幕間【オーギュスト王国の勇者達】

オーギュスト王国、 王都アウグストゥス。

そこに位置する王城『八月城』に定期的な会合の為に集まるオーギュスト王国の勇者達。

勇者の一人ヤガタは自身が集めた仲間であるパーティ【八方四傑】と共に登城していた。

ヤガタは長髪の少年できちんとした身形をしている。


「とうとう王城に来れる日が来たか・・・光栄だな・・・」


ヤガタの仲間、 騎士フランベルジュは涙を流しながら王城の廊下を歩いている。

彼の家系は没落した貴族、 またこうして登城の栄誉に預かれる事に感涙しているのだ。


「あんまり泣くなよみっともない」


フランベルジュを諫めるのは魔女フランソワ。

彼女は王城に来るのは数回有ったのでそんなに緊張はしていなかった。


「フランソワさんは堂々としてますね・・・私は何回来ても慣れませんよ・・・」


大柄で一見すると野卑な武闘家に見える僧侶のフランケンは緊張していた。


「堂々としていなよ、 スーツを崩すな」


ヤガタが仲間達に注意する、 彼は形式に拘る為、 スーツに着替えてやって来た。


「は、 はい!!」

「はいはい」

「ふぅ・・・」


三者三様の対応で返し、 勇者達は他の勇者達が待つ部屋に入った。

部屋には三人の勇者とその仲間達が椅子に座っていた。


「お待たせしました・・・御三方お揃いで、 私は最後から二番目ですかな?」

「いや、 アンタが最後だよ」


クラン【イレギュラーズ】を主宰するラフな服装の金髪の勇者バンメンが指摘する。


「小生ならココです」

「シエン殿」


パーティ【シエンパーティ】のリーダーである

紫で逆立って居る様な髪の若い男の勇者シエンが手を上げる。

如何やら床に座っていたらしい。


「何故床に座っているのですか?」

「小生はまだここに居る方々と同じ席に座れるまでに至りませんので」

「アンタはそれで良いけど何でワタシまで床に座らせなければならないのかね?」


シエンの仲間のマッドサイエンティストのドクがブツブツと文句を言っている。

美人の女性なのだが瓶底眼鏡と三つ編みで台無しになっている。


「相変わらず堅苦しい・・・」


ヤガタは椅子に座った。


「おいおいヤガタよぉ、 お前さんは椅子に座るのかい?

シエンより前に勇者になっておいてパーティすら揃えられない癖によ」


バンメンがヘラヘラしながら言う。


「バンメン殿、 私は仲間を三人揃えて来ましたよ」

「へぇ・・・でも数だけ揃えてもねぇ」

「バンメン君、 俺に喧嘩売ってるの?」


パーティ【白紙の冒険記】リーダーのバンテージが

体中に巻かれた包帯を弄りながらバンメンの言葉を遮る。


「うん?」

「メンバーが三人しかいない俺達のパーティを馬鹿にしてるのかって聞いてるんだよ」

「いやいや、 でもアンタ等の真似して回復役無しなんて馬鹿な構成をした

馬鹿が多いからアンタ等そろそろ回復役を入れたら如何だ? とは思うよ?」

「回復魔法なら俺も俺の仲間の賢者のベンダーも使える」

「それにしては生傷が絶えませんなぁ」

「てめぇ・・・」


机がバンッ!! と叩かれる。

机を叩いたのは王国最強のパーティ【オーギュストの龍】リーダーである。

彼は龍と契約した代価として体の成長と名前を捧げた為。

名前が無く小さな子供の姿になっている、 彼は自分の仲間達の美女の膝を上に居ながら言った。


「誰がどーとかどーでもいーじゃん、 さっさと会合を終わらせようぜー

終わらせて僕はおねーさん達とイチャイチャしたいし」

「堂々とピンク発言するなよ・・・」

「龍の坊やが言うならばここは大人しくするか」

「うん、 分かってくれて嬉しい、 じゃあ会談を始めようか」


【オーギュストの龍】【白紙の冒険記】【イレギュラーズ】【八方四傑】【シエンパーティ】

それぞれの代表が集まっての会談が始まった、 とは言え特に何事も問題無く終わろうとした

その時、 部屋の扉が勢い良く開かれた。


「バンメン!! 大変だ!!」


イレギュラーズのメンバー、 タンクトップにズボンのラフな格好をした

ドッグテイマーケイマが飛び込んで来た。


「如何したよ?」

「ウチの系列店に襲撃をかけられた!! 敵さんは恐らく魔王配下の魔法使い!!」

「んだとぉ? 今から行ってぶっ殺してやらぁ!!」


立ち上がるバンメン。


「魔王の配下となると我々の出番ですかな」


立ち上がり膝の汚れを払うシエン。


「アンタ等は手ぇ出すな、 ウチの問題だ」


バンメンはそう言って部屋を飛び出した。


「・・・何やら、 一波乱起きそうですな」

「そうですね」


部屋に残った勇者達は何かを感じたのだった。

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