24日目 本当の願い

前回までは、料理研究部vs調理部との料理対決が始まり、この対決を勝利したのは、料理研究部となった。そして、負けた調理部部長の出川は去年あった出来事を話す。このことに一星が出川の言葉に問いかけ、そして、徳井先輩が出川に向かって本当の想いを出川部長に語りかける。


〈徳井〉ありがとう、一星くん。ここからは私に任せて


〈出川〉こないで!


〈徳井〉いいからっ!聴きなさい!


そう言うと、徳井先輩は出川先輩に向かって、あの時の事、そして、今、思ってる事を話した。


〈徳井〉あのね、なんで、私があそこでおむすびにしたか。さっき一星くんの言う通り、あなたに気づいほしくて、わざと負けたのよ


〈出川〉は?


〈徳井〉あの時、泉は、自分の納得のいく、料理が作れなくて、がむしゃらに料理の練習してたわね。

そのせいで、周りが見えなくなって、私の事、佳乃の声も聴こえず、無視して、走っていってたわ。

私は、中学からの付き合いよ。あなたの事をよく知ってるわ。あの時みたいに、自分でなにもかもせよって、なにも言わず、一人で頑張ってたわ。もちろん私も佳乃も大会に勝てて嬉しかった。けど、大会が進むに、勝ち進むにつれてあなたは変わってしまった。

いままで、楽しかった時間がなくなって、消えていった。私は思いついたの。最後、おむすびを作って負けることを。ただの負けじゃない!?あなたに気づにほしくて!たしかに、手の込んだ、技術とスピードまかせの料理も美味しいわ。けど、あなたは!大会なんて!出なくても料理は美味しいし上手よ。

だから!いままでどおり料理研究部で仲良く楽しくみんなで、料理を研究したかった。

でも、なんであんたが、このピカタ風おむすびに勝てないか、わかる?それは、あなたが、あの時と同じように自分を追い込んでいくうちに料理の腕が落ちたのよ。あとは、大切な想いも忘れて作った料理だから、そんな料理だからあなたは負けたのよ!


〈出川〉そんな...ちがう!あたしは...


出川は少し落ち着きがなくなった。


〈徳井〉違わないわ。いい加減思い出してよ。それは、私も佳乃も、思ってるよ。あんたは私の親友、でしょ?


〈出川〉それは...けど、思い出すってなにを?


〈徳井〉それはね、料理を心から愛しする事よ。たしかに手の込んだ料理もいいわ、大会にでて料理の腕をあげるのもいい。けど、ピカタ風おむすびのような簡単な料理でもいいじゃない?おむすびにチーズのせてた簡単なものでも、それでみんなが満足してくれるなら!それで、いままでどおりに楽しくできるなら!大会なんて、どうでもいい!私は、あなたとまた、楽しく料理がしたい!来てよ?戻って来てよ?

私の本当の願いは、「あなたと笑顔で料理がしたい」。あの時からあなたは、笑顔も、大切な仲間もなくなった。いまからでも遅くない。なにか、あるなら、私たちが相談のるよ?


そういうと、徳井は座ったままの出川に手を差し伸べた。


〈徳井〉もう一度、立ち上がろう?こけることは恥じゃないわ、立ちなさい。こけたら、立つの。あなたなら出来るはずよ


〈出川〉でも、私は、あなたを...


〈徳井〉大丈夫よ、あの時のようなことが起きたら、その困難は助けてあげるから。

すべての困難は、あなたへの贈り物を両手に抱えているのよ。だから、大丈夫。それに、あなたはもうわかってる


そう言うと、徳井は再び手を差し伸べた。


出川は少し不安な顔を見せていた。


〈出川〉わかった、ごめん


と、徳井の手を掴んだ。そして立ち上がった。


〈出川〉ごめんなさい、私、あなたを誤解していたようだわ。もう大丈夫、これから、もっと笑顔みせるし、そんなわがままもいわない


〈徳井〉さすがね、泉


〈出川〉あなたもね、稟


と、そこに佳乃が入ってくる。


〈中里〉はいっ!と、私もいれてよね?


〈徳井〉! 佳乃ったら、もうぉ


〈出川〉あははっ!!


〈中里〉泉ちゃん、やっと笑ったね


〈出川〉うるさい!


〈中里〉やっぱり、泉ちゃんは笑ってる姿のほうが可愛くて、似合うよ


〈出川〉う!うるさい!


〈徳井〉まあ、でもよかったわ。もし伝わらなかったらどうしようかと


〈出川〉大丈夫、しっかり伝わったよ稟の言葉


〈徳井〉そう。..... 泉、お帰り


〈出川〉え?


〈中里〉うん。お帰りなさい


出川先輩は少し照れながら答えた。


〈出川〉た、ただいま....

そういうと、何故か、出川先輩は涙を流した。


〈一星〉徳井先輩、よかったっすね!


〈徳井〉一星くん。本当にありがとう!


〈一星〉いやいや!俺はなにもしてないさ


〈椿・要〉ぐす...ん、ぐす、う...


〈道久・スカイラー〉え?なに泣いてるの?お前ら?


〈椿〉だ!だってよ!いい話じゃないか


〈要〉うんうん!


〈一星〉おまえら....でも、よかったですね、先輩、本当のこと伝えられて


〈椿〉けど、徳井先輩すげえな、親友のためなら大会なんて、どうでもいい。か


〈一星〉だな


〈一星〉惚れたぜ


〈椿〉へぇ~、徳井先輩がタイプなの?好きなの?


〈一星〉ち!ちがう!先輩として、カッコいいってこと、尊敬ってことかな?先輩として惚れたよ


〈椿〉ふーん、なるほどな


この料理対決はこれで幕を閉じた。これを機に徳井先輩は、出川たちを料理研究部に誘った。

調理部のメンバーは、それを聞いて、料理研究部には入らなかった。出川たちも入りたいが、このままでいい。そう言ったという。

同じ部活じゃなくても、この繋がりと大切な心は繋がっている。もう、悲しくなんてない。


徳井先輩たちや出川先輩、中里先輩、他のメンバーも今は混ざって部活をしていると言う。そして、前みたいに仲良く。調理部と料理研究部は笑顔が絶えない、楽しい時を、部活を過ごした。


ー 24 本当の願い ー 終了

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