第20話 ほう、これがクエストですか。

 早速出発しますか。ということで1階に降りていくと誰もいなかったので、そのまま宿を出る。ソリを忘れないようにしっかりと肩に紐をかける。マーブルはいつもの位置だ。紐を肩にかけるとき、最初は降りていたのだが最近は上手く避けており、一々降りなくなった。流石だ。最初に街に入ったところの門に行く。モウキさんがいた。



「おっ、アイス達、早速クエストか?」



「ええ、この辺はよくわからないので、とりあえず採集中心でいこうと思っていますね。」



「そうか、この辺はそれほど強い魔物はいないが、念には念を入れてくれ。無事に戻って来いよ。」



「ありがとうございます、行ってきます。」



「ニャッ!」



「ははっ、おまえ、人の言葉がわかるのか? すげえな。気をつけて行ってこいよ。」



 モウキさんの見送りを受けて街を出る。街へは西から東へ向かって着いたので、さらに東へ進むことにした。今回は探索メインなので、とりあえずできるだけノーヒントでいく。べ、別に聞くのを忘れたわけではない、ということはご理解いただきたい。しばらく草原が続いており、所々色違いの頭一つくらい伸びている草が生えていた。鑑定してみると『薬草』と表示されていた。今までは結構曖昧な感じの表現だったが、今回はしっかりと薬草となっていた。確かにねぐら周辺に生えていたのとは少し違っていたけど、ニオイはほぼ同じだった。確かこれは常時依頼に載ってたやつだな。採集しておこう。たまに外見がほとんど変わらない別物が混在していた。これらは『やくそうもどき』となっていた。ニオイで結構違うとマーブルが言ってた。私には違いがわからなかった。鑑定のおかげですな。たまに『雪見草』という種類の花つきのやつが生えていた。これも薬草の原料だそうだ。これも集めておきますか。やくそうもどきもちゃっかり何かの材料になるとアマさん言ってた。特にかさばらないからこれもいただいておきますか。ソリに放り込んでおく。闇雲に放り込んでいるが、ソリは実はマーブルの闇魔法での空間が確保されていて自動的に分けてくれるっぽい。



 平原を進むと森が見えてきたので、大きく外れない程度に中に入って探索する。採集を頑張っている最中に敵意を持った存在が確認できた。今回もマーブルに負けました。嬉しいような悲しいような複雑な心境です。転職してレベルが1に戻ったので軒並み能力も下がっているかと思ったけど、水術による探知に関しては特に下がった感じではなかった。探知の感じだと、一角ウサギが4体と言ったところかな。こちらは実際に戦ってみないとわからない。さて、やりますか。



「マーブル隊員、とりあえず2体ずつでいきましょうか。左の2体を頼みます。」



「ミャッ!!」



「バーニィ起動。では、突撃!」



 と、戦闘時のいつものやりとりを行う。



「シャーッ!!」



「バンカーショット。」



 マーブルが先陣切って飛爪を飛ばす。狙い通りにキレイに首をはねる。続いて私もバンカーショットを放ってそれに続く。こちらも狙い通りに頭部をつぶして任務完了。特にレベル1にダウンしたことによる低下は見られなかった。いつも通り水術で血抜きしてソリに入れていく。慣れたものです。



 その後は魔物は探知できなかったので、薬草と雪見草を採集して戻ることにした。採取した植物もなかなかいい感じで集められたと思う。登録手続きなどで時間が多少かかったこともあり、時間が満足に取れなかった部分もあるが、何よりも結構遠かったので移動に時間がかかってしまうからだ。とはいえ、最初にしてはいい感じではないかと思いながら街に戻る。タンバラの街に着いたのは暗くなり始めた頃だった。あぶねぇ。



「おう、遅かったな。あと少しで門を閉めちまうところだったぜ。」



「ええ、ぎりぎり間に合いましたね。」



「まあ、無事で何よりだ。さっさと入った入った。」



 入り口ではモウキさんが待っていた。って、この人ずっとここにいたのかねぇ。労働時間どうなっているんだろうか。と、どうでもいいことを考えながら、ギルドに報告しますか。



 ギルドに到着して、外れにソリを置く。最初に薬草と雪見草をそれぞれ規定の枚数を束にして袋に入れていく。雪見草は一袋が満杯になった。薬草に至っては袋があと三袋しかなかったので、それだけしか入れられなかった。一角ウサギに関しては、部位証明の角だけ持って行って、残りはソリに入れておこう。盗まれないように周りを凍らせておく。万が一触れたらやばいことになるけど、それは触れたやつが悪い。薬草を渡す準備をしてギルド内に入る。この時間も人が多く、報告の窓口は列になっていた。急いではいないので後ろに並んでのんびり待つとしましょうか。



 列で待っていると、そこそこ注目された。もちろん視線の先は私ではなくマーブルだ。近くにいた人は私に話しかけてきた。いずれもマーブルをなでたい、というお願いばかりだ。あまりにも多すぎてマーブルもうんざりしているらしく、珍しくマーブルは拒否をするかのごとく顔を横にプイッと向ける。それを察してか遠巻きに見られる程度に収まった。とはいえ視線はこっちにあるので、どうも落ち着かない。いや、私が見られているわけではないのはわかっていますが、嫌なものは嫌だ。うんざりしながら順番を待ち、ようやく自分の番になった。



「お疲れ様です。クエストの報告ですか? ギルドカードはお持ちですか?」



「はい、報告です。これが、ギルドカードです、どうぞ。」



「では、ギルドカードをお預かりします。確認しました。Gランクのアイスさんですね。どのクエストを達成されましたか?」



「薬草と雪見草の納品と一角ウサギの討伐です。」



「わかりました、では、クエスト品の確認をしますので、こちらに出してください。」



「これらの袋が薬草で、この袋が雪見草です。一角ウサギの角はこれです。」



「クエスト品、確かにお預かりしました。では確認いたします。」



 報告を担当したのはエリルさんというらしい。ニーナさんとは違いこちらはカワイイ系だ。エリルさんは慣れた手つきで袋からそれぞれ薬草と雪見草を出す。束を外して一枚一枚確認していく。しかし凄い手際だ。確認が終わると一角ウサギの角とギルドカードを見比べる。この間5分くらい。



「はい、確認しました。薬草ですが、全て薬草もどきが一切ない上に、状態もかなりいいですね。雪見草もこんなにいい状態で回収できるのが珍しいくらいです。」



「ほう、そうなんですか? 山にいた時期が長いからかもしれませんね。」



「一角ウサギですが、こちらも4本とも非常にいい状態ですね。また、今回の討伐数と角の数が一致しております。」



「ありがとうございます。ところで、討伐数と納品数の一致とは?」



「討伐数と納品数を確認するのは、これがその人が実際に討伐したかどうかを確認するためです。これが一致していないと、クエスト達成ができません。譲渡などの可能性もありますが、そういった場合は必ず譲渡する側とされる側の両方の人での報告が必要です。」



「なるほど、そういうことでしたか。ご説明ありがとうございます。」



「では、クエストの報酬ですが、薬草1束につき銅貨3枚で、雪見草1束銅貨8枚です。一角ウサギですが、1体につき銅貨8枚です。どれもいい状態なので薬草は銅貨1枚、他の2種類は銅貨2枚ずつ上乗せさせていただきます。というわけで、薬草が48束、雪見草が10束、一角ウサギ4体ですので、合計で金貨3枚と銀貨5まいになります。あと、報酬ですが、ギルドで預かることも可能です。各ギルドで引き出しもできますし、残があれば店によっては直接お金を出さなくても買い物ができます。」



「ありがとうございます。ところで、全部銀貨にしてもらってもいいですか?」



「構いませんよ。」



「では、全部銀貨で受け取ります。」



「はい、わかりました。こちらの札をお渡ししますので、向こうにあります受取窓口で受け取ってください。」



「わかりました。そういえば、ウサギの買い取りはやっておりますか?」



「やってますよ。受取窓口のさらに奥に解体窓口がありますので、そちらに卸してくださいね。」



「重ね重ねありがとうございます。」



「はーい。次もクエスト頑張ってくださいね。」



 銀貨35枚か、そこそこ稼げましたねえ。これで常時依頼型なら、受注型や指名型だとどのくらいになるのでしょうかね。とはいえ、まだまだ先の話だろうから、しばらくは常時依頼を数こなしますかね。受取窓口でお金を受け取った後、解体窓口へと向かった。



「おう、ご苦労さん。解体か?」



 定番のごついひげ面の男が声をかけてきた。



「はい、一角ウサギの解体と素材の買い取りをお願いしたくて。」



「そうか、その一角ウサギはどこにあるんだ?」



「4体ほどそとの馬車があるところに止めてあるソリにしまってあります。」



「ほう、4体か。裏からそれらを持って入ってくれ。」



「わかりました。」



 そう言われてギルドから出てソリを引いて裏口に回ると、先ほどのいかついオッサンが待っていた。



「おう、来たか。では早速一角ウサギを出してくれ。」



 そう言われて、ソリから一角ウサギを出していく。



「では、これです。4体分ですが、2体分は頭がありません。」



「それは問題ない。頭部は角以外は飾りしか使い途がないからな。内蔵はあまり需要がないな、新鮮な状態なら酒のつまみなどになる。肉は柔らかめで味もいいし干し肉も作りやすいから需要はある。毛皮は言うまでもなく需要は高い。では、状態はと、ん? んん?」



「何かまずいことありました?」



「いや、状態の良さに驚いていたんだ。首から下は全く傷も無く、血抜きは完璧だ、というかここまでの血抜きは俺たちでも難しい。一体どうしたらこんなに上手く血抜きができるんだ?」



「そこはスキルと経験ですね。私は水術といって水を操るスキルがありますので。」



「なるほどな。こんなにいい状態なら高い値で買わせてもらう。一角ウサギは毛皮が銀貨1枚、肉が銅貨5枚、内臓は普通は扱うことは無いが、これだけいい状態だから、解体費用込みで1体当たり銀貨2枚といったところだがいいか?」



「はい、それでお願いします。」



「よし、取引成立だ。4体で銀貨8枚だ。これを買取窓口へ持って行ってくれ。ところで、お前さん解体スキルはあるのか? これだけいい状態でこっちへ持ってこれるんだから、自分でやった方が利益は大きいぞ。まあ、こちらとしては持ち込んでくれた方が儲かるからいいのだが。」



「解体スキルは持っているのですが、いかんせん器用さのステが5なんですよね。1体解体するのにどれだけ時間がかかるのやら。」



「お、おう、そうか。しかし器用さ5で解体スキルがあるって、どれだけ解体してきたんだ? まあ、狩ってきたらこっちで解体してやるから、どんどん持ってきてくれ。これだけいい状態で持ってきてくれるならこちらもやりがいがある。」



「ええ、そうしてくれると非常に助かります。」



 木札を受け取って買取窓口で銀貨8枚を受け取りギルドを後にする。宿に戻ると、メルちゃんがいたので、夕食を用意してもらいそのまま受け取って部屋に戻り、食事を済ませた後1階に戻り食器を返して部屋に戻り、すぐさまね転移魔法でねぐらに戻り、風呂と洗濯を済ませた後また部屋に転移して寝る準備をする。ふと思ったのだが、これって宿取る必要なくね? いやいや、人里で過ごすのだから必要か。1日の生活費など知っておく必要もあるし、などと考えながらマーブルと遊ぶ。そういえば、猫っておもちゃがあると喜ぶよな。マーブルは喜んでくれるのかな。街で何か見つけたら買ってみようか。あと、ゴブリンの集落にもたまには戻らないとな。お土産は何にすれば喜んでくれるかな。酒は基本として後は何にしましょうかね。といってもムラを出てそれほど日数も経ってないからもう少し後でもいいか。というようなことを考えながら寝ることにした。



「では、寝るとしますか。おやすみ、マーブル。」



「ニャン。」



 いつもの挨拶を済ませて私達は寝ることにした。明日も頑張りますか。

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