第2章 薔薇の貴族たち
第1話 瑠璃の湖
ピコン♪
『これ私の友達꙳★*゚やばくない?』
就寝前SNSに、みかんから動画サイトのリンクが届いた。タップすると、手元だけ撮したギターの演奏動画が流れた。手を見るからに女性だ。みかんの友達って事は女子高生か? 文武両道な学校だし、こんな子もいるんだろう。上手すぎる。
そう、上手すぎて違和感があった。女子高生でこの演奏? 一体何歳から始めたらこんなに弾けるんだか。
「あれ……? この子……」
違和感を持ったからこそ、俺はその手元の主の身体に纏わりつく、独特の霊気にアンテナが立った。
この子は気の流れも気の質も、普通の人間とは違う。このパターンは最近見たぜ。山吹先生一家だ。でも、ほんの少し感じが明るいっていうか……何か違う。動画で感じ取れるのはそのくらいだけど。それでも人間より百合子先生に似てるな。ヴァンパイアなのか?
友達……? 大丈夫なのか、みかんの奴。
ヴァンパイアって事は、齧られたらみかんもヴァンパイアになっちまうのか? うーん。なんかみかんは……あいつ頑丈そうなイメージしかないな……大丈夫だろ。それにしてもチャンネル登録者数が多い。こういうジャンルでは話題なんだろうけど、なんて返信するかな。
『人気凄いじゃん(ㅇㅁㅇ;;)ゆーめー人?』
「っと。適当に返信しとけばいいか」
ピコン♪
『相談があるんだけどさ( ̄^ ̄)』
うわ、長引きそう。俺、今日は眠いんだよな……。中沢さんの騒動が終わってから、主に店の掃除が仕事だった。客はチラホラ、日に三人くらいしか来ないけど、必ず飲食とショーケースの中を購入していく。天然石やハーブ、あとは数珠なんかも売れた。まだ例のグラスなんかは売れてないけど、皆大金を出して帰っていく。二十時に店を閉める。皿や酒瓶を磨いて、まかない食べ放題。そこからは自由だ。夜の街に繰り出してもいいが、まず問題なのが部屋だった。
ベッドが無いから床に段ボール敷いて、少年誌を枕にしてる。そのせいか熟睡できない。見かねたつぐみんが古いブランケットをくれたけど、もの凄く絵の具臭い。
それにしても。みかんの相談か。悩み事無さそうだけどな。
明日ハンバーグにするかメンチカツにするかとか、そんな事だろ。
『たまには蕎麦もいいよ』
「送信っと……」
駄目だ。睡魔に勝てない。
俺はそのままみかんの返信を待たず、眠りに落ちていった。
**********
うう〜ん、床が硬い。身体もだるいし、早めに家具揃えた方がいいなこりゃ。でも、今までみたいに寝てもアカツキに飛ばない生活は、まじでトーカ様様だった。
ベッドさえ用意出来れば熟睡出来る。寝てるのに、自分の眠りが浅いのが分かるくらいだ。腰を痛めては、戦いに支障が出る。明日にでも見に行こう。
「ん……」
まだ朝まで時間があるような気がするのに、瞼の先の空間が明るくなる。
まただ。特に熟睡できない日は決まってここに飛ばされてる気はする。
香りの強い生草の臭いと、芝の香り。あとは薔薇だ。
「おーい」
「起きないわね」
子供二人の嬉しそうな声色。
睡魔を押しよけて、少しだけ目を開ける。
「う………」
陽射しが、眩しい。
うっすら開けた俺の視界には、咲き誇った大輪の花と、それを摘んでニヤニヤした顔の少年の顔。
「あっ!」
少年 ガンドが、俺の顔に今まさに花を置いてイタズラしようとする瞬間だった。
「やめろやめろっ!」
手で振り払おうとすると、ガンドは庭の端まで猛ダッシュで逃げ切った。褐色の肌に蜂蜜のような髪がキラキラと映える美少年。でもやってる事は完全に悪ガキ。逃げ足早すぎだろアイツ!
白いワンピースの少女 セイズは俺の鼻の片方に差し込まれた花を見て腹を抱えている。
「ふぐっ! ふんっ!
お前ら〜っ」
「あははははっ、セイズも早く逃げろ〜!!」
「逃がすか! 捕まえたァ〜!」
「きゃ〜〜〜っはははは!」
とりあえずセイズを抱き上げて高い高〜い。
「ごめんなさい〜い! きゃはははは!」
そっと芝に寝かせてやる。全く。
「おかえりなさい、ゆー兄ちゃん」
「また来ちまったなぁ」
「大歓迎よ。ガンド〜。戻ってー。
ねぇ、こないだ言った湖に行きましょうよ?」
「え? そうだなぁ……」
湖……そういえば、薔薇の園の先に湖があるって言ってたな。
そもそも、ここは一体どこなんだか。
この双子が、もし敵意のある人外だったらどうしたらいいんだ。俺は……幽体離脱してるのか、それとも本当に異次元に飛ばされているのか……?
分からないまま、俺は頻繁にここへ飛ばされて来ている。
オロオロして足元を見られないようにすることだ。そして情報があれば聞き出す。それが最善〜とか思ったけど。相手もまじで子供だし、俺も困惑してる。
「ゆー兄ちゃん、今日は急ぎじゃないの?」
ガンドが戻ってきて、マントを羽織る。
「ああ。今は夜だから。七時間は寝れるはず……」
目覚まし時計が鳴ると、俺はいつも自然と元の世界に戻れている。掛け忘れても、スマホの着信音やセルが起こしに来たりで戻れるから、この空間に囚われる恐怖や焦りは無いのが救いだ。
「薔薇には棘があるから、何か羽織った方が」
セイズが落ち着いた様子で、俺に麻布を渡してくれた。
「ピクニックにでも行きましょう」
「ああ」
湖か。綺麗なんだろうなぁ。この世界の様子だと。遠くに行って戻れなくなる……なんて事は無いのか? くそ、何かする度に不安になる。
俺の虚栄とは裏腹に二人は楽しそうに走り出す。
「早く〜!」
「さぁ、行きましょう。道は平坦だから、すぐだから」
ガンドが先に突っ走って行き、俺とセイズは並んで歩いた。
それから、たった十分だ。
歩いてすぐ崖の下に瑠璃色の湖が姿を現す。
「うわぁ」
やっぱり現実の世界と違うんだなって確信する。現実にも綺麗な泉や池があるけど。こんな絵の具を入れたような色合いじゃない。岩も氷のように透き通っていて、湖の底は白い砂。瑠璃色の水は色の割に澄んでいて、まるで魔法がかかっているようだ。世界遺産もびっくりの夢景色。
この先の林や茨の先は何があるんだろう? まるで分からない。他の生命体がいる気がしない。鳥も虫もいない世界で、ここからどこかに繋がっている気がしないんだ。どうしても。
「綺麗な色だな」
「うん。日によって色が変わるんだ」
「前にここにいた奴も来たのか?」
「うーん、多分来た。僕らは行ける場所が少ないし、湖にも来たと思うよ!
日本人……? ……は、
日本人って言うなら二人の国籍は日本人じゃないんだろうけど、質問しても返事は実にあやふやなものだった。近所に病院があるとか、家は三階建てだったとか、そんな話しか出てこない。この世界に来た頃は、まだもう少し幼かったと見た。そうでなきゃ、食べ物を召喚して平然としてる、なんてことはおかしいし。テレビゲームやショッピングの一つでも娯楽を知っていれば、ここから出たいという要求も自然と出てくるはずだ。
「ちなみに二人は……その、う〜ん。主教は……?」
「宗教……? カトリックよ。派は覚えてないけれど。何故?」
ユダヤ系とか、色々あるんだっけ? 複雑で覚えきれねぇな。仏教ですらままならないのに。
「俺は別に否定したりしねぇよ。ただ、日本人は、知らない宗教にも……え〜と。寛容なんだ!だからほら、無礼があっちゃまずいだろ?」
「ふーん? ゆー兄ちゃんは信仰する神がいないの?」
「そうではないけどさ……」
その後も、セイズに聞いた事で俺の役に立ちそうな情報は無かった。
以前ここに来た日本人は『クミコ』って女性らしい。聞いたこともねぇ、誰だよってツッコミを入れるところを既で抑える。
せめて俺たちBLACK MOONのメンバーの殉職者とか、有名武将だ!とか、なにかあっても良くないか?
だが、実際はただの霊媒師。それもお金をとらない、アマチュアの野良エクソシスト。まぁ、俺も変わんないけどさ。じゃあ、ここどこなんだよ! クミコと俺、何か共通点無いのか? エクソシストってだけ?
どうしてもこの幻想的な光景と、無邪気な二人に押されたまま自分のペースが掴めず帰る、の繰り返しだった。でも、俺も見栄はってるのは承知の上だけど、ガツガツ聞き出せなかった。ほんの些細な事から会話を広げているだけ。
「き、キレイなイズミダナ〜。
そうだ、俺たち言葉が通じてるのはなんでだ?」
情けねぇ気がするが、聞かないことには何も解決しないのは十分分かってる。
「ああ、それならこれだよ」
ガンドが腕をまくり上げて、二の腕のタトゥーのようなものを、俺に差し出し見せてくれた。
「初めに来た『ブライアン』って人が付けてくれたんだ。それまでブライアンとは全然、言葉が通じなくてさぁ。苦労したんだ〜。追い回して呪文を唱えられたりさぁ」
うん。ブライアンの気持ち少しわかるわ。
「ゆー兄ちゃんも知りたいのは、ここがどこで、僕らが何者か………なんでしょ?」
ぐぬぬ。
ハイハイ。俺はガキを甘く見たオッサンですよ!初めからストレートに聞くべきでした!
「そう。それな」
「でも、僕らも本当に知らないんだ。考えないようにしてる。
覚えてるのは、数人の神父の姿と、恐怖、痛み。
あとは、何かが僕の中に押し入ってきた不快感。
どう説明していいか分からない感覚だよ」
「それって悪魔祓い……だよな? 何かに憑かれたんだな」
「ここに来たブライアンもクミコもそう言った。ゆー兄ちゃんもだね。
ここがどこでも、別に困ってはないけどさ。でも、ずっとこのままなんだ。クミコはここに来てから六十年も毎日一緒だったんだ」
「六十年!!?」
ほぼ一生、寝る度にここに飛んだのか! き、気の毒過ぎる!でも、俺は毎日は来てないからな。指輪のおかげか、相性的なものなのかは分かんねぇけど。
でも、輪郭が見えて来たな。人間の世界で悪魔祓いを受けた双子が、全く異なる空間に飛ばされて、止まった時間の中で生きてるってことだ。
問題は、たまたまそうなったのか、何かに閉じ込められているのかだ。ここが天国って可能性だって捨てきれねぇし。
「僕らは……ずっとこのままなのかもね」
ガンドの中身は十分大人な筈だ。ただ、何となく子どもっぽく感じるのは………なんの経験もないからなんだろうな。こんな世界じゃ、何も経験しようがない。一緒にいるのも妹だし余計にだ。
同じ子供の姿でも、トーカは完全に中身が大人だから、大人と同じ振る舞いをする。比べて、この二人はそうじゃない。
そうだ………トーカの契約者の能力。
もしこの異世界が俺の幻想でなければ、あのゲートの能力でここに繋げることができるかもしれない。寝てない時に来て確認してもらうとか。
それなら………エクトプラズムも出せるか? ここがアカツキやクロツキに似た世界なら、俺は焔を出せるはずだ。
ポケットのライターを摘む。
でも、必要か? 今ここで銃を取り出すなんて。エクトプラズムの別な使い方……こんな時がまさにそうなのかもな……銃以外の、例えばぬいぐるみの一つでも出せれば土産の一つにでもなるんだけどな……。
「なぁ、セイズ。 こないだレモネード出したよな? あれ、俺でも出来るのかな?」
「なぜ出来ないの?」
「えっ!?」
「この世界じゃ、みんな出来るわ。前に来た二人もできたわ」
まじか!!
「じゃあやるから見ててくれ!
よし、じゃあ……ぬいぐるみ! ぬいぐるみをプレゼントするぜ!」
「う、うん」
「ガンバってネ」
ガンドとセイズが、なんとも言えない表情で俺を見る。
「待った! な、なんだよ。その生暖かい眼差し!」
「いや、だってゆー兄ちゃんの霊気って、今までで一番弱いしさぁ」
「霊力は強く見えないけれど……。でもガンド、決めつけはよくないわ。何事も向き不向きがあるんだから」
向き不向きね………。
「くっ………」
イメージしろ俺っ! この手の中に!
ふわふわの、なんか動物的な!!
「はぁ〜っ。無理!」
集中力続かねぇ!
「あはは」
「なぁ。クミコさんも出来てたのか?」
「そうそう。………うーん、でもクミコは、それしか出来なかったって感じかな。
エクトプラズムって知ってる? 霊媒中に体内から排出される物質」
「一応ね」
お前らが出してるレモネードはエクトプラズムじゃねぇのか? どっちかって言うと俺の焔の原理に近いのかもな。別に体内から出てるわけじゃないし。今ではエクトプラズムの一種って括りらしいけど。
「クミコはエクソシストをしながら、普段は自分から出てきたエクトプラズムを薬として処方してたの。患者も多かったらしいわ。
サイキックドクターね。それを飲み続けると、病が………」
「やめろ」
セイズが不思議そうに俺を見上げる。
とんでもねぇところに来ちまったんじゃねぇか? そいつぁ、俺が一番関わりたくねぇオカルト屋の類だ。
「クミコってのはインチキだったんじゃないのか? そりゃあ悪質だぜ」
エクトプラズムを出して、まして医者の真似事なんて。
「病は医者の仕事だ! オカルトだのお祓いで治るわけねぇ!!」
「まぁね。僕らは病気とかしないから騙されたりはしないけど、実際にそんな活動してる人はいるらしいよ。
何でムキになってんの?」
「………ちっ」
つい………。二人は俺の事情を知らないんだから、突っかかっても仕方ねぇ。
「いや、だから……あのな。医者が万能とは言いきれねぇけど、なんでも神頼みはダメだってことだよ」
「それで治るならいいじゃん?」
「駄目だ。せめて医者に行きながらとか。治ったかどうか、わかんねぇだろ」
「ああ。それはそうかもね。
はい、サンドイッチ」
「………美味そうだな」
クミコって奴の情報は、追う必要無さそうだな。ここに来てたのはもうだいぶ前だって言うし、生きていたとしても百歳をゆうに越える。俺の探してる敵とも、関係は無さそうだ。あいつはエクトプラズムなんて出さなかった。ひたすら祭壇に祈ったり、患者の身体を摩ったりするだけだ。
にしても、体内から出てきたモンを飲ませるとかウゲェ!!!クミコさんやべぇな。
セイズは俺の勝手な態度に思い悩んだ様子で、口に運びかけたサンドイッチを持った手を止めた。
「待って、ガンド。ゆー兄ちゃんには、多分……治癒の異能力者の発想がないんじゃないかしら?」
「えぇ〜? 知らないってこと?」
治癒の異能力……? 俺が悪魔を倒す異能力者だとしたら……治癒能力者もいるのか。
「ゆー兄ちゃん。確かに人間には無理だよ! 病気を治すなんてさ。
でも、人間の世界にいる一部の連中には出来るんだよ」
そう言えば俺の正反対の異能力がセルの使う『RESET』ってのだったな。他に異能力があっても驚きはしないけど……。治癒能力なんて、とんでもねぇ能力だ。魔法なんて基本存在しない世界なんだぞ? それを医者なしに治療出来るとしたら、そいつは既に有名人になってるし、引っ張りだこなはずだ。そうはなってないって事は、その能力に後ろめたい事情があるからじゃないのか?
「それってどんな奴らだ? 魔女か?」
「例えば、神から運命を与えられた者。要は、神と契約してる人だよ」
「神は信仰心が契約代わりなんだろ?」
「例外もあるよ。キリストなんかがまさにそう。人でありながら、神の行いをした……神の代理人」
極端な話だ。クミコがそうだったはずがない。もしそうなら、もっと自分を拡散して教えや癒しの力を人に与えたはずだ。
「キリスト教徒とか意外は? 人間の病気を治すことが出来る魔物とか悪魔とかさ。なんか心当たり無いか?」
こんな事、この世界にいるだけの二人に聞いても仕方ないのに、予想もしない答えが返ってきた。
「ヴァンパイアとかかな」
「えっ!?」
ヴァンパイア?!
そもそもヴァンパイアって、人を襲うんだよな? 治癒能力があるとすれば、そりゃあ仲間に変える……の間違いじゃないのか?
「ヴァンパイアは地獄の上層に領土を持ってるんだ。悪魔も招待されないと立ち入りできない、すごく閉鎖的な空間。
まさにヴァンパイアだけの世界。だから独自の医療技術が進歩したってわけ。医療だけじゃない。魔法も、武器も。地獄の中では各頭領がしっかり民衆を纏めてる、優れた魔物だけれど……狭い世界に何人も頭領がいれば、内戦も起きる。今も冷戦状態だって……」
「なんで詳しいんだ?」
ガンドは狼狽えた様子もなく、落ち着いて話している。
「ブライアンから聞いたんだ。彼はイタリアで魔物退治をしてる人だった。神父とかじゃなくて、専門家って言うのかな? ゆー兄ちゃんと同じじゃない? 宗教家じゃないし、ただの退治人だよ」
BLACK MOONは日本支部だって、最初にセルは言ったよな? もしかしたらブライアンって奴がイタリア支部にいたって可能性は捨てきれないな……?
「それで?
人間の……俺の世界に居るようなヴァンパイアは、何者なんだ? あいつらが治癒能力持ってるのか?」
「人間の世界にいるヴァンパイアは、身分のいい奴らだよ。餌になり続けた、元人間のヴァンパイアとかじゃなくて。ずっと昔から地獄に領土を持ってるような、貴族のヴァンパイアが来てるんだって言ってた」
「なんのために?」
「ヴァンパイアの行動は、一族の能力や性格にもよるわ」
セイズがそっと俺のそばに座り込む。
「今の時代、ゆー兄ちゃんの世界がどうなってるのか、わたしたちには把握出来ないなら無責任に言えないけれどね……」
「じゃあさ、俺の知り合いにもヴァンパイアがいるんだけど、俺はどうすればいいと思う?」
山吹先生や蓮司氏も日本に来てから長いって聞いたしな。顔も日本人顔だし、血液も店から買ってる。
でも『人間と共生を』なんて、確かにおかしい話だ。地獄に裕福な領土があるなら、人間の世界で暮らすのは言い訳なんじゃねぇのか。そう言われてもおかしくない。
「ヴァンパイアには明確な群れが存在するの。奴らはそれを薔薇の色で例えてる」
「色?」
「医療技術を持ったヴァンパイアの一族は白薔薇、人間界で人を襲ってるのは赤薔薇が多いって聞いたけれど………あくまでブライアンの時代にブライアンの出会ったヴァンパイアの話よ。
確実なアドバイスは出来ないわ」
「他に何色があるんだ? ブライアンは一人で活動してたのか?」
「基本的に新しい色が誕生したりしないらしいけど、他には………。
ゆー兄ちゃん?」
「あ、ああ。なんか、目の前が……」
急激に視界が霞む。
なんでこんな中途半端な時に!!
「もう戻る時間なんじゃない?」
「まだ、話………途中なのに……!」
「仕方ないよ。ゆー兄ちゃん、また来てね」
************
ppppppppppp!!
けたたましくなるアラーム音。
「あ〜…………くっそ……」
俺の目覚ましのタイマーだった……。
まだ聞きたいことあったんだけど。いや、かなりの収穫じゃないか?
まずは『イタリアの退治人、ブライアン』。クミコの前だから、歴史の研究かよって時代の調べ事だけど、ここにはバチカン上がりの若作りジジイ神父がいるからな。
何か聞けるかもしれない。
ヴァンパイアにもし人間が襲われたら、襲われた方は、同じ能力を持ったヴァンパイアになる……ってのは本で読んだ! なんか怪しいオカルト雑誌でだけど。最も襲ったヴァンパイアより強い力は継がないらしいから、白薔薇の餌になった奴が人間界でチビチビ稼いでてもおかしくねぇ。
俺の母親を騙した祈祷師がそうだったのかもしれないし、アカツキで見た憑き物はヴァンパイアの本来の姿だった可能性もあるかもしれない。
うちの店には百合子先生が来てるわけだし、セルなら何か予測がつくかも。
俺はシャワーだけ浴びて、すぐエレベーターに乗った。
時刻は八時半。
今日こそ家具……特にベッドは早急にないと背骨がやばいな。
セルにワゴンを出して貰おう。配達ができないってのは不便だな。丁度いいから、そこで話を出してみよう。
エレベーターが上がってくるまで、ふとスマホに目をやるとみかんからの連絡を返してないことに気が付いた。
『蕎麦は関係ないよ! 相談のことなんだけど、おーい( >A<)』
「なんだよ……ハンバーグとメンチカツの相談じゃねぇのか?」
ぽーーーーーん♪
後で返せばいいか。
俺はスマホをポケットに突っ込み、エレベーターに乗った。
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