第46話 桜奪還

       

 ーーパチン


「どうへぇあ?!」


 剣をぬいたボサボサ髪の男へ指を鳴らして、乱気流を叩きつける。


 すると、石煉瓦で出来た壁を突き破り、通路の壁に上半身をめり込ませて、静かになった。


「まぁ、ドラゴンだって一撃なんだ。よくわかんない人間が耐えられるわけないよな」


 俺は当然の結果にホッと内心で安堵しながら、廊下へと出てみることにした。


「あ、ご主人マスター! あの男焼き殺したぞー! 僕が倒したんだっ! ドラゴンに逆らう愚かな人間を!」


「おお、ジークもどっか移動させられてたのか? となるとオーウェンも?」


 褒めて欲しくてしかたないジークへ「凄い凄い」と称賛をおくりながら、直感にしたがって廊下をいく。


「マックス、ジーク、無事だったか」


 しばらく歩くと、何やらボロボロのオーウェンに再会することができた。


 どういうわけか刀を抜身で持っており、刃から血がしたたり落ちている。


「この建物の連中を斬りながら進んでいてな」

「痛そうだな……大丈夫かよ? これあげるから、食べろよ」


 緑の果実を取りだしてオーウェンに渡す。


 オーウェンは果実をじーっと見つめた後、俺の方をチラッと見て嬉しげに微笑びしょうし、「悪いな」と言って皮をかじりはじめた。


 俺たちはその後、道中に襲ってきた犯罪組織の連中をなぎたおして、オーウェンの案内で桜の部屋まで戻ってきた。


「ん」


「どうしたんだ、オーウェン?」


「いや、ここでドゥアという男を倒したのだが……


「ドゥア? それってあのボサボサってした髪の男か? あいつなら俺が倒したけど」


「……なに?」


 オーウェンは顔をこちらへむけて眉をひそめた。


「ボサボサ髪? ご主人マスターは嘘をついてるぞ! あいつなら僕が倒したんだからなー!」


「……どういうことだ? 同じ人間を俺たちはみんなそれぞれ倒している。そして、俺の倒したドゥアは遺体ごと消えている」


 オーウェンと俺は腕を組みしばらく思考。


 ポケーっとし、最高にカッコいいイケメンフェイスに、一番似合わない顔で待つジークを横目に、俺たちは結論をだす。


「スキルか」

「スキルだろうな。思うに、すべてが偽物、いや、あるいは本物なのかもしれないが、まるで″影″のような実態のある分身を作れる能力なんだろう。強力なスキルだ」


 オーウェンの分析に俺も納得してうなづく。


 聞いたこともないスキルだが、この世界の不思議な現象はだいたいスキルを疑っておけば、正解にたどり着けるというものだ。


 二つ名が『孤影の騎士』なのだし、きっとあの男のスキルには″影″というモノが重要な役割を持っているんだろう。


「まぁいい。もう襲ってこないよな? 俺たちには勝てないってわかっただろうし」

「そうとも限らない。はやくここを脱出するに越したことはない」


 俺とオーウェンはお互いにうなづきあい、桜の木を見上げた。


 この木を運び出す手段なら、指を鳴らし廊下の連中を倒し進んでた時に、すでに思いついている。


 俺はジークの肩に、手を添えた。


「ジーク、ドラゴンになって屋根を吹き飛ばせ。そして、桜の木を周囲の床ごと掘りかえして崖上に持っていくんだ」


「っ、大仕事! 了解だぞ、ご主人マスター!」


 ジークは俺の頼みを快諾してくれた。


 地面に四肢をつき、蒼の貴族礼服を突き破り、背中から翼を生やし、どんどん体を巨大化させていく。


 ジークは肉体変態の最中にさっそく口からブレスを吐き、天井をただの一撃で木っ端微塵に破壊して、蒸発させてしまった。


ご主人マスター、剣豪、オレの背中に乗るんだ」


 俺とオーウェンが大きな蒼い背中に乗ると、彼は桜の根のわきに手を突っ込み、優しく包みこむように、木の根っこ部分をもって、翼を羽ばたかせはじめる。


 羽ばたきだけで桜の花びらが散り、建物が崩壊し始めているが、これは仕方ない。


 ジークはそのままぐんぐんと高度を上げていき、やがて霧の包囲網を突破して、新月の夜へと帰還した。


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