第43話 生前の行い


----------ステータス----------


個体名=ゴーダ キラ

種族=ハイゴブリン

 

能力値

 筋力=B

 体力=B

 知力=D

 魔力=E

 

パッシブスキル

 毒耐性

 麻痺耐性

 成長加速

 統率者


アクティブスキル

 身体強化

 集団突撃


------------------------------ 



「…………」

「おー、これがステータスってやつか。……ん、どうしたチロ、いきなりうなだれて」


 剛田の────もといゴーダのステータスを見たチロは、その場でorzと崩れ落ちた。


 違いすぎる。

 自分とは、明らかに違いすぎる。


 ゴーダの前世の本名は剛田ごうだあきらなので、名前のア行がバグっているのと『毒耐性』『麻痺耐性』を持っているのはチロと同じだが、それだけだ。


 能力値といい、スキルといい、圧倒的にゴーダのほうが性能が高い。


「……先輩って、そういえば元ラガーマンでしたっけ……」

「ん? ああ、大学のころな」

「キャプテンだったんですよね……?」

「おう、そのままチーム抱えてる会社に就職することも決まってたんだが、膝やっちまってな。結局は引退して、普通の会社に就職することになった。まあ、俺の営業での押しの強さはラグビー仕込みだから、無駄にはなっちゃいないがな!」


 ガハハと笑うゴーダの声を後頭部に浴びながら、チロは理解した。


 おそらくは、そうしたゴーダの人を引っ張っていく性格や能力、そしてラガーマンとしての経験が『統率者』や『集団突撃』といったスキルとして現れているのだろう。


『成長加速』については、怪我をしても腐ることなく新しい道に踏み出した、その向上心が影響しているに違いない。


 チロは、未だ豪快に笑い続けるゴーダを見上げた。


 まぶしい。


 夢も希望も向上心もなく死に、底辺の能力値とバッドスキルを付与されて生まれ変わったチロに、ゴーダの存在は眩しすぎた。


「ねぇ、チロ」


 ゴーダと自分を比べて落ち込むチロの背中を、ヒナがつついた。

 チロがうなだれたまま、顔だけを向けて振り返ると、


「ステータスって、わたしにも、あるの?」


 と首をかしげげながら聞いてきた。


「……そういえば」


 自分と同じ転生者であるゴーダにはステータスがあるだろうと思っていたが、ヒナのことまでは考えが及んでいなかった。


「じゃあ、ヒナ。自分のことを知りたい、って強く思いながら、ステータスって言ってみて?」

「うん、わかった。ん~…………ステータス!」


 ヒナが唱えると、果たしてステータスは表示された。


 そこには…………



----------ステータス----------


個体名=ヒナ

種族=ゴブリンハーフ(エルフ)

 

能力値

 筋力=E

 体力=E

 知力=C

 魔力=B

 

パッシブスキル

 毒耐性

 麻痺耐性

 成長加速 


アクティブスキル

 属性魔術(初級)

 


------------------------------



「…………」

「ねえ、チロ。わたし、読めないけど、これ、なんて書いてあるの?」


 チロはまた、orzと崩れ落ちた。


 ヒナのステータスも、チロより圧倒的に高かったのだ。

 

 知力や魔力といった能力値の高さもさる事ながら、おそらく父親から受け継いだと思われる『毒耐性』や『麻痺耐性』そして『成長加速』といった有用なパッシブスキル。

 さらには、アクティブスキルとして『属性魔術(初級)』まで持っている。


 ヒナは外見だけではなく、中身も非常に高スペックな少女だったのだ。




 だが、それよりも何よりも…………




「先輩…………エルフ、孕ませとったんか…………」


『ゴブリンハーフ(エルフ)』という文字から推察されるその事実のほうが、チロにとっては重大なことであった。

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