26日目

「おし、じゃあ今日までがGW明けのテストの範囲だからな。解らんとことかノートとってない奴は、テストまでに何とかしろ? 」


「お~い、ノート見せてくれよ」

 授業後に猿殺が手当たり次第に声を掛けている。

 それが煩わしかったので、普段はめったに出ない廊下に出て次の授業を待つ事にした。


「おっす。ねぇねぇ明日って委員の仕事行く? 」

 突然、グループの女子の中からこちらに声が掛かった。

 彼女だ。


 まさかの展開に周囲のクラスメイトも、少し騒めきだし視線が集まる。


「え? あっと……ど、どうしようかな」


「行こうよ。テスト勉強も兼ねてさ。丁度図書室行きたいと思ってたの」

 どうして、こんなにあっさりと堂々と言えるのだろう。


「そ、そうなの……うん、確かに連休に入る前に一度行っといたほうがいいかもね……」

 その言葉を聴くと、彼女はにっこりと口角をあげる。

「きまり。じゃあ明日ね」

 そして、グループの中に戻っていく。


 俺は、情けないけど突然に周囲の視線に耐えられなくなって、教室に戻った。


「あ、おい~どこ行ってたんだよ~

 なぁ、ノート貸してくれぇ」


 そんな猿殺の声も聴こえないまま、俺は素早く席に着いて、先の出来事を脳内で繰り返していた。


――異世界転生まで

  あと74日――

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