうかこの貴重な時間を最大限に生かして、大学受験に大いに役立てて欲しいと願っています。今日から8日間頑張ってください」
天谷の挨拶に拍手が起こる。
拍手をしている生徒全員の真剣な眼差しが、全て天谷に集まっている。
天谷もまた、自分に向けられている目を見渡すと、満足そうな笑みを浮かべて壇上を降りた。
司会進行役のスタッフが続けて、各科目の担当講師の紹介する為に、講師達を壇上へ呼び、手に持っていたマイクを講師の1人に手渡した。
マイクを受け取った講師から順に、挨拶を始めだす。
「皆さんはじめまして! 英語のAクラスを担当させて頂く事になった
藤崎がそう挨拶を済ませ、とても綺麗なお辞儀をすると、会場の男子達から「おぉ!!」とどよめきの声が上がった。
その様子を見ていた瑞樹と加藤も、どよめいた男子達と同じように綺麗な女性だと盛り上がっている。
それから順に各講師達の挨拶が進行していく。
笑いを狙った挨拶をする講師や、厳しくいくぞと生徒達をビビらせる講師と、バラエティーに富んだ講師達が集まったなと瑞樹は加藤と話しながら、進んでいく講師達の自己紹介に耳を傾けていた。
そして最後の講師にマイクが渡る。
マイクを持った最後の講師の顔を見た時、瑞樹は大きく眼を見開いたまま体が硬直した。
手に持っていたプリントが小刻みに震える。
(……え?)
瑞樹は視界に映し出されたいる現実に、持っていたプリントをグシャリと握り潰した。
「皆さん初めまして。英語Cクラスを担当する事になった
(……な、なんで!? 嘘だよね!?)
『29』~結び~ 1章 最低な出会い (完)
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