バトル!バトル!バトル!(2)

「ひょぉぉぉぉ」


 中腰で構えながら、細かく息を吐き出すミカ。


 息吹、か? いつからあいつ空手の使い手になったんだ?


 ていうか、ぶっちゃけ、このタイミングで攻撃すれば結構なダメージを与えられると思うんだが、ちょっとだけこの先を見てみたい。というのも、最初、ミカは戦闘という点ではど素人で、初めての組手の時に座り込んだまま小石を投げ始めるレベルだったんだよね。


 それがこの成長。誰も教えてないのに、才能って怖い。


 それだけに、ここからミカが何をするのか見てみたい欲求を抑えられないオレがいるのだ。ちなみに、言うまでもないことだが、決して動くたびにバインバイン揺れる脂肪の塊を拝みたい欲求を抑えられないわけでは、ない。


 ……の、だが、何してんだあいつ? さっきから同じ姿勢、格闘技で言うところのための姿勢を取っているのだが、力をためるどころか魔力をガンガン洞窟内に放出し続けている。まったく魔力の無駄遣いにしか見えない。


 うーん、よめん。そして、揺れん。


 と、さんざん魔力を放出したミカが、突如叫んだ。


「いきます!」


 え? 来るの??


 そんな意味不明の行動に戸惑っているオレに構うことなく、ミカが結構なスピードで突っ込んできた。


 受ける? いや、避ける。


 こういう何をやるのかわからない時は逃げる一択だ。しかも、オレのスピードなら問題はなかろう。


 と、一瞬で決めたオレは、最大速度でミカの右後方3メートルくらいのところまで、ほぼ瞬間移動に近い移動を行う。目にもとまらぬ、というか目にも映らぬ早業というやつだ。


「そこですね」


 しかしだ、驚いたことに、ミカは瞬時に、そして正確にオレの位置を特定しこちらを見た。そしてさらに、続けざまに「ファイオ」と唱えると、突然オレの周囲が盛大な爆音と爆炎とともに爆発する。


「あっちぃぃ!」


 全速で逃げる。そしてミカの死角に静止して、ダメージを確認。


 くぅう、ちょっとだけ皮膚が焦げてる。


「逃がしません」


 しかしミカは、そんなオレに構うことなく、今度はこちらを見ることもなく「ファイオ」とつぶやいた。


 その瞬間、またしても正確にオレの周囲で爆発が起こる。


「うぉう!あっぶなぁ!」


 ……なんだこれ、どういう理屈だ?


 とりあえず止まるのはやばい、ミカはオレの位置を正確に予想し、そしてその場に瞬時に爆発を起こすという、まったくもって理不尽で不可解な攻撃をしかけることができるようだ。とはいえ、決して見えているわけではないはずだ、そんなやわな速度ではないからな。しかし現状は正確に攻撃を仕掛けてこれている。


 理由は、不明だ。


 オレは全力で移動しながら考える、その間も、ミカはしっかりと目を閉じて、じっとオレが止まるのを待っている。オレの動きを追っている様子もなく、ただじっとオレが止まるのを……止まるのを?そうか!


「やるじゃないか、ミカ!」

「まだこれからです」


 オレの挑発に、ミカは目をつぶったまま答えた。


 間違いない、声のした方にさえ振り向かない。


 となればあいつ、オレの位置を目で追えているのではなく、オレの止まる位置が何らかの方法でわかるんだ。


 そしてその理由、それはきっと、さっきの魔力の放出だ。


 ミカは、この洞窟の広場全体に薄く魔力を張り巡らせて、オレの位置確認に使っていると考えてほぼ間違いない。そしてオレが止まったとたん、その位置を把握して、展開してある周囲の魔力に火をつけているのだ。


 なんちゅうセンスだ、まさに天才の域、だが、わかってしまえば怖くはない。


 確認するように、オレは一瞬動きを止めすぐに移動する。予想通り次の瞬間爆発。そして止まる、次の瞬間爆発、また止まる、爆発、また止まる、爆発、止まる、爆発。止まる。爆発。……。


 そして、何度目かの静止のあと、もう爆発することは、なかった。


「いい作戦だったな、でも、魔力切れだな」


 いくら薄めているとはいえ、この広大な空間全体に魔力を展開しているわけだ。しかも爆発で失われた魔力は、そのたびに補充しなければいけない。となれば、そうそう長くそんな3Dの地雷原を空間に維持できるはずがない。てか、そもそも短時間でも展開できた段階で十分すごい、はずだ。


 見れば、ミカはいわゆる女の子座りでその場にぺたんと腰を下ろし、ゼーゼーと肩で息をしている。うん、非常に可愛くはあるが、ま、こりゃ終わりだな。


「終了、でいいな?」

「もう、なんですかその無尽蔵の体力と魔力!」

「日々の研鑽のたまものだよミカ君、それより、今日のおかずはなーに?」


 ニヤニヤしながらそうたずねるオレを、ミカはいっそ親の仇でも見るような視線で睨むと、小さくため息をついて答えた。


「ワイルドボアの丸焼きです、あと、ダンジョンクラブが採れたんでそれも焼いてます」


 もお、どっちもオレの好物じゃぁん。的な笑顔を浮かべると、ミカは否定するように叫んだ。

  

「どっちも私の好物です!」

「はーいはい」


 そう軽くいなして上の階層の食事部屋へ急ぐオレの背後から「ほんとに好物なんですからね!」と叫ぶミカの声が聞こえる。


 声とは裏腹に、軽い足取りでパタパタとかけてくる音とともに。

 

 とりあえず今、オレ達はそんな日常を送っている。

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転生勇者とひきこもり魔王withアンデッド。そしてみんなでアンデッド 御子柴麻美 @arashisakamaki

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