3話

元カノ。通称、坂崎 恵。と初めて出会ったのはサークルの先輩たちがセッティングした飲み会でのことだった。飲み会と言っても、女好きな先輩がセッティングしたこともあり、 今どきの服にまるでキャバで働いている女たちみたいな髪の染った女子たちが数名来て、男だらけのサークルにお酒が交じって今までの飲み会よりも盛り上がることになった。

「あの。LINE交換してくれませんか?」

 そんな中、ほかの女子たちに交じって真っ黒なショート髪の彼女が僕に声をかけた。ちょうど隣だったからかもしれない。とその時の僕は思っていた。何故かって、僕は先輩たちのように女の子を喜ばせる知能も持ち合わせてないし、顔もイケメンといえばそこまでじゃない。何の変哲も無いそこらへんのモブと変わりなかったからだ。しかし、そんな僕も彼女もお酒が混じってしまって思考が追いついていなかった。だからその時、僕にもついにモテ期が来たんだと信じて疑わなかったんだと思う。彼女は少し僕に近づいて上目遣いでニコッと微笑んだ。彼女とLINE交換したあと、ソーダー割りの梅酒を頼み、僕はビールを頼んだ。

「君はいくつなの?」

「20歳になったばかり」

「一人暮らし?」

「うんうん。実家で暮らしてる。あっ、でも両親は私が小学生の時に亡くなっちゃって、今は祖父母が私を養ってくれてるの」

「じゃあ、住んでんのこの辺なんだ」

「うん。学校からね、電車で十分ぐらい。実は近いって理由でこの大学選んだんだ。」

「僕もそんなとこだよ。教えてくれてありがとね」

「全然いいよ。なんでも教えてあげる。その代わり君のことも知りたいな」

「どうぞどうぞ。遠慮なく。って言っても面白い話とかは思いつかないけど」

 そんな会話が続いて、僕たちはこの飲み会を抜け出そうと話し、トイレに行くふりをして逃げだした。まるで駆け落ちのカップルかのように手を繋いでその時の彼女の細い手は守ってやらなくちゃという男の心情を駆り立てた。そう、それが彼女との初めての出会い。僕の初めての彼女。

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