56日目
「うん、検査結果の数値も問題なし。でも、病み上がりは体力が落ちてるから絶対無理は禁物ね。一応点滴打っとくから向こうのいつもの部屋に移動して」
そう言うと、昔なじみの初老の女医さんが看護師さんにカルテを渡した。
「じゃあ、こっちに」
看護師さんに誘導されて診察室の奥の部屋に向かう。
ここは、いわゆる注射部屋だ。
すれ違う子どもがまるで昔の自分を見る様な絶望の表情を浮かべている。
「お姉ちゃんの隣のベッドがいい? 」
看護師さんが意地悪そうに笑う。
「はぁ……」別にそこしか無ければ構わないけど……
「はい、じゃあちょっと待っててね」
シャッとカーテンが閉められると、ベッドに横たわり天井を見上げる。
と、隣から
「おかあさ~ん、てぇにぎって~」
思わず吹き出しそうになるのを必死で堪えた。
そんな時にシャッとカーテンが開き、看護師さんが両手に点滴ののった金トレイを持ってやって来た。
そして、俺の様子を見てにやりと微笑むと耳元に来て。
「カーテン開けてつなげる? 」とからかって来た。
ので、眼で抗議する。
「ははは、冗談冗談。
でも、大丈夫? 点滴刺す時にお母さんに手を握ってもらわないで」
今度は、更に強い眼で異議を唱える。空気が少し張り詰めた。
「おかあさ~~ん。いたいよ~。死んじゃうよ~」
隣からのネコナデ声にベッドから滑り落ちそうになった。
――異世界転生まで
あと44日――
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