90日目

「あ、お姉ちゃん」

 呼ばれて振り向くと一瞬誰も居なかったが視線を降ろすと相手を確認出来た。


「みーちゃん。どうしたの? 」

 みーちゃんは、真ん丸のおめ目を潤ませながら、アタシの手を握る。


「お兄ちゃん、大丈夫? 」

 不安そうな表情は今にも泣き出しそうだ。


 多分、大人の会話を耳に入れてしまったのだろう。


「大丈夫だよ。すぐに元気になって戻ってくるから心配ないよ」


 アタシのその声を聴いた、真ん丸おめ目はまっすぐにアタシの目を見つめる。


「お姉ちゃんも、元気出して」


 じわーっと、胸に何か異物が入り込んで。全身をポッカポッカと暖めていく。


「みーちゃん、ハグしていい? 」

 アタシが尋ねると。

「なんのなんの、どうぞどうぞ」とみーちゃんは両手を広げてくれる。


「ありがとう。みーちゃん、お姉ちゃんも元気出すから」

 みーちゃんのおてては小さい。


「うん、またたかしおにいちゃんとみんなで遊ぼうね」

 無邪気な笑顔は、容易くアタシの心を包み込んでいく。


――異世界転生まで

  あと10日――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る