魔女の出会いと恐怖と、それから狂気。
- ★★★ Excellent!!!
- 聖願心理
森の奥深くで、傷だらけの彼を見つけた彼女。
彼と彼女のささやかな出会いは、ささやかな変化をもたらした。
とまあ簡単にあらすじを書いてみたんですけども、短編な上に雰囲気重視の世界観なので、これ以上は何も言えません。
これ以上言ってしまったら、ネタバレになりますし。
「読んでください。時間はかかりませんから」、というしかありません。
この小説の魅力と言うか、作者である瞳さんの魅力は、独特的な表現や比喩にあると思うのです。
表現一つで、世界に引きずり込む。それが重なって、いつの間にか世界の深い部分まで、読者を誘う。
この独自の感性が、瞳さんの世界を創造しているのだと思います。
本編から引用すると、
『白いベッドが蛍光ペンみたいな黄緑の血に染まっている。彼のもげた左腕はザクロのように組織が溢れ落ち、痛々しくて目も当てられない』
『ショッキングピンクの瞳孔が、こちらを覗いていた。まるでおもちゃのように平坦な瞳が輝く』
など。
色を鮮やかに使い分け、その色をちょっと変わったものに組み合わせる、その感性。
でも、容易に想像ができるんです。
『蛍光ペンみたいな黄緑の血』
考えるだけで、ぞわっとします。
少し狂った出会いがもたらすもの。
彼女と彼の関係性。
続きを勝手に想像してしまうラスト。
彼女たちの世界に呑み込まれる、そんな物語です。