第47話 ゲーム内配信/vs古代獣ヤマタノオロチ Ⅺ
「と、言うわけで作戦はいつも通り。今回は天羽々斬があるから少しは楽になるかもくらいで見積もっててね」
【かっる、え、命令これだけ?】
【むしろ通常運行でしょ? 討伐メンバーなんだし】
【行動前にあれこれ口出される方がウザいしこれくれいでいいよ】
【わかる】
【普通は失敗しない前提でPT組むからな。口うるさくなるのは仕方ない】
【リーダーがこれくらい軽いとメンバーは気が楽で良いよな】
【気が楽というか、アキカゼさんとこは好き勝手やった結果がアレだからな】
【なんか知らんけど良い方に結果が転ぶんだよな、毎回】
【引率能力が高いだけじゃなく、失敗してもそこまで怒らないし、むしろアフターケアが完璧なんだよこの人。冗談まじりにピリピリした空気なごましてくれるし】
【あー、そう言うのがあるのか】
「騙されてはいけませんよ。その結果通常メンバーに昇格すると無茶振りに付き合わされます」
【草】
【アキカゼさんの中で株が上がると無茶振りが来るのか】
【それは怖い】
「声をかけなきゃかけないで拗ねる人が何言ってるんですか」
「楽しそうに事後報告されてみなさい、悔しくて仕方ないでしょう?」
「父ちゃん、力込めすぎくまー」
最序盤。例の如くキャッチボールしながらヘイトを左右で交互に受け渡ししてる親子が、コメントに過剰反応して大暴投。
ボールを大きくそらしたくま君がなんとかキャッチして返球する。
「こうやって毎回会話に割って入ってきてはぐちぐち言うんですよ? 仕方なく誘うしかないじゃないですか」
「そこ! 昔の話をいつまでも掘り返さないでください」
【こうやって茶々入れるから真面目に取り組んでるのも馬鹿みたいになるんだよな】
【これ二人ともそこまで気にしてないだろ】
【わかっててやってる辺り、仲良いよな】
「演技にしては父ちゃんの暴投は迫真だったくま!」
【うっかり力込めすぎた説】
【これ実は本気で罵り合ってたりして】
【まさかー、200万人以上が見てる前でそんなことするわけ……え、嘘ですよね?】
【今ではすっかりくまの凶暴さがなりを顰めてるな】
【その他が酷いからマシに見えるだけだぞ】
【わざと濃いメンツ集めてるのかと思ったけど、そう言うわけでもないんだろ?】
【|◉〻◉)相変わらずのハヤテさんクオリティですね】
おや、こんなところにも身内が。
最近彼女の顔文字を見ると元気をもらえる私がいるよ。
そこに居なくても話題を出すだけで盛り上がれる不思議な魅力を秘めてるからね。
【父さんはこれが通常運転よ。気を使うだけ無駄なのだから諦めるのは賢明ね】
この辛辣な言葉はシェリルだな?
「そうは言うけどね、シェリル。父さんだって結構苦労してるんだよ?」
【普通は苦労どころじゃないのよ? ただでさえパッシヴ極でヤマタノオロチをテイムでしょ? それでも討伐まで果たしてる。だから私は父さんに対してなにも言えないのだけど】
【そりゃそうだ。倒すのだってやっとなんだぞ? 見てる分には簡単そうに見えるけど】
【本当にな、前回の討伐見て俺でもできそうな気がしたけど気のせいだったし】
【いや、個々の能力が突出しすぎてるからね、このメンツ? ジョブ真似たくらいじゃ討伐は無理www】
【ブラスター揃えてもここまでポンポン首狩れないもんな】
「えっ、そうなの? 首周りは特に弱いから簡単に飛ばせると思ってた」
【無理www】
【それ以前に移動手段がなくてですね】
【父さん、普通の人はショートワープなんて持ち合わせていないのよ? 首に到達する前にブレスや特殊な攻撃で阻害されて仕切り直しよ?】
【|◉〻◉)だ、そうですが何か弁明は?】
「私だって知らないよ。未だにランクをCからランクを上げられない新規プレイヤーだよ? こっちが聞きたいくらいだよ」
【|◉〻◉)なるほど。現場からは以上です。このままスタジオにお返しします】
【それが言いたかっただけだろ、魚の人www】
【スタジオって何処だよ!】
【この人も全力で弄りに来てるよな】
【アキカゼさんのクラメンは濃い人しか居ないのか?】
「僕は薄い方ですよね、ね?」
「醤油顔という意味でですか?」
「ねぇぇぇ、なんで僕の場合は表現が辛辣になるんです!?」
「許してくれるかなって」
「酷いでしょ? この人いつもこんな感じなんですよ?」
【俺たちは一体なにを見せられているんだ?】
【茶化しながらも仕事はしっかりしてる連携プレイ?】
【ダメだ、俺このパーティでやっていける自信ない。腹筋が死んでミス連発するわwww】
【流石にこのパーティは人を選びすぎる】
【それでも全然余裕で対処してるし】
【まだアキカゼさん天羽々斬抜いてないんだよな】
「くまだったらもう使ってたくま!」
【普通はもっと早い段階で使うぞ?】
【まずは首までたどり着けないから、くまの判断は正しいよ】
【アキカゼさんがおかしいだけだから】
【まさかくまを擁護する日が来るとは思わなかった】
【唯一のまともなプレイヤーになってて草】
【他に非常識の権化がいるからな】
【常識人がPKするわけないんだよなぁ】
「くま君は顔が怖いだけで良い子だよ? 悪いのは教育を失敗した父親のジキンさんだ。彼は被害者だよ」
【父さんも少しは家庭を顧みてくれる父親だったら良かったのだけど】
「ちょっと、シェリル。今配信中だからそういうこと言うのは……ね?」
【知らないわ、自業自得でしょ。ごめんなさいね、ジキンさん。うちの父がいつもご迷惑をかけてばかりで】
「言われてますよ、ハヤテさん。出来た娘さんじゃないですか」
「本当にね。私にはもったいない娘だよ。自慢の娘だ」
【隙あらば娘自慢】
【子煩悩父親あるある】
【わかる】
【わかる】
「くまー。父ちゃんもうちの娘の顔を見せろって最近うるさいくま。まだ生後三ヶ月で外に出すのは危ないくまよ」
「くま、ここでそう言うことを暴露するのは不謹慎だぞ? 僕はちょっとフレンドの娘自慢が煩くて、どんなものか気になってるだけで……そこまで娘に執着してるわけでは」
【今回も爆弾だらけの配信ですね】
【爆弾は爆弾でも身内からの暴露じゃねーか!】
【アキカゼさんとこの家庭は雰囲気良さそうかと思ってたけどそんなことなかった】
【|◉〻◉)最低! アキカゼさんのファンやめます!】
【こんな会話聞き流しながらしっかり桃首落としてる師父さんかっけー】
【そうだぞ、真面目にやってる人に失礼だ】
【師父さんが唯一の良心になってて草生える】
【今までステルスでずっと隠れてたけどな】
【そのためのブラスター】
【ブラスターはTPの燃費悪いからしゃーない】
【痴話喧嘩しつつもしっかり首落としてるアキカゼさん達も大概だけどな】
【キャッチボールしながら重い話してる親子もいたのに】
【その横でドリルぶん回してるメタルトライダーの勇姿が全く注目されてないのは可哀想】
【ムササビの煽り運転によるヘイト誘導もなかなかだぞ? 全く話題にも上がらないけど】
【字面が最悪だから見ようによってはムササビが加害者に見えるぞ、それ】
【実際被害に遭ってるのはオロチ君ですし、あながち間違ってないのでは?】
【おい、この空気のまま最終局面に突っ込むのかよwww】
【今までで一番空気悪くて草】
【それでも期待してる俺が居る】
【今回の茶番は随分と長いなーくらいに思ってる。え、これ茶番だよな?】
「茶番だよ。わざわざ付き合ってくれてすまないね。何せある程度削るまで場が動かないだろう? 私もそれを毎度工夫して場を繋いでいるんだ。それもそろそろ終わるから切り上げるよ」
【なんだ】
【びっくりした】
【騙された】
【結局親子仲は良いの?】
【普通よ。さっきのは半分嫉妬からくるものだったから。なかなか父さんの出したタイムに届かないのよね】
【えっ、精巧超人でも4時間切れないの!?】
【そうね、事実よ。首は落とせるのだけどビームにメタ張られると殲滅力が落ちるのが困り物なの。私も件のダンジョンに向かうべきかしら?】
「ああ、深海ダンジョン? 純正のレムリア陣営がなにもらえるか気になるから後で教えて」
【じゃあ行かない】
【天邪鬼かな?】
【|◉〻◉)ハヤテさんも教育間違えてる説】
【言ってやるな】
【正しく教育できてる親なんていねーよ】
【うちの親はどうだろう? 父親は仕事で夜遅くに帰ってくるのが普通だったな】
【正しいかどうかの判断基準は子どもに委ねられるからな】
【今仲良いならそれで良いじゃん】
【最近娘が言うこと聞いてくれないんです、どうすれば良いですか?】
【急に人生相談みたいなコメント来たな】
【なんだこれ】
【だから茶番長いって!】
ちょっと空気が悪くなっているかな?
少し早いけどここで切り札を登場させちゃおうか。
テイマー/ライダーの真骨頂、ライディングの出番を少し早めてこの空気を払拭させないと、挽回のチャンスはなかなか巡ってこないかもしれないからね。
私は虹色に伸びる首を見据え、本邦初公開のスキルをお披露目するのだった。
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