閑話【脱出】

ロダンの隣家、 ヘツブが仕える屋敷の一室で

主人と思わしき少年に土下座をするヘツブ。


「若様!! この度は期待に沿えず申し訳御座いません!!」

「いや、 いいよヘツブ、 顔を上げて」

「いえ、 若様、 これは不味いかと」


若様と呼ばれた少年はヘツブを宥める。

若様の隣に控える三つ編みのメイドがそれを訂正する。


「今回、 優勝して我々の主張を世に広めるチャンスがふいになったのは

とてつもない痛手です、 我々はもう八方塞がりかと」

「う・・・でもヘツブはよく頑張ったじゃないかキュウ」

「頑張っても結果が無ければ意味は有りません」

「本当に申し訳ありません・・・!!」


頭を下げ続けるヘツブ。

その時、 部屋のドアからノックが響く。


「どうぞ」

「失礼します」


別のメイドが外から入って来た。


「あのー・・・ヘツブさんに邏卒が来ています」

「はぁ!? 邏卒!? な、 何で!?」

「良く分かりませんがアゲマキ、 と言う人について尋ねたいと・・・」

「・・・・・・・待って貰って!!」

「あ、 はい、 分かりました・・・失礼します」


メイドがドアを閉めて去って行った。


「ど、 どっどどどどどどどうします!? 若様!! メイド長!!」

「如何するもこうするも・・・逃げるしか無いだろう!! キュウ!!」

「はっ」


キュウは部屋の隅を弄って隠し通路を開いた。


「で、 でも必要な物とかは・・・」

「大半の資金は既に宝石に変えている

貴女もメイド服の下に普通の服を仕込んでいるでしょう?」

「そ、 そうですけど・・・」

「言い合っている時間は無い!! 直ぐに逃げよう!!」

「はい!!」

「は、 はい!!」


若様、 キュウ、 ヘツブは隠し通路から逃げ去った。

屋敷内に邏卒が入って来た頃には既に逃げられた後であった。

屋敷の周辺には邏卒達が集まり騒ぎになっていた。


「あの・・・何か有ったんですか?」


散歩をしていたロダンが邏卒に尋ねる。


「この家で指名手配犯に近しいと目された人物が居たので

事情聴取に来たのですが逃げられたのです、 屋敷の主人とメイド長も逃げられてしまい

現在現場保全をしております」

「指名手配犯に近しい人物?」

「ヘツブと言うメイドなのですが・・・御存じありませんか?」

「いや、 変な娘だなぁ・・・と思っていましたが・・・」

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